〝列島分断〟---。これは決して大袈裟な表現ではない。実際、昨年3月の事故直後、近藤駿介・原子力委員会委員長が菅直人首相(当時)に対し秘かに提出したシミュレーションでは、福島第一が制御不能となり、4号機プールの燃料がすべて漏出した場合、
「半径170km以内は強制移住」
「同250km以内も避難の必要性」
との衝撃的な結論が示されていたことが明らかになっている。
福島第一から半径170kmというと、北から岩手・宮城・山形・新潟・群馬・栃木・茨城・千葉・埼玉までの、広範な土地が含まれる。さらに250kmとなれば、東京・神奈川・山梨や、長野の一部なども避難区域となってしまう。事実上、なんと3000万~4000万人もの人が、自宅を捨てて逃げ出さねばならなくなるのだ。
またしても甘い見通し
こうした恐るべきシナリオに対し、「そんなことは起こるはずがない」という根強い声がある。しかし、「あり得ない」と思っていたことが、一瞬にして現実のものとなる---それが、昨年の大震災と原発事故から我々が学んだことではなかったのか。
4号機の燃料プールには、使用済みと未使用のものを合わせ、1500本、400t以上の大量の燃料棒が置き去りになっている。
東京電力では、まず原子炉建屋に放射性物質飛散防止の巨大な覆いを被せた上で、プールに沈んでいるガレキを撤去、その後、来年末から燃料棒の取り出しを実施する予定としている。
しかし、それが予定通りに進むのか、現時点で誰も断言できない。
「プールの中には事故の影響で大量のガレキが沈んでおり、燃料棒が詰まった『燃料集合体』を吊り下げるラックなどが破損している可能性があります。また、水中に置いたまま、特殊な『キャスク』と呼ばれる容器に収めなければなりませんが、4号機の場合、燃料集合体が破損している恐れがあり、その場合は専用のキャスクを作り直さなければなりません」(京都大学原子炉実験所・小出裕章助教)
4号機のプール内には、大量のコンクリート片のほか、爆発で壊れて吹き飛んだ階段や通路・デッキなど大型の構造物までが落下したままになっている。しかも、それらは事故当初に冷却のため海水を投入した影響もあり、燃料集合体ともども、腐食して脆くなっている可能性がある。
高放射線量の環境で、まずはこうしたガレキを取り除くための設備を作り、安全かつ完全にガレキを除去し、その上でさらに、燃料棒の取り出し作業に取り掛かる・・・・・・それが至難の業だということは素人でも想像がつく。
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