つなぐ 希望の木
災難を乗り越えてきた木々を、都内に訪ねた。
【社会】どうなる保育改革 「保活」 親の人生左右2012年6月6日 07時08分
保育園に入ることができない待機児童を解消して、子どもを育てやすい社会にしようと、新しい保育制度が今、国会で議論されている。その名は「子ども・子育て新システム」。消費税率引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革の一環だけに、与野党の駆け引きに揺れているが、そもそも肝心の中身とは。少子化を止めて、この国の未来を開くことができるのか。皆の問題として今、考えたい。 「不承諾…って?」 二〇一一年二月、自宅に届いた書類上の文字に、東京都足立区の会社員斉藤真里子さん(37)はぼうぜんとした。前年八月に生まれた長男の区立保育園への入園が認められない−。外資企業を育児休業中で、新年度から長男を入園させて、職場復帰するつもりだった。「夫婦で働き、子育てする普通の家庭を築きたいだけ。こんなにあっさり、無理って」。怒りに変わった。 危機管理はしていた。区立保育園のように、都道府県などが設置を認めた「認可保育所」に入園できない事態に備えて、出産後から認可外の各種施設十カ所を回った。 待機児童が多く、競争率が高い東京では「育休を早めに切り上げ、認可外に預けていれば、入園選考で加点され認可保育所に入りやすい」というのは母親たちの常識。いずれも三十人ほどのライバルが予約待ちの認可外保育所、複数に申し込み、長男は結局、その一つに入園した。二歳までという条件が不安だったが、今春、認可の私立保育園に転園できた。会社員の夫(36)と、ほっとした。 「保活」と呼ばれるまでに難関の保育所探し。苦しんだ斉藤さんは、母親仲間と「保育所つくってネットワーク」をつくった。 「保育園に入れず、正社員だった勤め先を退職した」「子どもをおろした」「二人目を産む気になれない」。ネットワークには切実な声が寄せられた。 二人の子を育てる足立区内の女性(36)もネットワークでつながった一人だ。発達障害のある長男(4つ)は私立の認可保育所に通う。だが、同じ園に申し込んだ十一カ月の長女は今春入園できず、無認可で利用料も高い小規模保育室に預けた。この保育室はパート勤務者が対象なので、女性はフルタイム(全日労働)の仕事を辞めざるを得なかった。夫は病気で休職し、生活保護を受けている。 「この子を産まなきゃ良かった」。三月まで新宿区の認可外保育所の園長だった入舩(いりふね)益夫さん(58)は、そう言って泣き崩れた母親の姿が忘れられない。わらにもすがる思いで、入園の可否を問う親たちに会ってきた。その数は年間百人ほど。「だれにも頼れず、自分がわがままなんじゃないかと、自責する親たちを見てきました」 □ □ 少子化で子どもは減っているのに、保育所からはあぶれるという矛盾−。働く母親が増えるなど、女性の生き方や意識が変化している現状に、国の施策が対応できていないことの証しだ。新システムでも、これまでの施策のように、期待を裏切ることはないだろうか。 「千年後の五月五日のこどもの日は来ない」−。東北大学の吉田浩教授(加齢経済学)は今年のこどもの日から、「子ども人口時計」をインターネット上で表示し始めた。百秒に一人の速さで子どもが減り、このままでは千年後にはゼロになる。「時計の針を少しでも戻せなければ、この国は終わりだ」 (東京新聞) PR情報
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