2010年11月18日

オールジャパン直前企画30 大学生男子団体

オールジャパン直前企画30
それぞれの道~大学生男子団体

☆福岡大学
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去年もそうだったが、福岡大学の演技は、どこか変わっている。独特で、そして魅力的だ。 男子の団体はトップ3の壁が厚い。そこに割って入るのはかなり難しいだろう、とは思う。しかし、それも夢ではないのでは? と思わせるものが今の福岡大学にはある。 演技序盤のなんとも不思議な動き、そして、6人そろって倒立したままのジャンプ! 3バックの入り方にもおもしろい工夫があった。振り付けがいいのか、とても軽やかな、新しいテイストの男子新体操、そんな印象だ。トップ3と比べてしまえば、タンブリングや徒手にはややビハインドがあるようにも思うが(つまりそこが点差なのだろうが)、決して大きく水をあけられているという風には見えない。むしろ、この先にとても期待できるシャープでクールな演技だった。ジャパンでの演技にもおおいに期待したいと思う。 ☆仙台大学
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インカレで見た仙台大学の団体は、5人編成だった。正規の人数ではないが、なんとかチームとして出てこれた、そんな状態に見えた。5人の中には、すこしキャリアの浅そうな選手もいるが、それでもみんなで「団体」をやるんだ、と頑張ってきたんだろうな、と感じられるチームであり、演技だった。今はまだこなれていないが、今いるメンバーが続けてくれれば、そして人材豊富な東北の高校生が何人か入学してくれれば、仙台大学の男子団体もおもしろいことになっていくのではないだろうか。そんな期待は十分もてるチームである。 ☆花園大学
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正直、初めてこの演技を見たときの印象は、「え? これが花大?」だった。私が花園大学の団体に対してもっているイメージは、ズバリ!「斬新」「奇抜」だ。そこが花園大の魅力であり、強みであると思っていた。ところが、今年のインカレでの花園大学の演技は、まさか? と思うほどのゆっくりした美しい曲を使っていた。静かに心にしみるような曲。それは今までの花園大のイメージをくつがえすものではなかったか。インカレ1日目の演技には、いくつかのミスがあったせいもあり、私は「これでは花園大のよさが出せないのでは」と思ってしまった。 しかし、2日目の決勝では、完成度がまったく違った。このレベルで実施されれば、意外に思えたこの選曲もうなずける。 今までは、斬新さはありつつも、それゆえに認められにくいという面もあっただろう、花園大は、じつはこんなにもベーシックな演技を、こんなにも美しく演じきれるチームなのだということを、この決勝での演技では、見せつけることができたと思うのだ。そう、花大の動きは、花大ならではの美しさと魅力をもっている。今年の演技は、「花大らしさ」はなかったが、その代わり、このチームのもつ強みや良さを再認識させてくれたように思う。 果たしてジャパンでは、この「花大らしからぬ、でもステキな演技」でくるのか? またぐっと花大らしい演技でくるのか? どちらでもいい。どちらでもきっと見る者を楽しませてくれる。花園大はそれだけの力を持ったチームだ。 ☆国士舘大学
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インカレ1日目の国士舘の演技は、すばらしかった。王者・青森大にミスが出たこともあり、予選は同点。国士舘には申し訳ないが、これは予想外の展開だったと言ってもいいだろう。 しかし、ある意味、国士舘はこれを狙っていたのだ。いくら青大が強いと言っても、常に完璧ということはないのだから。ほころびが出ることは必ずある! しかし、そのときに国士舘も共倒れになったのでは勝てるはずがない。だから国士舘は、常に、自分たちなりのベストパフォーマンスを見せなければならない。そうすることで、勝機はめぐってくるかもしれないのだから。 今年のインカレはまさにそうだった。予選での試技順は国士舘が先だった。そして完璧な演技を見せた。青大は、国士舘のその完璧な演技の次に演技をした。ミスはあったが、決して悪い演技ではなかった。それでも、「今回は国士舘もよかった、いや国士舘のほうがよかったかも?」と思わせることができた。だからこそ、同点という結果が出た。それほど、予選での国士舘の演技はよかったのだ。青大がミスをしたのだって、国士舘のパーフェクトな演技のあとだったということがまったく影響していないとは言えないだろう。 とにかく、予選での国士舘はしてやったり! だったのだ。ミスがなく、どこまで大きく見えた、この日の国士舘の演技は、国士舘と山田監督がこだわっている「体操の質」の良さを見せつけたと言えるだろう。 しかし、残念ながら決勝では、青大の気迫あふれるノーミス演技のあとで、今度はまったくのまれてしまったような演技になってしまった。大きなミスがあったわけではない。が、ほんのすこしのズレがいくつかあった。決勝ではそのわずかなズレが大きく見えてしまうほどに、青大の演技が完璧だったのだ。 前日にはあんなにも雄大に見えた演技が、ほんのわずかなズレでしゅっとしぼんで見えてしまう怖さをそのとき私は感じた。しかし、それは小さなズレを修正することさえできれば、何ランクも上のレベルの演技をすることができるということでもある。なんとも男子新体操は奥が深い。 ジャパンでの国士舘大学は、どちらが出るだろう。もちろん、「ベストパフォーマンス」で、あの雄大な演技を見せてくれることを期待している。伝統の3バック+スワンでまた観客を酔わせてほしい! ☆青森大学
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インカレの予選では、すこしばかりひやりとさせた青森大学だったが、決勝では国士館を突き放すような貫禄のノーミス演技を見せ、連覇を「9」に伸ばした。このときの青森大の演技は、強かったうまかったというだけではない感銘を私に与えてくれた。 思えば去年のジャパンで見た青森大の演技も、それは「男子新体操の演技」とは言えないもっと崇高ななにか、のようだった。不思議なものを見た、そんな感じがあり、ともかく感動したことを覚えている。あとでそのジャパンの演技に込められていた思いを知ることができ、納得したが、その思いが、事情を知らなかった私やほかの観客にもずうんと届いたということに驚いたし、感動したものだ。 青森大学は、男子新体操では現在トップを走っている大学だ。そのことに疑う余地はない。有望な選手がたくさん集まってくるし、切磋琢磨できる環境がある。だから、うまくなる。強い。それはある意味、当然のことかもしれない。 しかし、青森大のすごさはその「うまさや強さ」だけではないと思うのだ。表現スポーツとは言いながらも、新体操で何かを表現すること、伝えることは案外難しい。いや一番それが難しいと言ってもいいだろう。「うまかったね」「すごかったね」とは思えても、伝わってくるものはなにもない、そんな演技は巷にあふれている。 新体操はそんなスポーツだ。表現したいという理想はありながら、表現する余地なんてありはしない。(女子はよりそういう傾向にある) しかし、青森大の演技からは、いつもものすごく「何か」が伝わってくるのだ。ときに、それは偉大な先輩を亡くした哀しみだったりもするのだが。 その「何か」は受け取る人の感じたままでいいと、中田監督は言う。だから、私は今回も、「何を」伝えてくれるのかな、とただ楽しみに見ていたいと思う。もしかしたら、とんでもないものを受け取ってしまうかもしれないが、それはそれでお楽しみだ。もちろん、技術的にも最高峰のものが見られることも間違いない。とくに外崎選手のダブルスワンは、新体操というステージで見られるのはこれで最後かもしれない。ぜひ、心して見届けたいと思う。 ただ、できることなら青森大の演技は、あれがすごい、これがすごい! だけでなく、そこで伝えようとしている何かを感じながら見てもらえればと思う。技術ももちろん一流だけど、青森大の本当のすごさは、その「伝える力」にあるのだから。                               <写真提供/株式会社フォトクリエイト/allsports.jp>  ※いよいよ明日から競技が始まります。この直前企画もいよいよラスト! 日付変更線は超えるかもしれませんが、ラストは女子の「ナショナル選手たち」をアップします。明日の観戦の前にぜひチェックしてお出かけください。


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posted by rg-lovers |20:26 | 2010年オールジャパン直前企画 | コメント(1) |
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2010年11月18日

オールジャパン直前企画29 男子ジュニア団体&女子社会人

オールジャパン直前企画29
男子ジュニア団体&女子社会人

まさかここまで大ごとになるとは思わずに始めてしまった企画なので、正直、登場順やグループ分けなどはいきあたりばったりでした。
なので、うまくくくれなかったチーム、選手ができてしまいました。
明日には競技開始なので、ここでご紹介しておきましょう!

☆小林中学
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全日本ジュニアでは、4位だった小林中学だが、2位の神埼中学、3位の恵庭RGが出場辞退したため、繰り上がりでジャパン出場となった。 「繰り上がり」といえど、全日本ジュニアでの小林中の演技は、十分、表彰台の可能性のあるものだった。試技順がおわりのほうだったため、すでに演技が終わっていた井原の優勝を予測してはいたものの、小林中の演技が終わったときに、「う~~~ん、どっち? 小林もよかったよね」と思ったのを覚えている。結果、井原には及ばず、4位に終わったが、もっと上位にきてもおかしくはない演技だったように思った。 今年のチームは、まず体格がいい。インターハイにこのまま出ても違和感ないんじゃないか、という体格であり、実力だ。 小林秀峰高校がやっていた組みをアレンジして演技に入れていたが、それもつい高校生と比べると~なんて思われてしまうのは、体格がいいゆえんだろう。高校もそうだが、決して「組み技」頼みではなく、意外なほど振り付けや動きにも工夫が施されている。彼らもまた小林秀峰高校に進学していくのであれば、当分、小林王国は安泰かもしれない。今でも十分うまいのだけど、あと2年、3年先にはどんなに成熟し、洗練されるだろうと楽しみなチームだ。                                         <撮影:大塚達也> ☆team NAKAMURA 社会人大会の1部で優勝してオールジャパン出場権を獲得したチームだ。メンバーの中に「青山三奈」という名前を見つけて、なつかしくなった。今でも魅力的な選手を輩出しているチェルシーRGの名前が全国大会で聞かれるようになってきたころの選手だ。たしか高校は名女、大学は一宮女子短期大学だったと記憶している。 調べてみたら、そのとおり。そして、team NAKAMURAは、青山が一宮女子の2年生だった2007年に西日本インカレに出場したチームのメンバーが集まって組んだチームだということもわかった。 大学での部活という、濃密な時を共に過ごした仲間達が、もう一度集まって「新体操やろうよ!」ということになったのだろうか。社会人大会からはこういうチームがときどき出てくる。それが面白く、嬉しい。 現役でバリバリにやっていたころのようにはできないかもしれない。それでも、女子の社会人チームは、一度は引退してもこんなにできるのか? と思える演技を見せてくれるものだ。team NKAMURAにも、「新体操っていいな、仲間っていいな」と思える演技を期待したい。 ☆谷口広子(岡山早島新体操クラブ) 社会人大会2位でジャパンに出場する、じつに息の長い選手だ。社会人大会からジャパンに出場するのはもう4回目ではないかと思うのだが。高校生くらいから、とてもマイペースに自分の演技を完成させようとしている選手に見えていた。 体育大学への進学ではなく、おそらく地元のクラブに戻って、指導をしながら、新体操を続けているのだろうか。男子新体操は盛んだが、女子はまだ低調な岡山県に彼女のような選手がいることは、きっといい影響があるだろう。新体操を続けていく道はいろいろあると、教えてくれる選手だ。 ☆高見留花(秋川新体操クラブ) 社会人大会3位でジャパンに進んできたが、彼女はたしかまだ16歳くらいではなかったか。去年までジュニアの大会で見ていた記憶がある。とてもパワフルでエネルギッシュな演技で、私はかなり好きだった選手だ。しかし、16歳で社会人大会に出てくるとは予想外だった。 最近は学校の種類もさまざまだ。インカレに出られない大学、高体連には出られない高校も少なくないだろう。そういう環境にいる選手にも社会人大会が門戸を開いているのなら、それは悪いことではないと思う。「続ける道はいろいろ」と、彼女もまた1つの可能性を示してくれるだろう。 ※大塚達也(おおつかたつや)  ⇒普段は、実直なサラリーマン。しかし、新体操の試合がある週末になると、献身的かつ精力的に撮影に取り組む新進カメラマン。


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posted by rg-lovers |17:40 | 2010年オールジャパン直前企画 | コメント(0) |
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2010年11月18日

オールジャパン直前企画28 大学生女子団体

オールジャパン直前企画28
円熟の技と表現! ~大学生女子団体

☆国士舘大学
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国士舘大学の女子団体がオールジャパンに出場するのは、なんと2006年以来だという。毎年、インカレでは見ているし、そこそこよい演技をしていた印象があるので、そんなに遠ざかっていたとはちょっと意外だった。 久々にジャパンに出場する国士舘大学だが、たしかに今年の団体はいちだんといい。先日の国士舘の学園祭でも見たのだが、仕上がりも悪くない。リボン+ロープは和風の音楽で、フープ×5は疾走感のあるかっこいい演技と、種目によって大きく印象が異なる演技に挑戦しているが、どちらもチームカラーによく似合っていた。 国士舘の演技のよさは、その明るさではないかと思う。もちろん、厳しい練習もしているのだろうが、とにかくみんなが楽しそうに演技している。その明るさが、人の心をうつのだ。今のチームには、小学生のころから知っている選手もいるが、みんな山あり谷ありを乗り越えてきている。それでも、新体操を続けてきたのだ。「ここまで続けてきてよかった」という思いが見ている人にしっかり伝わるような演技を見せてほしい。 ☆花園大学
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インカレのプログラムには登録選手が5人しかいない。それも、4人が4年生だ。昨年に続きジャパンには連続出場しているが、今のメンバー構成を考えると、当分はジャパンへの道のりは険しくなりそうだ。 それだけに、今回のジャパンに懸ける思いはひとしおではないだろうか。男子新体操で有名な花園大学だが、「女子も健在!」ということを示し、今後につなげられる演技を期待したい。 ☆福岡大学
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福岡大学の演技は、とても明るくてキュートだ。大学生としてはかなりはじけた演技と言えるだろう。じつは、このメンバーのなかにも、中学生くらいから知っている選手が何人かいるが、どの選手もそれほど笑顔でアピールするタイプの選手ではなかったと記憶している。ジュニア時代にはミスも多く、大きな試合でミスをして顔面蒼白になっている姿を見たこともあった。そんな選手たちが、大学生になって、こんなにいきいきとキュートに「踊りまくる」ようになるなんて! それだけでも私には感動モノだ。このチームも4年生が3人もいる。これが最後の演技、になるのだろうか。その思いをぶつけて最高の演技を見せてほしい。 福岡大学の演技最大の見せ場は、上の写真にある、リボン+ロープでの連係だ。これは、正面から見ているとハッとさせられる。リボンの上を人が転がっていくのだ(実際にはロープも使っているが正面から見るとリボンだけに見える)。何回か見て、もうからくりはわかっているのだが、それでも見るたびに、「きゃー! リボン切れそう」と思ってしまう。この技はぜひ見逃さないでほしい。 ☆武庫川女子大学
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女子の団体は、長い間「東女vs日女」だったが、ここ数年そこに割って入ってきているのが、武庫川女子大学だ。ここ4年の記録をたどってみると、2009年インカレでは総合2位、2007年オールジャパンでも総合2位、2006年インカレでも2位になっている。今の武庫川は、万年3位ではなく「2位になって驚かないチーム」に成長しているのだ。 今まで、武庫川が2位になった年は、日女が大きなミスをして3位以下に沈んでいる場合が多かった。しかし、もう相手のミス待ちでなく勝てる力は十分に持っている、ように見える。 武庫川の演技は、いつもドラマチックだ。これをミスなく実施すれば、2位に上がる可能性はある。昨年のインカレはたしか文句なしの演技で、2位だったと思うのだが、このところ惜しいミスが出てしまうことが多い印象がある。オールジャパンでは、完璧な演技で、二強を脅かし、「武庫川、ここにあり!」と見せてほしいものだ。 ☆日本女子体育大学
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日女の団体演技は、いつもリスキーだ。その分、ミスしてくずれてしまうことも案外多い。東女と日女は二強という印象だが、じつは日女の団体は3位、あるいは4位まで落ちてしまうこともときどきあるのだ。そんなときはたいてい大きなミスをしている。しかし、私はそういう失敗のリスクを犯しながらも美意識の高い演技に挑戦する日女が嫌いではない。ときには2位から滑り落ちるところも、健全だと思っている。スポーツだからそれが当然なのだから。 やっている本人達、関係者はそうは言えないだろうが、私にとって日女は何位だっていいのだ。ただ、日女らしいこだわりのある演技は捨てないでもらいたい。そう思っている。 ☆東京女子体育大学
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説明はいらないだろう。王者・東女だ! インカレは60連勝。 ジャパンでも最後に負けたのは、昭和59年だ(このとき優勝したのはなんと、佐賀女子高校!)。もちろん、王者にも波はある。「今年のチームはやばいよ」なんて評判がたつこともあった。が、前評判がどうでも本番ではきっちりまとめる。ダイナミックで迫力のある演技で。圧倒的な笑顔で。すべてのものをねじふせるような、それが東女の団体だ。 インカレのときのメンバーを見ると、紆余曲折あった顔ぶれという印象だった。4年間ずっと団体メンバーでいた、という子はいないのが今のチームだろう。 しかし、私は思う。メンバーからはずれていた時期があるからこそ、発揮できる力があるのではないか。ましてや4年生にとっては「東女」としての最後の団体演技だ。紆余曲折があったからこそ、胸に迫るものもあるはずだ。ジャパンでの演技を終わったときに、「東女で団体をやってきてよかった!」という思いが彼女たちの胸に残るといいなと思う。いや、残るに違いない。                               <写真提供/株式会社フォトクリエイト/allsports.jp> 


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2010年11月17日

オールジャパン直前企画27 大学生以上の女子選手たち⑤ 

オールジャパン直前企画27
大学生以上の女子選手たち⑤

☆原川 愛(日本女子体育大学)
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福岡の折尾愛真高校時代には、団体メンバーとしてインターハイに出場経験はあるものの、個人では全国的にはまったく無名だった原川だが、大学生になってから、まるでジュニアのようなスタイルと、キュートな演技で、一気に伸びた。昨年までは、インカレまでは出場してもオールジャパンには届かなかったが、今年はついにジャパンのフロアに立つ。 原川愛の演技からは、フロアに立てる喜び、人に演技を見てもらえる喜びがあふれている。大学3年生になってなお、チャイルド選手権に初めて出場した子どものような初々しさがある。そこが彼女の最大の魅力だ。この3年間の成長ぶりを見ても、個人選手としての厳しい練習にどれほど貪欲に取り組んでいるかが感じられる。そのひたむきさは、大学に入った時点で「まだこれから」と思えるだけの余地があってこそもてたものではないかと思う。高校までに個人で目立った実績のない選手にとって、大学、ましてや日女や東女で新体操をやろうというのはだいそれた夢のように感じるだろう。しかし、その夢を実現する選手がたまにいる。原川愛もその1人と言えるだろう。 花開く時期は人によって違う。そのごく当たり前のことを再確認させてくれる選手だ。                               <写真提供/株式会社フォトクリエイト/allsports.jp>  ☆長田侑里乃(東京女子体育大学)
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開花する時期が遅かったという点では、原川と同級生のこの長田も負けていない。ジュニア時代の彼女は、細すぎる体で安定感のない演技をする選手だった。 高校生になってから、安定感を増しぐっと伸びてはきたが、激戦区東京にいたため、インターハイにも選抜大会にも縁はなかった。高2だった2006年のユースチャンピオンシップで決勝に残り、27位になっているが、高校までの長田にとっては大きな大会ではこれが最高位くらいだ。 それでも、今でもジュニア時代とほとんど変わらないスリムなスタイルを武器に、大学生になってから東女で個人選手となり、ぐんぐん実績を出してきた。演技も安定し、貫禄も出てきた。大学生になった最初のころは、少し演技に負けているように見えていた時期もあったが、だんだんとやりこなせるようになってきた。期待に実体が追いついてきた、そんな印象だ。ジュニア時代の彼女を見て、今を想像できた人がどれほどいるだろうか。「素材はいい」と言われながら、さまざまな理由で消えていく選手も多いなか、よくここまで続いたと思う。 期待先行型、の選手ではあった思う。それでも、期待に追いつけるところまで頑張れば、こうなれる。その見本のような選手だ。 ☆宿谷あゆみ(アミューズ新体操クラブ)
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宿谷あゆみは、「落差の大きい選手」だと私は思っている。手具操作が器用で、演技に多くのリスキーな技(操作)を入れてくる、という印象を私はもっているのだが、それゆえに、「あ~あ」なミスも少なくない。そんな選手だ。 途中まで素晴らしい演技をしていたのに、途中から大くずれ、そんな演技を何回も見た覚えがある。たしか今年のインカレでもそんな演技が多かった。決して守りに入ることのない演技、はとてもいい。いいだけに、なんとかもうちょっと演技をまとめて、それなりの評価を得てほしいな、とそう思っていた。 そんな彼女が、今年のクラブ選手権では、4種目をよくまとめた。小さなミスはあったにせよ、大くずれしなかった。その結果、オールジャパンの権利を勝ち取ったのだ。ミスに泣いた姿も何度も見てきただけに、私もうれしかった。 今年の1月、長野カップで宿谷の演技を見たとき、「この子は大学でも新体操をやるんだな」と確信した。高校卒業を目前にして、宿谷の演技はまだまだこれからやりたいことがたくさんある! という意欲に満ちたエネルギッシュな演技だったから。そのときもミスはしていたけれど。 何年も前から、巧い選手ではあった。だが、まだ彼女は登り坂の途中にいるらしい。きっともっと登れる。クラブ選手権でその可能性は見えた。これからが本当に楽しみだ。                                       <撮影:小林隆子> ☆庄司七瀬(東京女子体育大学)
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おそらく。 今年はきつい1年だったのではないか。 インターハイ3連覇、大学に入ってからも、優勝争いの一角にいた庄司七瀬が、今年は苦しんでいる。私にはそう見えた。 ジュニア時代から本番でのミスが少なく、安定感のあった庄司が、今年は試合で何回か大きなミスを犯している。庄司らしくないミス、だった。 チャイルドのころからずっと、いつも一生懸命で、演技中には輝くような笑顔で、いつも「上手な選手」だった彼女がこんな風に苦しんでいるのを見たのは初めてのような気がする。 ただ、成績がどうだとしても、本来の「庄司七瀬」はそれほど揺るがないのではないかと思う。少なくとも、私が思っていた庄司はそういう選手だ。工夫と努力のうえに、いい結果がついてきたこともあった。もちろん、そのときはそれが嬉しかったに違いない。だが、庄司は「勝つこと」をもっとも望んでいたのだろうか。私にはそんな風には見えなかった。 高校時代の庄司は、いつも「もっともっと自分が向上すること」を望んでいるように見えた。その結果が、インターハイ3連覇にもつながっていただけ、なのだと思っていた。 庄司七瀬は、演じたいものをもっている、こうありたいという選手像をもっている、それはかならずしも「勝ち」にはつながらないかもしれないが。庄司はそんな選手だと、私は信じている。ほかの選手がどうだろうが、誰がどんな点数を出そうが、それは関係ない。自分は自分の道を行くだけだ、と覚悟を決めれば、きっと庄司七瀬は再び輝きを放つに違いない。 <撮影:大塚達也> ※小林隆子(こばやしたかこ)  ⇒AJPS(日本スポーツプレス協会)会員のカメラマン。『DDD』『クララ』『スポーツナビ』などで活動するとともに、自ら運営するWebサイト『Figgym』では、感性豊かな新体操の写真を公開している。 ※大塚達也(おおつかたつや)  ⇒普段は、実直なサラリーマン。しかし、新体操の試合がある週末になると、献身的かつ精力的に撮影に取り組む新進カメラマン。


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2010年11月17日

オールジャパン直前企画26 高校生女子団体②

オールジャパン直前企画26
心をひとつに! ~高校生女子団体②

☆東海大学付属第二高校
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昨年のオールジャパンは、高校生にとってはきつい大会だった。国体までは団体種目がロープ、その3週間後に行われたジャパンは「フープ×5」「「リボン+ロープ」だったからだ。せっかくインターハイで出場権を獲得してもジャパンにはエントリーしない高校が相次いだ。そんな状況にもかかわらず東海第二は、しっかり2種目の演技を仕上げて出場してきた。本番ではリボン+ロープでミスが出て、総合順位は9位となったが、フープでは堂々種目別決勝に残り、5位になっている。高校生のチームとしては、すばらしい健闘だった。 このときに、驚いたのはそんなにも厳しい日程にもかかわらず、東海第二の演技は2種目ともまったく「やっつけ感(とりあえず)」がなく、本気できちんと練習してきたと感じさせるものだったことだ。どれほど練習したところでミスは出るときは出る。それは仕方がない。しかし、このチームの演技の同調性や、動きを「自分たちのもの」として咀嚼できている感じは、短期間で演技を仕上げてきたチームには見えなかったのだ。ジャパン出場を念頭において、計画的に練習をしてきたのなら、それはそれですごいことだと思う。または、短期間の練習だったのだとしたら、短期間でここまでまとめあげることのできた選手たち、指導者がすごいと思う。 東海第二は、熊本RGの選手たちが多いのだと思うが、熊本の選手達はいい意味で似たような動き方をする。それは、「基礎がきちんとしている」という言い方をしてもいいと思う。だから、こんな風に、条件が悪かったとしてもやれるんだ、と去年の演技で、私は思い知らされた。 今年のインターハイの演技を見ても、東海第二のそのよさは変わっていなかった。今年のオールジャパンでも、ドラマチックで力強い演技を見せてくれるに違いない。 ※写真は2009年オールジャパンのものです。                                         <撮影:榊原嘉徳> ☆佐賀女子高校 今年のインターハイで優勝した佐賀女は、やはり強い。今年のインターハイは女子も非常に激戦で、終了後には、「私は別のチームのほうがよかったと思う」という意見も正直、聞こえていた。団体演技とは得てしてそういうものではあるが。 しかし、国体での佐賀女子の演技終了後には、「やっぱり佐賀だ」という声が多かった。そう認めさせるだけのものが、やはり佐賀女の演技にはあるのだ。 佐賀女らしい工夫された連係や交換もすごいが、国体で目立っていたのはその投げの正確さだ。交換での移動もほとんどないし、個人での投げもまったく危なげない。それぞれが狙ったとおりの位置に落ちてきて、受けながらの難度の実施がスムーズなのだ。フェッテのそろい方もすごい。かなり長く回るのだが、狂わない。インターハイに出てくる、それも上位に入ってくるようなチームにとっては当然のことかもしれないが、意外に難しい。その当たり前のことをきっちりやってのけるのが佐賀女の底力だろう。その揺るぎない演技を、オールジャパンでも見せつけてほしい。 (※写真がなくてすみません。) ☆NPOぎふ新体操クラブ
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岐阜済美高校として出場したインターハイでは7位で惜しくもジャパンに届かなかった。それでも、ぎふはあきらめない。クラブ団体選手権で、2位となりジャパンの舞台をもぎ取った。クラブ団体のときの演技もすばらしかったが、そのあとに見た国体での演技は、まさに鳥肌モノだった。ドラマチックな「カルミナ・ブラーナ」にのせて、どこまでもリスキーで迫力のある演技、重厚感のある演技が2分半続く。見ているほうも力が入ってしまうような、そんな演技だ。ノーミス演技を見ると、それだけでもう「よくぞここまで」と思わせてくれるそんな演技だ。 幼いころから磨きをかけてきた身体能力、手具操作能力、そのすべてが高校生としては最高レベルにまで研ぎ澄まされている。そして、その能力を惜しみなく使った難しい構成を、彼女たちはやりきる、のだ。 この演技を見ていると、そこで行われている演技ではないものまでが浮かんでくる。彼女達の歩んできた道、そして、戦ってきたものが。 かつては厳しい先生、怖い先生と評判だった(失礼!)ぎふの監督さんが、国体では彼女達の演技に手放しで拍手喝采していた。優勝には届かなくても怒るでも悔しがるでもなく、「よくやりましたー!」と笑顔で胸を張っていた。今のNPOぎふは、指導者がそうやって胸を張れる、そんなチームだ。                                                                    <撮影:大塚達也> ☆名古屋女子大学付属高校 今年の名女の演技は、非常に評判が高い。インターハイでは2位だが、「優勝してもおかしくなかった」という声も多かった。しかし、私はDVDでその演技を初めて見たとき、正直、「そこまでいいかな?」と思った。もちろん、うまい。そして、美しい。ただ、インパクトがすこし弱い。そのため、小さなテレビ画面で見る演技には、そこまで伝わってくるものがなかったのだ。 しかし、この記事を書くために、細かい部分に気をつけながら名女の演技を見てみると、多くのことに気がついた。まず、5人そろっておそろしくかかとが高い! 村瀬はるかのかかとの高さはトップ選手の中でも出色だと思っているが、その村瀬が目立たないくらいに、ほかの選手のかかとが高い。これはすごいことだと思う。彼女たちはかかと高さの平均値でならフェアリージャパンにだって負けてない。つま先も本当に繊細で美しい。これは高校生のましてや団体としては画期的なレベルだ。 初めてDVDで演技を見たときに、私の受けた印象が薄かったのは、おそらく曲のせいではないかと思う。女性ボーカルのスキャットが延々と続く大きな盛り上がりのない曲は、ドラマチックな曲を使うチームが多いインターハイではさらりとし過ぎて見える。しかし、だからこそ、今の名女のこの美しいチームでなければ使えない曲のようにも思う。インターハイにこの曲で勝負を懸けるというのは、ある意味、名女の自信の表れかもしれない。そして、たしかに、彼女たちのなめらかで美しい動きにはこの曲は合っている。難しい連係や交換よりも、一人一人の動きの美しさが印象に残る演技は、インターハイでは珍しい。そこで勝負した名女には拍手を送りたい。 (※写真がなくてすみません。) ☆藤村女子高校
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挑戦的な選曲という点では、藤村も負けていない。フィギュアスケート中継のテーマソングにもなっている「ボレロ」だ。「ボレロ」はたしかに名曲だが、なにしろ同じ旋律の繰り返し、2分半の演技にめりはりをつけるのが、ちょっと難しい曲だ。 それでも、今年の藤村の演技は、ステキだった。持ち味のスピード感も十分にあり、中盤の独創的な連携もインパクト十分だ。インハイでも国体でもミスが出てしまい、順位はすこし落としたが、全国で上位を争うには十分な魅力ある演技だったと思う。 惜しむらくは、動きが速く、止まるところの少ない藤村らしい演技ゆえに、びしっとそろって見えるところが、少ないような気がする。また次々に動きが連続しているため、少しのズレがあると次にも影響が出る。そういう面で、勝ちにくい演技でもあったかもしれない。 オールジャパンのメンバーには、これが藤村団体では最後の演技となる田中美朱も入っているようだ。藤村での3年間で、すっかり馴染んできたはじける笑顔満面の卒業演技が見られることを期待したい。 ※榊原 嘉徳(さかきばらよしのり)  ⇒1985年よりスポーツ写真を始める。さまざまなジャンルを撮っていたが、体操関係の役員様と出会い新体操、器械体操中心になっていく。現在、スポーツナビ、ジュニア体操連盟での撮影を担当。感動をいかに伝えられるかをモットーに撮影に向き合っている。ご意見、ご感想、撮影依頼などは⇒ fwkh3915@mb.infoweb.ne.jp まで。 ※大塚達也(おおつかたつや)  ⇒普段は、実直なサラリーマン。しかし、新体操の試合がある週末になると、献身的かつ精力的に撮影に取り組む新進カメラマン。


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2010年11月17日

オールジャパン直前企画25 高校生男子団体②

オールジャパン直前企画25
これが、リアル・タンブリング! 
  ~高校生男子団体②

いよいよ、今日から代々木第一体育館では会場準備が始まっています。明日は公式練習と開会式。そして、あさってからついにオールジャパンが始まります。
この企画もいよいよ大詰めで、ついに1日3回更新しないと終わらないという事態に・・・。果たして最後まで完走できるのでしょうか? 頑張りたいと思います。

さて、今日から大会期間中、このブログのコメント欄を投稿可能な設定にしてみました。選手たちへの応援メッセージや、競技が始まりましたら感想の書き込みなどにもご利用ください。万が一にも問題のあるコメントが投稿された場合は、断りなく削除させていただきますが、その点はご了承ください。みなさんが節度と、選手たちへの愛をもってコメントを寄せてくださることを期待しています。

では! 男子高校生団体、いきます!

☆井原高校
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今年のインターハイでの順位は8位だが、井原の演技は、「未来につながるもの」を感じさせてくれる演技だったと思う。 井原の特徴である柔軟性も、十分に見られ、男子ではなかなか難しいもぐり回転も6人そろって高いレベルで実施できたり、必須であるバランスや鹿倒立も秀でた柔軟性をいかした形が群を抜いて美しい。構成も凝っていて、とくに最初のタンブリング連続のあと、1人の選手がフロアの向かって左端から走ってきて行う組み技は面白かった。 男子新体操の団体にしては、わかりやすい盛り上がりのないともすれば単調に感じられてしまいそうな曲を使っているが、それだけに、流れるように美しい井原の選手達の動きが際立っていたように思う。1・2年生の多いメンバー構成だったことを考えると、この先がとてつもなく楽しみなチームだ。 ☆恵庭南高校
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インターハイでは10位と奮わなかった恵庭南だが、春の選抜大会では5位に入り、オールジャパンの出場権を獲得した。北海道のチームらしい男らしくて勇壮な印象の演技は、オーソドックスな「ザ・男子新体操」という感じだ。以前からタンブリングの強さには定評のある恵庭だが、それは今も変わっていないようだ。演技序盤での乱れうつような連続タンブリングは迫力がある。一方で、中盤のスローパートではおもしろいカノンが入っていたり、構成にも工夫が見られる。3年生の多いチームだったので、ジャパンにはどういうメンバーで出てくるのかわからないが、先日の全日本ジュニアでも、有望なジュニアがたくさん育っていた恵庭のことだ。おそらく、下の学年にも力のある選手がいるに違いない。このオールジャパンが、3年生の集大成の場になるにせよ、新人の全国デビューの場にせよ、頑張ってほしい。 ※写真は、2009年のオールジャパンのものです。           <撮影:榊原嘉徳> ☆坂出工業高校
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スポーツマンらしい坊主頭の選手たちなので、一見した感じでは「こじゃれた演技」をしそうには見えないのだが、どうしてどうして! おおかたの予想を裏切って、坂出工業の演技は、とてもおしゃれだった。曲の冒頭の「カタカタ」という音は、フラメンコの靴で床を踏み鳴らす音だろうか。曲が始まると、いきなり情熱的なフラメンコギター、そして、選手達の動きも非常に洗練されていて、思わず「かっこいい!」と声をかけたくなる。演技の途中で、個人演技のラストに入っているようなすこし変わったポーズを6人がそろってするところが何箇所かあるが、それがとてもいいスパイスになっていて、この作品のミステリアスな雰囲気を盛り上げているように思う。 とくに演技の序盤と終盤の動きが秀逸で、「一体から分離そして、再会」というストーリーがうかんでくる演技だった。このチームもほとんどが3年生だったが、これだけ洗練された動きのできる選手達にはぜひどこかの大学で新体操を続けてもらいたいものだ。 ※写真は2009年のオールジャパンのものです。            <撮影:榊原嘉徳> ☆埼玉栄高校
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今年度インターハイチャンピオン・斉藤良輔を擁する埼玉栄高校の団体は、3部構成のドラマを見ているような作品だった。スタートは、力強く迫力のある男子新体操ならではの演技で、中盤のスローパートでは美しさやダンス的な動きのおもしろさを見せる。そして、後半に入ると他のチームはやっていないような独創的なタンブリングや組みなどを繰り出し、ちょっとサーカスを見ているような気分にさせる。なかなか盛りだくさんで贅沢なプログラムだと言えるだろう。 それだけに、1つの世界観にどっぷりと浸るような見方が出来ず、そこで評価が左右される面もあるように思うが、とても意欲的で将来性を感じさせる演技であることは間違いない。 後半で見せる、手支持なしの側転のようなタンブリングや、中盤に入っている3バックかと思いきや、途中からばらけていくタンブリングなど、「はっ」とさせる技や構成が独特で面白い。このチームは斉藤良輔以外は1・2年生。来年はますます侮れない存在になりそうだ。                                        <撮影:小林隆子> ※小林隆子(こばやしたかこ)  ⇒AJPS(日本スポーツプレス協会)会員のカメラマン。『DDD』『クララ』『スポーツナビ』などで活動するとともに、自ら運営するWebサイト『Figgym』では、感性豊かな新体操の写真を公開している。 ※榊原 嘉徳(さかきばらよしのり)  ⇒1985年よりスポーツ写真を始める。さまざまなジャンルを撮っていたが、体操関係の役員様と出会い新体操、器械体操中心になっていく。現在、スポーツナビ、ジュニア体操連盟での撮影を担当。感動をいかに伝えられるかをモットーに撮影に向き合っている。ご意見、ご感想、撮影依頼などは⇒ fwkh3915@mb.infoweb.ne.jp まで。


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2010年11月16日

オールジャパン直前企画24 男子大学生「ミラクルエイジ」③

オールジャパン直前企画24
男子大学生「ミラクルエイジ」③

☆谷本竜也(花園大学)
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大舌恭平とは、ジュニアクラブ、精研高校と同輩だ。ジュニアから、高校1年生までは、個人での成績はほとんど谷本が上回っていた。たしかに、今の演技を見ても、谷本のほうが穴がないように思う。すべての要素が高いレベルでバランスよくそろっている、そういう意味では谷本のほうに分があるようにも見える。 しかし、他ブログの記事で知ったが、谷本は自分の演技が「つまらない、魅力がない」と思っていたという。高校時代の後半から大舌にも負けるようになったのも、そのせいだと。谷本はそう思っていたらしい。 たしかに、大舌には、華がある。同じことをしても、「はっ」と思わせるものが大舌にはある。そんな選手が常に身近にいたら、能力や努力では埋められないものがあると思い知ることもあったのだろう。 ただ、私は、高校時代の彼らを知らない。初めて意識して見たのは、2008年のオールジャパンだ。その試合で谷本は4位になっている。大舌は7位。たしかに、この試合での演技は、私には大舌よりも谷本のほうが印象に残っている。 それも、技術のよしあしはまだわからずに見ていたものだから、判断の基準は「心が動くかどうか」「魅力的だと感じたかどうか」「表現しているものが感じられたかどうか」・・・それらはおそらく、大舌に勝てなくなった高校時代のおわりに、谷本が「自分に不足しているもの」と感じていたものではないかと思う。が、2008年の谷本は、そういう面でこそ優れた選手に、私の目には映ったのだ。 それもそのはず。花園大学進学後の谷本は、2007年にインカレデビューして、いきなり優勝、2007年のオールジャパンは、8位で2位の大舌の後塵を拝しているが、2008年インカレでは、2位となり、8位の大舌を再び突き放す。そして、迎えた2008年のジャパンで私は初めて谷本を見たのだが、このときも大舌より上だった。2009年インカレは3位、ジャパンも3位。どちらも大舌には負けていない。 2010年のインカレでは、「無冠のまま終わりたくない」という大舌の強い思いが、すでにインカレ優勝経験のある北村や谷本の優勝を阻んだかのようだったが、谷本の演技も決して悪くはなかった。本当にこの「ミラクルエイジ」たちは、すさまじく高いレベルで競い合っているのだ。インカレでは大舌に勝利の女神が笑顔を見せたが、オールジャパンでは女神の気が変わるかもしれない。なにしろ、彼らの演技は、誰の演技も、どの演技もすばらしいのだから。 かつては表現力には自信のない身体能力頼みの演技だったという谷本。しかし、今の彼にはその面影はない。とくにしっとりとした演技では他の追随を許さぬほどの繊細な美しさを見せる。その澄み切った演技を「表現力がない」という人は、誰もいない。 早くから頭角を現したということは、身体能力や器用性に秀でたものをもっていたのだろうと思う。ただ、「魅力」という点が不足してた(と本人は思っている)彼が、この4年間で得たものは、不足を補ってあまりあるものだったのではないだろうか。 自らの弱さや欠点を認識し、自覚するところから成長は始まる、とはよく言われる。たしかに。こんなに大きく成長できるのだ、と谷本の演技は教えてくれる。彼のクラブの演技「ちいさい秋見つけた」は初めて見たときから忘れらなくなった珠玉の名作だ。ぜひこの演技を見てほしい。そこには、この才能あふれるミラクルエイジのなかにいて、人一倍自分に足りないものを感じ続けてきた谷本が、たどりついた極みがある。 この3人が同じ学年に存在し、切磋琢磨したからこそ、見ることができる今の彼らの演技はまさに「ミラクル」だと思う。 だが、本当に「ミラクル」なのは、彼らがじつに仲がよく、お互いを認め合っていることだ。インカレの競技終了後、優勝を決めた大舌のところに、北村と谷本が寄って行った。そして、観客席の身内からカメラを向けられていることに気づくと、3人でポーズをとっていた。「え? もっと? じゃあこんなのは?」というようにポーズを変えて見せる3人は、数分前までコンマいくつの点差を争っていたようにはまったく見えなかった。1つの勝ちや負けで、妬んだり恨んだり、または驕ったりするには、彼らは長くともに過ごしすぎているのだろう。 きれいごとのようだが、勝っても負けても、彼らはおそらく自分たちのことが好きでいられる。そして、新体操が好きでいられる。そんな3人なのではないか。 2010年11月19日~21日、代々木第一体育館で、「ミラクルエイジ」の、最高の瞬間を見ることができる私は、本当に幸運だ。 3人が、こんな風に素敵に育ってくれた「ミラクル」に、感謝したい。                               <写真提供/株式会社フォトクリエイト/allsports.jp> 


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2010年11月16日

オールジャパン直前企画23 男子大学生「ミラクルエイジ」②

オールジャパン直前企画23
男子大学生「ミラクルエイジ」②

☆北村将嗣(花園大学)
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「ミラクルエイジ」のなかでも、もっと輝かしい道を歩んできたのは、北村将嗣だろう。 全日本ジュニアでは2002年優勝、2003年2位。 2004年インターハイ13位(ロープの点数がやけに低い。大きなミスがあったようだ)、2005年インターハイ優勝、ジャパン12位、2006年高校選抜2位、インターハイ2位、ジャパン14位。 2007年に花園大学に進学すると、大学1年生のインカレでいきなり2位、ジャパンでは優勝してしまう。2008年は、インカレで優勝、ジャパン3位、2009年インカレを連覇。そこまでは快進撃そのものの大学時代だった。 しかし、昨年のジャパン。北村はまさかの17位に終わる。たしかに、精彩のない演技で、ミスもしていた。どうしたんだろう? とは思ったが、あとで聞いた話によると、どうも直前までインフルエンザで苦しんでいたらしい。北村にとっては、悔いの残る大会になっただろう。 ジャパンの直後に、ある発表会で北村と谷本のエキシビション演技を見た。そのとき北村は、高校球児のような坊主頭になっていた。ジャパンの反省だったのだろうか。坊主頭でもエキシビションでの北村の演技はすばらしかった。エキシビションだけに、おどけた姿も見せていたが、それがまたよく似合っていた。演技だけを見ていると「ドラマチックガイ北村」「ダンシング将嗣」そのものだが、素の北村は、とても親しみやすそうなおもろいお兄ちゃんで、発表会でも小さな子ども達に大人気だった。 北村の演技には、いつも「天才性」を感じる。もちろん、多くの努力に裏打ちされていることは十分わかる。わかるが、天性のものがなければこうはなれない、と思わせるものが北村にはある。 北村はジュニア時代から実力のある選手だったが、高校は京都紫野高校。個人では3年連続インターハイに出場しているが、団体での出場経験はない。ジュニアでもそうだ。大舌や谷本が、ジュニア、高校と団体・個人を兼任してやっていたころ、おそらくだが、北村はマイペースに個人演技で自分の世界を追究できていたのではないだろうか。天性の素質や才能、のほかにこと個人選手としての北村には「時間」もあったのかもしれない。 それは北村にとってある意味、有利な条件だったとも言えるが、一方で、高校生にとってはモチベーションを保ちにくい環境とも言える。同じ団体メンバーで切磋琢磨するような状況のほうが、たとえ練習時間は少なくても、個人の力もつくし、少々嫌なことがあってもやめにくい、そういう面があると思う。その点、北村は、自分自身でモチベーションを上げる必要があっただろうし、新体操以外の誘惑があったとしたら、それを自分ではねのける必要もあったのではないだろうか。 ただ、そういうマイペースを保てそうな育ち方をしてきたから、北村はその独特な個性を押し殺すことなく伸ばしてこれたのではないかと思う。 北村の演技の特徴は「ヘンなポーズ」だ。「ヘン」とは失礼なのだが、なんと言えばいいのか、「男子新体操ではあまり見かけないポーズ」という意味だ。笑ってしまうような「ヘンさ」ではもちろんない。北村の演技にそれらのポーズは、絶妙のスパイスとなって効いている。 私が、初めて北村の演技を意識して見たのは、2008年のオールジャパンだったが、その年に見た男子の演技の中では、ひときわ印象に残った。なんというのかあまりにもアクが強く、あまりにも「踊っていた」から。えっ? 男子新体操ってこんなに自由なの? と思ったのだ。 そして、北村の演技は、個性的なだけでなく、ジュニア時代から常に上位にいた選手だけのことはあるたしかな技術、能力の上に立っている。だから、独特な表現も動きもこけ脅しや付け焼刃ではない、「ホンモノ」なのだ。 彼は、男子新体操選手として必要な能力や技術を十二分に身に付けている、そしてその上から、自分らしさで彩っているのだ。徒手も、タンブリングも手具操作も、ほとんど破綻がない。だから、私たちは北村将嗣の世界で心地よく酔わせてもらえるのだ。そう、ちょうどフィギュアスケートの高橋大輔の抜群の表現力が、高度なスケーティング技術の上に成り立っているように。 北村将嗣はきっと「わがまま」だと思う。経歴と演技を見ていてそう思う。だけど、表現者として生きていくためには、それは悪いことではない。大学生最後のオールジャパン。思い切りわがままに、思い切り気分よく「まさしワールド」を展開してほしい。                               <写真提供/株式会社フォトクリエイト/allsports.jp> 


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2010年11月16日

オールジャパン直前企画22 男子大学生「ミラクルエイジ」①

オールジャパン直前企画22
男子大学生「ミラクルエイジ」①

ここまでたくさんの選手を紹介してきたなかで「ゴールデンエイジ」という言葉を何回か使ってしまっていますが、今年の大学4年生こそは、将来にも語り継がれそうな世代です。「ゴールデン」を超えた「ミラクルエイジ」とでも言えばよいでしょうか。
今年度のインカレチャンピオン・大舌恭平(青森大学)、2位の北村将嗣(花園大学)、3位の谷本竜也(花園大学)。この3人は、長い間、常に頂点に近い場所で、競い合ってきました。そして、それぞれに個性的で、おそらく下に続く多くの後輩達に影響を与えてきた選手達だと思います。彼らが大学生としてオールジャパンに出場するのは今年が最後です。現役選手なのも今年が最後、の可能性が高いです。しかし、この先、おそらく男子新体操以外のステージでも活躍が期待されている、そんな3人だけに、今見ておいて絶対に損はありません。いや、見ておかないと後悔しますよ!(笑)オールジャパンのチケットは、かなり売れてきたようですが、まだ空きのある日もあります(19日が狙い目です)。みんな見てほしい選手達ですが、とくにこの3人は! ぜひぜひ見てもらいたいです。この週末は代々木第一体育館へGO! です。

では、今年のオールジャパンでも間違いなく中核をなすであろうこの「ミラクルエイジ」を、男子個人選手の締めくくりに紹介しましょう。

☆大舌恭平(青森大学)
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インカレでの大舌恭平は、まさに「千両役者」の風格と輝きをもっていた。今の彼は、「銀のスプーンをくわえて生まれてきた王子様」のように見える。なんの苦労もなく、持って生まれた才能を生かして、ここまできたのだろう、というように見えてしまう。彼の演技は、華やかで苦労とか努力とは無縁に見えてしまうのだ。とても自由に、思いのままに踊っているだけなのに、人の心をつかんでしまう、そんな演技に見えるのだ。 しかし、じつは。意外にも大舌は遅咲きな選手だった。 男子新体操の名選手を輩出し続けている岡山県の井原ジュニア。大舌はその創設期からのメンバーだ。うちにある資料に、彼の名前がいちばん最初に出てくるのは、2002年の全日本ジュニアだ。このとき、井原ジュニアの団体メンバーに名前を連ね、井原ジュニアは4位になっているが、個人では出場していない。同級生の北村はこの年、ジュニアチャンピオンになっており、チームメイトの谷本も個人で9位になっている。この時点で大舌は「出遅れて」いた。 翌2003年の全日本ジュニアで、大舌の所属する井原ジュニアは、団体優勝を遂げる。ジュニア最後のこの年、大舌も個人で出場を果たしているのだが、スティック1種目だけに出場し、クラブを棄権。直前の怪我のため、メンバーの替えがきかない団体を優先した苦渋の決断だった。この年、北村は2位、谷本は5位。また少し差が開いてしまった。 2004年には、精研高校に進学。インターハイには、谷本といっしょに団体メンバーとして出場して5位。個人では、当時同じ高校にいた兄・俊平(烏森RGメンバー)がインターハイに出場。北村だけが高1のときから個人でインターハイに出場している。 ところが、2005年3月、高校選抜大会で大舌は、優勝する。個人に関しては全国でなんの実績もなかった高校1年生が、突然の優勝である。しかし、2005年のインターハイでは、精研高校は団体優勝をするが、個人は17位におわる。団体では優勝して、個人が残念な結果におわる、ジュニアのときと同じだった。北村は、この年のインターハイで2位になっている。縮まったと思った差は、また開いたかのように見えた。 しかし、2006年、大舌にとって最後のインターハイで、ついに個人優勝を遂げる。この年は、団体でも優勝。大舌は、2つの金メダルを獲得している。個人準優勝は、北村だ。そして、2006年にはオールジャパンにも個人で出場し、なんと5位になる。もちろん、高校生としては最上位だ。 怪我に泣き、ミスに泣いてきた大舌は、高校最後の年になってついに大舞台で結果を出したのだ。 青森大学に進学してからの大舌は、インカレ、オールジャパンにも常に顔を出す選手になった。しかし、優勝にはなかなか手が届かない。おまけに2008年のオールジャパンでは、最終日の演技中に腕を脱臼。見ている人の血の気がひくほどの大きな怪我を負ってしまう。怪我からの復活をかけた2009年インカレは5位、オールジャパンは6位。ブランクを考えれば立派な成績だが、優勝にはやはり届かない。 大学生活残り1年になった時点で、大舌恭平はまだ無冠だった。 そして迎えた2010年インカレ。大舌の演技には有無を言わせぬ力があった。なにしろ「ミラクルエイジ」だ。同級生であり、ライバルである北村や谷本も見事な演技で応酬した。誰が勝ってもおかしくない、そんな試合だったのだ。しかし、そんな激戦でありながら、なぜか大舌恭平の優勝はまるで必然であるかのような、そんな空気すらあった。それが、2010年のインカレだ。 勝つ試合での大舌は本当に堂々としていて、負ける姿が想像できない。それほどのオーラがある。しかし、それは決して簡単に何回も手に入ったものではないのだ。高校でも大学でも、最後の最後にやっと爆発できた。じつは、大舌恭平はそんな選手だ。 おそらく。 もともとはそれほど「勝ち気」な性格ではないのではないか。フロアから降りた素の大舌を見ると、そんな気がしてならない。ついに大学チャンピオンに登りつめたというのに、やけに気さくで「近寄りがたい雰囲気」のかけらもない。人なつこい笑顔の素朴そうな22歳の青年だ。いい意味で、「勝ち続ける選手」というタイプではないのだ。 演技もそうだ。大舌の演技からは、「自分のよさを見せたい」「この動きを見せたい」「こう表現したい」・・・そんな欲はしっかり見える。ガンガン伝わってくる。 しかし、「負けない!」「俺が一番だ!」という欲は? あまり見えてこない。だからこそ、大舌の演技は、見ている者の心に「うまい、すごい!」だけでない「なにか」を強く残すのではないだろうか。大舌は、実力や素質のわりには「金メダル」には恵まれなかった選手、かもしれない。だけど、それは決して悪いことではないだろう。競技成績は競技成績にすぎない。現役を離れてしまえば、現役時代に思っていたほどの効力などない。 それに対して、演技のもつ魅力、その選手が人としてもつ魅力。それは消えない。あのときのあの選手は何位だったという記憶はすぐに薄れてしまう。しかし、「大舌恭平のルパン(リング)見た?」「大舌恭平の月光(スティック)かっこよかったよね~」という記憶は長く残る。そういうものだから。 オールジャパンで彼は、きっとみんなの記憶に残る演技を見せてくれるに違いない。だって、彼はそのために、ここまで新体操を続けてきたのだから。代々木第一体育館の空気を「恭平オンステージ」に変える、そんな演技を期待したい。                          <写真提供/株式会社フォトクリエイト/allsports.jp>  ※「ミラクルエイジ」は、本日3回に分けてアップします。少々お待ちください。


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2010年11月15日

オールジャパン直前企画21  大学生以上の女子選手たち④

オールジャパン直前企画21
大学生以上の女子選手たち④

☆山脇麻衣(町田RGもりの)
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あの小さかった山脇麻衣がついに大学生!今も小柄には違いないが年齢相応に女性らしさは少しばかり出てきたようにも思う。 思えば彼女は小学生のころから表現する、演じるという意識の高い選手だった。身体能力が特別高いわけでもなければ、とりたてて器用でもない。ただ、「踊ること=演じること」が好きでたまらないというエネルギーだけは小さな体にはおさまりきれず常に溢れていた。そして、そのエネルギーが山脇麻衣をここまでの選手にしたのだ。 山脇の魅力は1分半の作品の世界にどっぷり入り込む力だ。芝居がかった動きや表情は天下一品と言っていい。とくに指先と顎の動きがじつに表情豊かだ。音楽の生かし方にも長けている。山脇のフープの曲は海外の有名選手もよく使っているが、誰のどの演技よりも山脇バージョンがいい!と思うほどだ。 オールジャパンでもぜひその女優魂全開の演技を見せてくれることを期待したい。 ☆岩倉 歩(日本女子体育大学)
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故障に泣いた1年だった。 岩倉歩は、ジュニア時代から力のある選手ではあったが、トップ集団のすこし下くらいにいることが多い選手だった。全日本ジュニアでは2003年の10位、インターハイは2006年の12位が岩倉の最高順位だ。 しかし、日本女子体育大学に進学してからの岩倉はまさに快進撃を見せる。1年生で出場した2007年のインカレではいきなりの6位。2008年には10位とすこし順位を落としたものの、3年生になった2009年にはインカレ3位、ジャパン4位まで登りつめた。 大学生になってから開花したのは成績の面だけではない。高校時代まではがっちりとした筋肉質な体つきで、あまり表現力のあるタイプには見えていなかった岩倉は、見違えるように華のある選手に変貌したのだ。大学1年生のときの東日本インカレをDVDで見たときに、私は彼女が誰だかわからなかった。誰だかわからないけれど、日女にとてもステキな選手がいる! と驚いたものだ。それがジュニア時代から何回も見ている岩倉歩だとは、本当にわからなかったのだ。そのくらい、彼女は大学で開花した。 大学生活最後の年は、岩倉にとっては長く苦しい1年だったかもしれない。それでも、オールジャパンで岩倉の演技を見られることを嬉しいと思っている人はたくさんいるはずだ。音楽に乗って、小気味よく動き、ときにはコケティッシュな表情を見せ、ダンサブルにステップを踏む。ドキドキするようなスピード感あふれる手具操作にも挑戦する。そんな岩倉の演技は、この4年間、とても私を楽しませてくれた。私だけではなく多くの人がそうだろうと思う。 大学生最後の年がおそらく不本意な形で終わろうとしていることで、もっとも悔しい思いをしているのは本人だろう。だからこそ、最後に「岩倉歩らしい」魅せる演技を見せてほしい。 <撮影:榊原嘉徳> ※榊原 嘉徳(さかきばらよしのり)  ⇒1985年よりスポーツ写真を始める。さまざまなジャンルを撮っていたが、体操関係の役員様と出会い新体操、器械体操中心になっていく。現在、スポーツナビ、ジュニア体操連盟での撮影を担当。感動をいかに伝えられるかをモットーに撮影に向き合っている。ご意見、ご感想、撮影依頼などは⇒ fwkh3915@mb.infoweb.ne.jp まで。 ☆平田美沙紀(飛行船新体操クラブ)
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立っているだけで絵になる選手。 平田はジュニアのころからそう言われていた。団体に入っていてもひときわ目立つ、そんなオーラが彼女の最大の武器だった。 しかし、2005年12月のオーディションを経て、フェアリージャパン入りしてからは、平田は決して恵まれた場所にはいなかった。見ているほうがつらくなったことも何度となくあった。それでも平田美沙紀は最後までやりぬいた。自分から勝負を捨てることはなかった。 あのフェアリーでの日々がなかったら、私の目には平田は「新体操の神様にはじめから選ばれているような恵まれた選手」にしか映らなかったかもしれない。しかし、彼女の強さやたくましさ、ひたむきさを知った今、平田が少しでも自分の満足のいく演技ができて、輝いて、いつの日かいい新体操人生の終わりを迎えられるようにと願わずにはいられない。 そして、彼女の演技は年々着実に円熟してきている。決して器用な選手ではないと思っていたのだが、今年のボールの演技はじつにボールがよく動き、よどみない。こんな演技をするようになったんだ、とインカレのときに胸をうたれ見入ってしまった。 大輪の花のような華やかさのある平田だが、まだ咲ききってはいない。そう、彼女はまだ進化の途中にいるのだ。                                     <撮影:小林隆子> ※小林隆子(こばやしたかこ)  ⇒AJPS(日本スポーツプレス協会)会員のカメラマン。『DDD』『クララ』『スポーツナビ』などで活動するとともに、自ら運営するWebサイト『Figgym』では、感性豊かな新体操の写真を公開している。 ☆山本千尋(明治大学)
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私が山本千尋を初めて見たのは、彼女が小学4年生のとき。第1回のクラブチャイルド選手権だった。そのとき、山本は優勝している。そう、山本千尋は、クラブチャイルド3・4年の部の初代チャンピオンなのだ。 そのときは、小さくて細くて色が白くて、ちょっと不健康そうに見えてしまうくらいの、ほんとに小さな小さな女の子だった。 ジュニア時代も、常に全日本ジュニアでも上位で活躍する選手ではあったが、私の中の山本千尋にはジュニアらしいはつらつとした印象はなかった。おそらく彼女はいつも生真面目すぎたのではないだろうか。踊り心たっぷりに、アピール満点の演技をするというよりも、きちんとやろう、ミスしないようにやろう、そんな気持ちにいつも押しつぶされそうになっていたのではなかったか。ジュニア時代の山本の演技は、いつも青白い顔をして、ゆらゆら、ふらふらとしていた印象が強い。 それが、ふっと殻を破ったように見えたのが、2006年のユースチャンピオンシップだった。このとき、山本は3位に入っているが、私は、その演技がじつに艶やかで表情豊かになっていたことに驚かされた。そして、大会後にインタビューをしたときに、自分の言葉で自分の考えをしっかり語れる山本の雄弁さにも驚いた。おとなしそうな印象をもっていたが、山本千尋は、じつに独立独歩な芯の強い選手なのだとそのときに私は知った。そして、それからぐっと好きな選手になった。 2007年、山本千尋は、明治大学に進学した。そして、4年間、山本千尋らしい魂に迫るような演技を磨き続けてきた。とくにここ2年くらい、山本の演技は、芸術の域に限りなく近づいていると感じる。誰よりも音楽に合った動きにこだわり、表情にこだわり、手具の動きにまでこだわる。そんな山本の今の演技は、一瞬一瞬が宝石のように輝いている。 山本は、今の時代の新体操選手にしては柔軟性には恵まれていない。また、イオンという強豪クラブにいたために、常に自分が中心というわけにはいかない状況もずっと味わってきていると思う。「新体操」が彼女にとって自分の存在価値を確認するためだけのものだったならば、とっくに辞めていたかもしれないと思う。嫌になっても仕方のない時期もきっとあったに違いない。 それでも、彼女は新体操を辞めずにいてくれた。それは、人からの評価、それも点数という評価よりも、自分が表現したいものを新体操で表現するということに憑かれていたからではないかと思う。つまり、山本千尋は新体操が好き、でいられた。それに尽きるのではないだろうか。 山本が、自分の可能性をあきらめずに新体操を続けてくれたおかげで、私たちは今、あの宝石のような演技を見ることができる。オールジャパンでは、4種目、いやできれば、1つでも多く。これが最後になるかもしれない、山本千尋の演技を瞬きもせずに見ていたい。                                          <撮影:大塚達也> ※大塚達也(おおつかたつや)  ⇒普段は、実直なサラリーマン。しかし、新体操の試合がある週末になると、献身的かつ精力的に撮影に取り組む新進カメラマン。


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  • 体操

posted by rg-lovers |23:31 |
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