再稼働でも計画停電不安 京の在宅人工呼吸器利用者ら
今夏に実施が検討されている計画停電に、京都市の人工呼吸器利用者らが警戒を強めている。大飯原発が再稼働してもフル稼働は7月末の見通しで、電力不足の恐れは続く。京都府や京都市は在宅で人工呼吸器を24時間利用している患者の実態把握を進めているが、体調維持に空調が必要な心臓疾患患者らからも不安の声が上がっている。
全身の筋力が動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の増田英明さん(68)=左京区=は自宅でヘルパーの介助を受けながら人工呼吸器を24時間装着して暮らしている。3~4時間もつ人工呼吸器の外部バッテリーや足踏み式の唾液吸引器をそろえ、停電に備えている。
「いざという時、行政は当てにならない。自分の命は自分たちで守る必要がある」。増田さんは昨年9月、東日本大震災による計画停電が実施された千葉県の人工呼吸器患者らを京都に招いて集会を開いた。「行政の目が行き届かない在宅患者に不安が広がっているはず。当事者で連携し、安否確認などの支援体制を今後作っていきたい」と話す。
府が医療機器業者を通じて調べた結果、人工呼吸器や酸素療法などを使う在宅患者は府内に約3500人いる。昨年12月から緊急度が高い24時間の人工呼吸器利用者の登録制度を始め、111人のうち現在47人が登録している。登録者に事前に搬送希望先の病院を挙げてもらい、緊急時に円滑な対応を目指す。
京都市は市内に74人いる人工呼吸器の24時間利用者のうち35人の情報を把握し、外部バッテリーの準備などを呼び掛けている。
ただ、生きる上で電力が欠かせない「停電弱者」は人工呼吸器利用者だけではない。
「死の宣告をされたみたいだ」。心臓機能障害を抱える山口道広さん(56)=南区=は計画停電に不安を募らせる。アパートに一人暮らし。自動車整備業を営んでいた約10年前、心筋梗塞で倒れた。腰と左足に障害も残った。仕事ができなくなり、生活保護を受けている。「血圧が上がると致命傷」と薬の服用が欠かせないという。「クーラーが止まったら体がもたない。涼しい公共施設に行こうにも炎天下を歩けない。どうしたらいいのか」と訴える。
【 2012年06月09日 14時02分 】