大飯原発3、4号機(おおい町)再稼働の必要性を訴えた野田首相の八日の会見。原発が立地する市町の首長らが評価する一方、事故が起きた際に真っ先に被害にさらされる県民の中からは、「もう福島の事故を忘れたのか」と憤りの声が上がった。
◆反対県民は憤りの声
大飯原発が立地するおおい町の時岡忍町長は、「関西を支えているのが福井県であり、おおい町だという言葉を聞いた。ありがたい」と時折笑みを見せ、満足げに語った。
県議会の田中敏幸議長も評価し「県原子力安全専門委員会の結論を踏まえ、知事と議会で協議し、来週中に地元の判断を伝えられるようにしたい」と話した。
原発が立地する敦賀市の河瀬一治市長は「首相自ら、原子力発電が重要な電源であることを認めた」。高浜町の野瀬豊町長は「再稼働の必要性をきちんと述べていた」とともに評価した。
再稼働が現実味を帯び始めた現状に、反対派は危機感を募らせる。八日に来県し、福井市内で会見した社民党の福島瑞穂党首は「経済、お金のために人の命を売り飛ばしている」と野田政権を批判。国民への説明を求めた西川知事の政治姿勢にも「どう喝であり、責任の押しつけだ」と注文をつけた。
原発反対県民会議の代表幹事の中嶌哲演さん(70)=小浜市=は「多くの学者が地震の危険性を指摘しているのに、わいしょう化して政治的な思惑を優先してしまった」と落胆。
再稼働を考える「ふくいにあつまろう実行委員会」の佐分利豊さん(63)=福井市=は、「炉心融解がないと確認したと言うが、専門委員会もそんな判断はしてない。国民の命と健康を守ることが最優先であるはずの、首相として失格だ」と厳しい声を上げた。
◆破砕帯の詳細調査、おおい町に申し入れ
関西電力大飯原発の敷地内を走る破砕帯が、近くの活断層と連動して動く可能性が指摘されていることについて、若狭地方の反原発団体が八日、詳細調査を実施し、その評価結果が完了するまで3、4号機の再稼働判断をしないよう、おおい町の時岡忍町長に申し入れた。
要望したのは「プルサーマルを心配するふつうの若狭の民の会」など四団体。「従来の調査は不十分だった」と指摘した上で、詳細調査実施を国や県に求めるよう要請した。
担当課が応対し「町として注視している」「専門家の調査結果を待っている」などとこれまでの考えをあらためて説明した。
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