クローズアップ2012:福井・大飯再稼働、16日にも決定(その1) 原発位置づけで難航
毎日新聞 2012年06月09日 大阪朝刊
これ以降、西川知事は閣僚との会談など公の場で、首相のリーダーシップや再稼働に向けた明確な意思表示を繰り返し求めるようになった。首相本人の覚悟を確認しない限り、県が同意しても政府にはしごを外されるという恐れをぬぐいきれなかったようだ。野田首相が再稼働に言及する機会もあったが、西川知事は、▽すべての国民に向けたメッセージであること▽原発が中期的に重要な電源だと明言すること−−などにこだわった。
再稼働反対の世論が強まるなか、関西の首長らが再稼働に慎重姿勢を示し、再稼働手続きへの関与を求めたことも県の動きを止める一因となった。「関西の『容認』ではなく、政府の意思表明を待っている」との立場を貫き、首相メッセージを引き出した。【佐藤慶】
◇事故対策、道半ば
野田佳彦首相は「東京電力福島第1原発を襲ったような地震、津波でも炉心損傷に至らない」と言い切った。しかし、政府や国会の事故調査委員会の検証作業が完了しておらず、原発事故時に構内での指揮・作業拠点となる「免震事務棟」が関西電力大飯原発で完成していないなど、事故対策は途上にある。国会事故調の黒川清委員長は「なぜ国会事故調の報告を待ってからやらないのか。理解できない」と批判した。