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寝取られSS 「人類繁殖法違反」3  (「最狂の寝取られとは?」スレより)



114 :23 ◆bxyzd8gFCE :03/10/11 17:43 ID:LU5lmX6v

(1/8)

時計の針は午後6時55分を指していた。
佐紀の脳裏に朝の会話が蘇る。


『今夜でしたっけ。 泉総理の緊急記者会見』
『そうそれ。一体何なんだろうね?』
『辞任でもするんじゃないですか』
『…私、あまり興味ありません』


全局合同生中継。
政治には全くもって興味が無かったのだが、
「異例の」という言葉の甘美な誘惑に佐紀は屈してしまった。

「成瀬さんには明日うまいこと言っておくか」

そう呟き佐紀はチューナーをTVに切り替えた。

『えー、現場の鈴宮さん、会場の様子はどうですか?』
『はい、現場鈴宮です。今はまだ…』

既に前番組として会場前の生中継が始まっていた。
国会議員全員が出席しているであろう特設会場前。
各局のレポーターが、今か今かと会見が始まるのを待ち構えていた。



115 :23 ◆bxyzd8gFCE :03/10/11 17:44 ID:LU5lmX6v

(2/9)

「ヒマだよな、こいつら…」

世の中政治家が何をしたってそう大して変わるものでもないのに。
税金を上げるときだけ一致団結する連中の話なんてさして興味も無い。
そして何より、

「どうせ知らないところで全部決まってしまうんだろ?」

そんな諦めにも似た感情が佐紀の中にあった。

『あっ、どうやら動きがあった模様です! では会場内につなぎます!』

美人で有名な鈴宮アナの動きが慌しくなった。
どうやら会見が始まるらしい。
とりあえず佐紀は用意していたコーヒーに口をつけた。


116 :23 ◆bxyzd8gFCE :03/10/11 17:46 ID:LU5lmX6v

(3/9)

会見が始まった。

壇上に、ゆっくりとした足取りで泉総理が立つ。
初老なれど、堂々とした体躯。
歴代総理の中でもかなり存在感があるほうだろう。
答弁では散々野次を飛ばすメンバーも今日はおとなしくしている。
彼らもこの異例の会見が何なのかを知りたいのだろう。

『えーー…』

独特の泉総理のイントネーション。
いつもなら、本題に入るまでが長いのだが…

『担当直入に申し上げます』

今日は違っていた。





『地球に異星人が来訪しました』


117 :23 ◆bxyzd8gFCE :03/10/11 17:48 ID:LU5lmX6v

(4/9)

ブハ
!!

思わず佐紀は飲みかけのコーヒーを吹き出してしまった。
佐紀だけではない。
恐らくこの中継を見ていたかなりの人が、こんな席ではおよそ聞くことがないであろう
この泉総理のとんでもない発言に唖然としたことだろう。

にわかにざわめき出す会場内。
だが泉総理は構わず話を進める。

『代表者の方から国民の皆さんにコメントがあります』

そう言って泉総理は後ろに下がった。


「代表者って…」

思考がまとまらない佐紀だったが、すぐに驚愕の事態に気付く。

「え、う、宇宙人!?」

異星からの来訪者。
その代表。
つまりは宇宙人。
それがもうすぐ全国のお茶の間の前に現れるのだ。



118 :23 ◆bxyzd8gFCE :03/10/11 17:50 ID:LU5lmX6v

(5/9)

「おいおいマジかよ!」

いつしか佐紀はブラウン管にかじりつきになっていた。
これがバラエティ番組なら、着ぐるみを来た芸人なんか出てくるのだろう。
だが総理に代わって壇上に現れたのは…


慎重はおよそ130cm。

血の気のない、妙に白っぽい逆三角形の顔。

その顔の半分以上を占める巨大な双眼。

それに対して申し訳程度に開いた穴のような鼻と口。
 
いわゆる矢追氏とかの特番によく出るタイプの宇宙人そのものの姿。


だがその格好は普通のスーツ姿。



―――――ご丁寧に色はグレーだったりした。


119 :23 ◆bxyzd8gFCE :03/10/11 17:51 ID:LU5lmX6v

(6/9)

パニックになるかと思われた会場内。
が、現れた異星人の何ともベタな容姿にどう対応していいかわからない様子だ。

『えー、コホン』

遂に異星人のコメントが始まった。

『私は宙域希少動物保護団体代表、名前は……地球言語では発音し難いので…
 …イチローとでもしておきましょうか』

何とも流暢な日本語。
会場がざわめき出した。
当にイチローからは表情は読み取れない。


『とにかく、まずはこちらをご覧ください』

そう言ってイチローは舞台奥に据え付けられたスクリーンを指差した。
そこに映し出された映像は、

「は、裸!?」

何とオールヌードの人間の姿。
男も女も老いも若きも、みんな裸だった。


120 :23 ◆bxyzd8gFCE :03/10/11 17:54 ID:LU5lmX6v

(7/9)

「おおおおおいおい! いいのかよ! モ、モザイクは!?」

映し出された全裸の人間達は、皆毒気のない瞳で巨大な檻の中をうろうろしていた。

ある者はうずくまって眠り、
あるも者は野菜屑の詰まった容器に顔を突っ込んでいる。
ある者は檻の中を奇声を発しながら駆けずり回り、

そしてある者は、あろうことか檻の隅でSEXにいそしんでいた…


およそ地上波では放映されることのないであろう異常な光景の数々。
会場内のざわめきの音量が跳ね上がる。
だが相変わらずイチローは無表情だった。

『ここに映っている生物は『ソブネリア』といい、
 全宇宙で僅か数兆匹しかいない特別保護指定動物です。
 あなた方地球人も生物学的分類上ではソブネリアということになります』


動物という言葉。
人間が他の生物を指すときに使う言葉。

つまり、イチローの立場ではソブネリアは同列の存在ではないのだ。


121 :23 ◆bxyzd8gFCE :03/10/11 17:55 ID:LU5lmX6v

(8/9)

『我々の任務は絶滅しかかっている動物を保護し、安定した繁殖を促すことです。
 今日からあなた方も我々の保護下に入りますのでご安心ください』

それだけ言うとイチローは舞台の袖に消えていってしまった。
そしてTVは砂嵐に変わった。

「な、何なんだ一体……」

突然の宇宙人のTV出演。

動物?
保護下?

地球はあの異星人に支配されてしまったのか?
それともこれはタチの悪い冗談か?

色んな思考が佐紀の頭を混乱させる。

が、

「くうっ……!」

耳鳴りとともに襲ってきた激しい頭痛にかき消されてしまった。

「お、はごぁっ! ああぐうううういいいいぃ!!」

万力で締めては捻り切るが如き激痛の波に蹂躙され、佐紀はのたうち回る。
それは実に数分にも及んだ。
その最中で、いつしか彼は意識を失ってしまった。



122 :23 ◆bxyzd8gFCE :03/10/11 18:11 ID:LU5lmX6v

(9/9)

会見放送終了と同時刻。
世界中の空、遥か上空に奇妙な物体が出現した。

その全長は2kmにも及び、形状は輪郭がぼやけていて掴む事は出来ない。

程なくして金色に輝くそれは、人の住まうより高みから同色の雨を降らせ始めた。

金色の雨。
それは、長さ60cm、幅40cm、厚さ3mmの奇妙な金属の板の群れ。

金属板たちは、地表に着く寸前で重力に反した動きを始め、それぞれの目的地を目指す。

そのうちの一枚は、加藤佐紀の自宅へと真っ直ぐに向かって行った。




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