大飯原発の再稼働反対を訴えデモ行進する人たち=大津市京町で
|
 |
野田佳彦首相が「夏の電力需要ピーク前に再稼働する」と表明し、福井県おおい町の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働が固まった八日、大飯原発から半径三十キロ圏内にある県内では「時期尚早だ」「経済のためには仕方ない」と賛否が分かれた。
◆電力不足対応には理解も
大津市内で八日開かれた会合。関西電力滋賀支店の担当者が、集まった企業関係者ら二百五十人に「経済活動を発展していくには当面、原発の電力は必要」と訴えた。質疑では「原発は減らしていくべきだが、毎年電力不足に悩むことになるのか。今後の見通しを示してほしい」と男性が要望した。
会見で野田首相は八月をめどに、中長期的に原発依存を減らしていく工程を示すことも表明。一方「再稼働は夏場限定ではない」と強調した。
これに対し長浜市余呉町中之郷、会社員水上一美さん(62)は「暫定的な稼働は仕方ないと思っていたが、いつまでも動かすなら、早期に規制組織をつくり、安全性をあらためて判断してほしい」とくぎを刺す。
夏の電力不足を前に、再稼働に理解を示す意見も。甲賀市信楽町の信楽焼製造会社社長は「電力不足で計画停電が起き、製造ラインが止まれば、倒産だ。五十人の従業員の生活を守るためには、再稼働して電力を安定供給してほしい」と訴える。長浜市西浅井町大浦、絵画造形作家近持真奈美さん(48)は「国民生活に役立つなら、稼働して電力を得ないともったいない気もする。安全は絶対条件」と話す。
大飯原発に県内で最も近い高島市の西川喜代治市長は「安全の中長期対策が先送りされたままの再稼働には強い不安を感じる」と強調。長浜市の藤井勇治市長は「いまだ原子力災害への不安は到底ぬぐいされていない」として、再稼働判断を時期尚早と受け止める談話を発表した。大津市の越直美市長も「夏場に限らず、永続的な再稼働を求めていくことは理解できない」との談話をまとめた。
この日は、再稼働に反対する市民百五十人が県庁周辺でデモし「原発から県民を守ろう」「嘉田由紀子知事は再稼働容認を撤回すべきだ」と訴えた。
今月六日の山田啓二京都府知事との政府に対する原発政策の再提言で再稼働時期を夏場に限ることを求めていた嘉田由紀子知事は八日、東京都内で取材に応じ「原子力規制庁ができていないだけではなく、大飯原発3、4号機はまだ応急処置しかやれていない」と再稼働にかじを切った野田首相を批判した。
その上で「広域連合のメンバーや京都府知事と相談して、何らかの意思表明はしたいと思う」と述べた。
野田佳彦首相が福井県の現地に設置する「特別な監視体制」に滋賀県と京都府の参加の是非に言及しなかったことには「言及してほしかった」と求めた。
この記事を印刷する