関東の降灰は最大10センチ超に6月8日 18時42分
富士山で江戸時代の噴火と同じタイプの大規模な噴火が起きた場合、火山灰の量はふもとの地域で厚さ1メートルを超え、関東でも最大10センチを超えるおそれがあるという専門家の分析結果がまとまりました。
気象庁気象研究所の新堀敏基主任研究官は、富士山で300年余り前の1707年に起きた「宝永噴火」と同じタイプの大噴火が発生した場合に火山灰がどのように広がるかを推計しました。
噴火は、当時と同じように半月余り続いたと仮定し、おととしと去年の同じ時期の気象条件を当てはめて計算しました。
いずれのケースでも静岡県御殿場市などふもとの地域では、厚さ1メートルを超える火山灰が積もり、関東でも神奈川県西部などの多いところでは10センチ以上に達することが分かりました。
特に、低気圧の影響で一時、南寄りの風が吹いたおととしの気象条件を当てはめた推計では、東京の都心部でも5センチから7センチ余りの灰が積もるという結果になりました。
新堀主任研究官によりますと、火山灰が10センチ積もると1平方メートル当たりの重さはおよそ100キロとなり、倒壊する木造住宅が出るおそれがあるということです。
また、数センチ程度の火山灰でも車のスリップ事故が多発したり、航空機や電車が止まったりするおそれがあるほか、上下水道や電気などのライフラインにも影響が出る可能性があるということです。
さらに、数ミリ程度の火山灰でも呼吸器などの健康被害や農作物の被害が出たり、それにコンピューターなどに障害が出たりするおそれがあるということです。
新堀主任研究官は、「噴火の規模や気象条件によってばらつきがあるものの、富士山が噴火した場合は、広い範囲に大きな影響を及ぼすおそれがある」と話しています。
過去の噴火と最近の活動
富士山は山頂や山ろくに数多くの火口があり、過去にさまざまなタイプの噴火が発生してきました。
このうち、およそ1150年前の平安時代の大噴火では北西側の山腹から大量の溶岩が流れ出し、ふもとにあった湖が分断されて現在の富士五湖が出来ました。
また、300年余り前の1707年に起きた「宝永噴火」では、半月余りにわたって南側の山腹から大量の火山灰を噴き出し、ふもとでは火山灰の重みで家が倒壊したり、農地が埋まったりする被害が出ました。
当時、火山灰は100キロ余り東の江戸の町にまで到達したと記録されています。
富士山では江戸時代の噴火を最後にこの300年余り、噴火が起きていませんが、平成12年から翌年にかけて、深さ15キロ付近の地下でマグマの活動に関連しているとみられるごく小さな地震が一時的に急増しました。
気象庁によりますと、こうした地震は最近も年間に50回以上観測され、地下深くではマグマの活動が続いていると見られています。
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