1.ビジネス文章の基本
ビジネス文書とは
ビジネスの世界では電話・インターネット・FAX・手紙など、さまざまなコミュニケーション手段が用いられていますが、その基本となるのは文書です。
ビジネス文書は、顧客や取引先などに発信する「社外文書」と、他部署や上司などに宛てる「社内文書」に大別できます。
どちらにとっても重要なのは「意図を明確に伝える」ということです
したがって、そこに書かれる文章は正確かつ簡潔で、誰が読んでも十分理解できるものである必要があります
複雑な言い回しや難解な表現は避け、シンプルである
内容に誤りがなく、正確である
原則として用件は一つ
まず結論から述べる
読み手との関係を念頭に、失礼のない言葉を使う
ビジネス文書に欠かせない5W2H
| WHEN いつ |
発信日、会議・納品・締め切りなどの日時、開催日時、 |
| WHERE 曜日など |
どこで 所在地、開催場所、書類の提出先など 必要であれば地図、交通手段や駐車場の有無など |
| WHO 誰が |
発信者・受信者の名前や立場、用件に関わる人の名前や立場など |
| WHY なぜ |
文書作成の目的、理由、根拠など発信者の意図をわかりやすく述べる |
| WHAT 何を |
文書の趣旨、件名なるべく具体的にわかりやすく簡潔に |
| HOW どのように |
文書の主要目的を達成する手段、方法、プロセスなど未来にむけての施策 |
| HOW MUCH(MANY/LONG) どれくらい |
価格、経費、個数、分量、日数、時間など |
文章を上達させるために
いろいろな文を読む
ビジネス文書に限らず、新聞・雑誌・他社のDM等、なるべく多くの文に目を通しましょう。参考になる言い回しや表現をみつけたら、保存しておくとよいでしょう。
要点をまとめる練習をする
言葉を選ぶ力や、必要な要素を見極める力を養うことができます。 例えば、5行の段落から3行にするなど、練習材料の文は身近にあるもので、いつでもどこでもできます。
第三者に読んでもらう
いくら考え尽くしても、個人の見解は様々です。 他者の目を活用し、読みやすさや理解しやすさなど、率直な意見をもらいましょう。
国語辞典や類語辞典を使う
語句の意味を確認したり、表現を工夫したり、辞典のお世話になりましょう。 面倒がらず、辞典を使うクセをつければ、誤った表現を防ぐことができ、語彙力も増やすことができます。
相手の視点で考える
文章は完璧でも、ビジネスの現場ではもう一歩進んで考えることが求められます。 「商品Aの購入を検討している顧客に、比較材料として商品Bのカタログはどうか?」 「来社の予定がある取引先に地図は必要ないか?」 など、常に相手の状況を想像して、機転の利いた対応を心掛けましょう。
手段の使い分けをする
ビジネスにおける様々な場面では、事柄の重要性、タイミングや相手との関係を念頭に、手段の使い分けや組み合わせを検討することも大事です。
基本の文章テクニック
①→句読点
句点は文の終わりに打ちます。
当たり前のことですが、意外に忘れることも多いので注意しましょう。
句点は「 」でくくった文には打ちません。
× 「昨日は一日中雨が降りましたね」。
× 「昨日は一日中雨が降りましたね。」
○ 「昨日は一日中雨が降りましたね」
「 」の後に「 」の文が続くときは、その間の句点も不要です。
× 「昨日は一日中雨が降りましたね」。「洗濯物が乾かないので困ります」
○ 「昨日は一日中雨が降りましたね」「洗濯物が乾かないので困ります」
読点は文を読みやすくするものですが、多く打ちすぎると逆効果です。 原則として、以下の場合に用います。
語句を対等に並べる場合
重文の境目
倒置文
ある語を強調したいとき
感動詞の後
挿入句の前または後
また、読点を打つことで、誤解を防ぐ役割もあります。
× 彼女は嬉しそうに海で泳いでいる彼を見ていた。
○ 彼女は、嬉しそうに海で泳いでいる彼を見ていた。
○ 彼女は嬉しそうに、海で泳いでいる彼を見ていた。
②→主語と述語はできるだけ近くに置く
主語と述語の間にたくさんの修飾語などが入ると、意味のわかりにくい文章になってしまいます。
特にビジネス文書では、結論を先に書くことが大切です。
最後まで読まなければ、何が言いたいのかわからない文章は、それだけで読む気が失せてしまいます。
× A社から取引開始の申し出があり、業歴が3年と短いものの、コンスタントに業績を伸ばしており、提案書説明も綿密になされていることから、お受けしたいと思います。
○ A社から取引開始の申し出があり、お受けしたいと思います。業歴が3年と短いものの、コンスタントに業績を伸ばしており、提案書説明も綿密になされているからです。
③→「表題」は内容や結論がわかるように
ビジネスシーンでは、時間の浪費を避けるために、簡潔で明瞭な文章が求められます。
「表題」だけで内容や結論がわかるようにしましょう。
× 「A社からの取引開始の申し出の件」
○ 「A社との取引開始締結の件」
④→「思う」「思います」を多用しない
この言葉を多く用いると、自信がなさそうで弱々しい印象を与えてしまいます。
最後を曖昧な言葉で結んでしまうと、それまでの説明が台無しになってしまう恐れがあります。
自信をもって断定的な表現を使うことによって、文章はぐっと引き締まります。
⑤→漢字と仮名の使い分け
間違いではないのですが、何が何でも漢字で表記するよりも、さらりと平仮名で書く方が見た目もよい場合があります。
バランスを考えて、無理に難しい漢字を用いないようにしましょう。
子供達 → 子供たち
午後十時迄 → 午後十時まで
三月三日頃 → 三月三日ごろ
⑥→「の」を3回以上続けない
「の」を何度も使うと、読みにくく、間延びした文になってしまいます。
× 今年のインフルエンザの流行の原因は
○ 今年のインフルエンザ流行の原因は
⑦→「より」と「から」を混同しない
「より」は比較を表す場合に使い、「から」は起点を表す場合に使います。
× A社より、納品数変更の依頼がありました。
○ A社から、納品数変更の依頼がありました。
⑧→同じ意味の言葉を重ねて使わない
<間違いやすい表現>
| × | ○ |
| 約100人ほど | 約100人 / 100人ほど |
| 単に〜だけ | 単に / 〜だけ |
| 最もベストな | ベストな |
| 〜にしかすぎない | 〜にすぎない |
| 大別すると2つに分けられる | 大別すると2つになる |
| あらかじめ予約する | 予約する |
| 途中で中断する | 中断する |
| 過大評価しすぎる | 過大評価する |
⑨→「株式会社」の表記について
「株式会社」を「(株)」と書くと失礼になります。「(株)」は略号です。
相手方へ送る文章などに使わないように注意しましょう。
⑩→推敲は時間をあけて、第三者にもみてもらいましょう
推敲は、声に出して読み上げると効果的です。
書いた直後は気付きにくいものなので、時間をあけて行いましょう。
また身近にいる誰かにみてもらうのもよいでしょう。
<推敲のポイント>
主題はきちんと表現できているか
段落の区分は適当か
主語と述語、修飾語と被修飾語の関係は正しいか
各文の接続関係はおかしくないか
送り仮名や仮名遣いの間違い、誤字、脱字はないか
無駄な文や語句はないか
尊敬語、謙譲語は正しく用いられているか