特集ワイド:いかがなものか 「再稼働」判断
毎日新聞 2012年06月08日 東京夕刊
いつまでに脱原発を図るかのロードマップの提示も重要です。政府が原子力政策の方向性を定めもせず、その場しのぎで動かすのはおかしい。また野田佳彦首相は「(再稼働は)私の責任で判断する」と発言していますが、「責任」の中身が分からなかった。再稼働は、全国民のコンセンサスが必要な課題となっているのです。
もう一度、原発事故が起きたら、日本は本当にだめになる。そうでなくても原発を動かせば使用済み核燃料がどんどんたまっていきますが、被災地のがれきの受け入れ先さえろくにないのだから、使用済み核燃料の埋設に同意する地域があるのでしょうか。その長期にわたる冷却や放射性廃棄物の処分など、原発は発電と別にいろいろとコストもかさみます。
イデオロギーによる賛否ではない、フクシマ後の今、原発を動かし続けようとすることに無理があるのです。
政府が原発を止められない理由として、停止した途端に、資産だった原発が不良債権になって全国の電力会社が債務超過に陥り、経済が混乱するからだという話があります。また、原発輸出関連企業は米企業と合弁するなど関係を深めていて、日米関係から急な方針転換は難しいという人もいます。
包み隠さず全てを国民に明らかにし、原発稼働に対する賛否を次の選挙の争点にしたらいい。政治に求められているのは、過去の誤った国策と決別する覚悟です。