特集ワイド:いかがなものか 「再稼働」判断
毎日新聞 2012年06月08日 東京夕刊
「原発ゼロ」は、やはりつかの間の夢となるのか。野田佳彦首相の最終判断時期が迫る関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働。政治プロセス、安全性、橋下徹・大阪市長らの動き……あらゆる面で疑問は残ったままだ。3人に聞いた。【戸田栄、藤田祐子】
◇不真面目な見切り発車−−元原子炉格納容器設計技術者・後藤政志さん
小手先の対策をいくつか実施し、ストレステストの1次評価に合格しただけで「安全性は確保したから大飯原発を再稼働していい」とは、不真面目な考えというほかない。福島原発事故で最悪のシナリオをたどれば、首都圏が壊滅状態に陥った可能性があります。であれば、電気不足と引き換えに見切り発車するようなことではないでしょう。
発生する地震や津波の想定を大きくし、原子力プラントの弱点を補強する形の対策は進められました。しかし、プラントそのものは元のままですから、最初の設計値から全体の強度を引き上げるには限界があります。まず、そこに大きな問題がある。地震や津波、事故進行状況など想定の仕方も通りいっぺんで、複合災害となろう事態への対応策として十分ではありません。