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尖閣諸島沖で2010年9月に起きた中国漁船衝突事件で、那覇地裁は7日、石垣海上保安部の巡視船に衝突したとして公務執行妨害などの罪で強制起訴された後、起訴状が届かず公訴棄却決定をした中国人船長について「再起訴しても起訴状の送達が見込めないのは明らかだ」として、検察官役の指定弁護士2人の指定を取り消した。指定取り消しで、事件は事実上終結した形となった。
鈴木秀行裁判官は決定要旨で、送達が見込めない理由として、中国の司法部が「尖閣諸島は自国の領土。日本の司法手続きを受け入れることはできない」として、日本側からの送達の協力を拒否していると指摘。現状では同弁護士の職務遂行が期待できないため、裁判所が指定弁護士の指定を取り消す際の「特別な事情」が認められるとした。
取り消しを受けて、赤嶺真也、大城真也両指定弁護士が同日、県庁で記者会見。鈴木裁判官と事前に協議を持ち「現状では送達が見込めないという点は一致した」と述べ、同日午前に「職務を行えない」として取り消しを求める上申書を同地裁に提出したことを明らかにした。
指定弁護士の指定を取り消しても事件自体は残り、法律上は裁判所が新たに指定弁護士を指定しなければならない。両弁護士は「こういう結果になったのは仕方がない」とした上で、状況が変われば再び起訴するべきだとの認識を示した。
石垣市長が遺憾「今後は毅然と」
【石垣】尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件が事実上の幕切れを迎えたことに、同諸島を行政区に持つ石垣市の中山義隆市長は7日、「最終的に中国人船長を日本の法律で裁けなかったことについて、非常に残念に思う」と遺憾の意を示した。「今回のことを教訓にして、今後このようなことが起こった場合は、(地検は)毅然(きぜん)とした態度で臨んでほしい」と要望した。
八重山漁協の上原亀一組合長は「公訴棄却を含め分かりきったことで、しょうがないんじゃないか」と淡々と受け止めた。一方で、中山市長と同じく今後は厳然と対処するよう求めた。
外交の知恵ない
元外務省国際情報局長の孫崎享氏の話 尖閣問題を考えるときは、係争地であるという前提から出発しなければならない。日本にも中国にも領有の論理はある。「粛々と法手続きをする」というと、もっともらしく聞こえるが、係争地で国内法を持ち出して公権力を行使するのは非常に危険。相手を刺激しないのが世界的な外交の知恵だ。
中国の船長逮捕への対抗措置は抑制的だった。日本側も本来はこのような大ごとにせず、船長を静かに帰すべきだった。しかし石原慎太郎都知事のように領土問題を利用する政治家がいて、理性的に対応すべき外務省も飲み込まれてしまっているのが現状だ。