<2006年11月=東スポ携帯サイト「映画マニア堂」より>
前回に続いて大木金太郎さんのお話。
今から7~8年前だろうか。当時、メキシコ産のサントムービー(エル・サント主演の映画)と、星の数ほど存在すると言われるブルース・リーの偽者が演じる怪しいカンフー映画のビデオ収集にハマっていた私は、新宿の輸入ビデオ店のアジア物コーナーで、珍しいビデオを発見した。
パッケージにはインターナショナルヘビー級のチャンピオンベルトを腰に巻いた大木さんの写真でタイトルは「鉄頭血戦」。1993年製の商品だ。
興味を覚えたので即購入。たしか2~3000円だった。中身は何とも珍しいモノで日本プロレスの山陰、中国地方巡業をフィルムで収めたモノだった。アントニオ猪木はすでに離脱済み、ジャイアント馬場はまだ残っているという微妙な時期から推測して昭和47年の5~6月頃の撮影だろう。
ビデオは鳥取砂丘(たぶん)を日プロの青ジャージをまとい、レスリングシューズのままランニングする大木さん姿からスタート。だが坂道でコケて転がり出してしまい、そのままゴマかして見事な受け身を披露。そのまま海岸で頭突きによるレンガ割り特訓を敢行する。プロレスというフィルターを通さずに見ると、単なる危ない人だ…。
場面はその後、体育館へと移り、試合前の合同練習。トップ選手として若手選手に稽古をつける大木さんの姿が凛々しい。若手時代の佐藤昭雄、タイガー戸口、木村健悟、ケンドー・ナガサキといった面々の若々しい姿が拝める。
試合はボビー・ダンカンとの一騎打ち(5月27日、福山)、吉村道明と組んでのジョニー・バレンタイン&キング・クロー戦(5月29日、米子)、馬場(緑タイツだ!)と組んでボボ・ブラジル&アール・メイナード戦(6月2日、岡山)、そしてミスター・レスリング(中身はディム・ウッズではなく初代のゴードン・ネルソン)を挑戦者に迎えてのアジア・ヘビー級王座防衛戦(5月31日、福井)。血だるまとなって3本勝負を制し、見事防衛を果たす大木さんの姿で映像は終わっている。
他にも練習の途中なのか? 米子市民体育館の出入り口から、大木さんがふと姿を現した瞬間に、キャーっと一斉にダッシュしてくる十数人の女子学生に取り囲まれ、たちまちサイン攻め、握手攻めにされている不思議なシーンまで収録されている。
何の根拠も証拠もないけれど断言しよう。このシーンはヤラセだ!