'12/6/8
アビ飛来数激減 原因は…
広島県鳥の渡り鳥アビの飛来数が著しく低迷している。海域が国の天然記念物に指定されている呉市豊浜町周辺のアビ群遊海面で、今季確認した最多数は30羽にとどまり、記録を比較できる1989年以降で最低だった。特別保護区へ乗り入れるレジャー船の増加などが生息を脅かしているとみられる。
県の群遊海面での調査では、アビを今季は1月14日に初確認。3月25日に最多の30羽を数えた。5月初旬までに、シベリアなどの繁殖地に飛び立った。
群遊海面ではかつて、冬場に100羽を超すアビが飛来。一時は900羽に上ったとの記録もある。
89年から毎年春に実施している県の調査では、大半の年は100〜150羽を確認。しかし、2003年以降は08年を除き2桁台にとどまる。一方、山口県の周防灘では近年、千羽を超すアビが見られ、広島県から飛来地を替えた可能性があるという。
調査を請け負う生物群集研究所(東広島市)の藤井格(ただし)所長(58)は「羽根が生え替わる越冬期は飛べなくなる。安全性が高く、十分に餌が捕れることが生息に欠かせない」と指摘する。
広島県内では90年代まで続いた海砂採取の影響で、餌となる魚のイカナゴが激減した。08年に豊島大橋が開通し、車が海上を通過するようになった。
【写真説明】呉市豊浜町沖を泳ぐ広島県の県鳥アビ