パネッタ長官は補修のため同港に停泊中の米海軍補給艦リチャード・E・バードを訪問した。もちろん同艦のカムラン寄港は偶然ではない。米軍艦船の同湾利用をベトナムが初めて認めたのは昨年だ。今回の訪問が中国に対するメッセージであることは疑いがない。
米中関係は成熟した?
「グーグル事件」の後には、米中の軍事交流が一時凍結された〔AFPBB News〕
最近、米国では「米中関係が成熟した」との見方が増えているそうだ。言われてみれば、そうかもしれない。
2010年初頭の「グーグル事件」あたりから米中関係はギクシャクし始め、その後は両国間軍事交流が一時凍結された。確かに、あの頃米中関係は最悪だった。
しかし、2012年に入り、状況は変わりつつある。重慶の公安局長が米総領事館に逃げ込もうと、国家安全部内のCIAスパイが逮捕されようと、さらには、盲目の人権活動家が米大使館に逃げ込もうと、米中はそれぞれ適切に対応し、不必要な危機を回避している。
他方、両国関係が「成熟」しつつあることは、必ずしも両国関係が「改善」しつつあることを意味しない。それどころか、海洋をめぐる両国の思惑の相違は今や決定的となりつつある。中国式に言えば、両国関係の「矛盾」は一層拡大しつつあるということだろう。
両国の利益はあまりに基本的なところで対立している。このことが明らかになった以上、米中両国は相手国との関係をもはや「いい加減」には処理できなくなった。一つ間違えば、「不必要な摩擦」や「誤算による衝突」に発展しかねないことを両国は学んだはずだ。
確かに米中関係は「成熟」した。しかし、このことは逆に、一度米中が「適切な処理」に失敗すれば、双方が望まない、より解決の困難な問題が生ずることを、双方、特に米側が正確に理解したことを意味するのではないか。
どうやら、成熟した米中関係は、解決がより困難な領域に入り込みつつあるようだ。
子供同士の痴話喧嘩なら、何とか解決の余地もあろう。しかし、成熟した大人同士の大喧嘩は、一度始まったら誰も止められなくなる。米中関係の「成熟化」とは以上のような意味で理解すべきである。
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