「ised@glocom倫理研第7回、共同討議」より


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第7回目次
http://ised.glocom.jp/ised/20051210

小倉秀夫弁護士の講演があったということで、多分これまで以上にいや〜な注目を集めているんじゃないかと思う ised@glocom倫理研第7回。共同討議からいくつか気になったところを。

高木:

 嫌韓のことはあまり詳しくはないのですが、どんどん広がっていると思います。ただこれは必ずしも本気で思っている人たちばかりではなくて、あるときは嫌韓的な発言を2ちゃんねるで行い、mixiでは全然そういうことには興味がないかのように振舞う人がいるということです。こうなったひとつの背景には、日本社会では「マスメディアが情報を強くコントロールしている」という不信感が非常に強いことがあると思います。だからあれだけ嫌韓が盛り上がり、「自分はだまされていたのではないか」と興味を持つ人が増えていく。そのようなマスコミ不信現象に過ぎないのではないかという気がします。国やマスコミが情報を隠すことなく、フラットにあらゆる意見を平等に出していれば、嫌韓のような現象は起きなかったのではないでしょうか。

東:

 それは分かります。朝日・岩波的な価値観は戦後日本社会では、あまりにも長く支配的だった。それに対する解毒剤として、2ちゃんねるの果たした役割は大きいと思う。それはまったく否定するつもりはありません。しかし、いまの嫌韓には、最初にあったそのようなチェック機能は少なくなっているんじゃないでしょうか。途中からは単にカスケード的に大きくなっているだけではないか。
(後略)
(http://ised.glocom.jp/ised/12101210)

なんというか耳にタコができるほど聞かされたはなしなのだが、「朝日・岩波的な価値観」が戦後日本の論壇やアカデミズムで長らく支配的だった、というのはとりあえず是認してもよい。しかしながら、それは自民党的な価値観が戦後日本のリアル・ポリティックスでは長らく(というか変質しつつあるとはいえ今でも)支配的である、ということとセットで評価されねばならないのではないか? 論壇やアカデミズムだけでなく「日本社会」で朝日・岩波的価値観が支配的だったとするのなら、なんで本格的な社会党政権は一度も成立しなかったわけ? 先日とりあげた竹内洋の『丸山眞男の時代』でも使われていたブルデューの枠組みによれば、政治的な象徴資本と知的な象徴資本がトレードオフの関係になるというのは別に日本に固有のことではない。朝日・岩波的な価値観はリアル・ポリティックスという「界」では支配的なもの足りえなかったがゆえに、論壇やアカデミズムでは支配的なもの足りえたのである。
だからまあ、戦後の右派知識人がある種のルサンチマンを抱く、というのはわからないでもない(その分政府や企業からお座敷がかかる機会も多かったんじゃないの? とも思うが)。しかし論壇やアカデミズムといった「界」の住人でない人間が朝日・岩波的なものへの「解毒剤」を必要とした、なんてのはとてもじゃないが納得できないんである。

白田:

 そしてあいかわらず既存のメディアには、朝日・岩波的な議論のほうがどちらかというとマジョリティであるという雰囲気が残っている。この状況は変わっていくと思いますが、ネット言論がそれに対するはけ口となってきました。表の言論は朝日・岩波的だけれども、ネット言論は右的、もしくはアングラ的な議論が主流を占めてきた。表とネットの言論の均衡は、それなりに成立していたと思うのですが、おそらくテクノロジーの進展はネットの言論をエンパワーしている。既存のメディアは徐々に死につつある一方、ネット言論は、新しい技術革新や拡散によってどんどんパワーを得ている。その結果右翼的な言論が強くなってしまった。これがカスケードでしかないということは、国内の人であれば「空気読め」というリテラシー教育を受けているからよく分かる。しかし外国の人には、本当に右傾化しているように見えてしまう。もっと恐ろしいのは、ネットが既存のメディアを覆い尽くしたときに、本当にネット側のカスケード化した言論が主流になってしまうかもしれないということです。小倉さんの主張というのは、「一次資料を見ながら議論しなさい」というリテラシー教育をいまさらやっても間に合わないというものでした。60年以上に渡って日本は空気を読む教育をしてきたので、これはもう間に合わないわけです。

 となると、最終的にはこれしかないと思います。すごくつまらない結論ですよ。「日本はこういう状況です」と世界に向けて理解してもらうしかないのではないか(笑)。

東:

 つまり、日本人はお互い空気を読んでいるだけなんだから、その内容は一切気にするなと発信する(笑)。ひどいなあ。
http://ised.glocom.jp/ised/12111210

いやほんと、ひどいはなしだ。また、白田氏自身が「本当にネット側のカスケード化した言論が主流になってしまうかもしれない」としている以上、「日本はこういう状況です」と理解してもらうだけじゃ対策足りえないし。

関連して「モジモジ君の日記。みたいな。」より、「あなたがしていたのは議論「以上の」ことでしょうに」とその前後のエントリ。「うぉち」という態度の問題性を想起させられる。

Posted: 木 - 3 月 30, 2006 at 07:53 午後          

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