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【社会】

防災重点区域 保安院長 先送り指示

2012年6月5日 13時53分

 経済産業省原子力安全・保安院の広瀬研吉院長(当時)が二〇〇六年五月の昼食会で、原発事故に備えた防災重点区域の拡大を検討していた原子力安全委員会の委員に「寝た子を起こすな」などと圧力をかけた問題で、広瀬氏が直前の院内の幹部協議で「少なくとも十年間は現行の体制で動かすべきだ」と、先送りを指示していた。

 本紙の情報公開請求で、保安院が五日に開示した内部資料で分かった。

 内部資料によると、院内協議には広瀬氏をはじめ、当時次長の寺坂信昭前院長や幹部ら八人が参加。直後に開かれる安全委との昼食会で、防災重点区域の拡大を含む防災指針の見直しの話をすることから、協議の現状について担当者が事前に院長に説明した。

 この席で、幹部は国際原子力機関(IAEA)による国際基準の見直し状況などを報告したが、「(国際基準は)必ずしも順守しないといけないものではない」などと見直しに消極的な意見が出た。

 これを受け広瀬氏は「防災指針は社会性が強く、各国の要因を考慮すべきだ」と同意し、防災重点区域などは現行制度のままでいく方針を伝えた。また「安全委は自治体との関係は得意としておらずそもそも助言機関である」とも発言し、保安院が見直し議論を主導するよう幹部に指示した。

 この会合後、広瀬氏らは安全委の委員との昼食会に出席し、一九九九年の茨城県東海村のJCO臨界事故後、自治体の防災体制が整備されてきたことを挙げ、「国民が落ち着いている時になぜ寝た子を起こすのか」と直接圧力をかけたことが分かっている。

 その後、安全委側は見直し中止の圧力に抵抗したが、保安院側は現行体制による自治体の防災訓練の一覧表なども送りつけ、見直し中止を何度も要求。安全委は断念に追い込まれた。

 広瀬氏は三月二十八日に開かれた国会の東京電力福島第一原発事故調査委員会で、今回公開された文書の写しを突きつけられたが、「記憶がない」と関与を否定していた。

 広瀬氏は本紙の取材に「国会事故調でお話しした通り。現行の防災体制で十年間はいくべきだと発言したことも覚えていない」と話した。

(東京新聞)

 

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