日本経済の幻想と真実

「人からコンクリートへ」先祖返りする自民党

八方美人の政治に未来はない

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政治にも「選択と集中」が必要だ

 自民党が野党に転落して2年半。万年与党にあぐらをかいて業界団体と癒着していた傲慢さはなくなった(というか癒着できなくなった)が、かつて自民党に期待されていた「自由経済を守る」という使命が必要なくなり、何をしていいのかが分からなくなった。そこで自分探しの結果、出てきたのが「右シフト」と「公共事業」だ。

 彼らが提案した憲法改正案も、天皇を「元首」にして国旗や国歌を定め、自衛隊を「国防軍」と改称するなど、大した意味のない改正に力点が置かれる一方、ねじれ国会の原因になっている参議院の改革にはまったくふれていない。参議院自民党が反対したからだという。

 昔ながらの自民党の体質は変わらない。利害の対立する問題はすべて先送りし、国粋主義的なスローガンで目先を変えようということだろう。

 公共事業も同じだ。規制改革については関係業界につながる族議員が拒否権を行使するため、誰も反対しないバラマキしか党として打ち出せる政策がないのだ。

 こうした自民党の体質は、高度成長に適応したものだ。農産物自由化の「つかみ金」に見られるように、利害の対立する問題については金で解決するのが彼らの常套手段だった。田中角栄以来の「国土の均衡ある発展」も、地方に税金をばらまいて貧富の格差を縮小する知恵だった。いま問題になっているバラマキ福祉も、実は田中の始めたものだ。

 しかしこのように利害対立を金で解決する手法は、1990年代以降、財源が枯渇すると困難になった。それでも従来の「八方美人」路線を続けたため、政府債務が膨張したのである。民主党はそれを変えるはずだったのに、バラマキ公共事業をバラマキ福祉に変えただけで、政府債務はさらに膨張した。

 天文学的な政府債務を抱えた日本で、与野党ともに財政を膨張させる政策を競うのは常軌を逸している。自民党にとっても、バラマキで土建業者や農家などの票を取ることはできても、都市の無党派層は離れるだろう。国粋主義的なスローガンで高齢者の票は取れるだろうが、それは先細りだ。

 この2年半で民主党は政権担当能力がないことを露呈したが、自民党も自浄能力がないことを露呈してしまった。これはイデオロギー以前の政治システムに問題がある。政府がすべての国民の問題を税金で解決するキャッチオール型政府モデルに限界が来ており、企業と同じように「選択と集中」が必要なのだ。それに気づかない限り、自民党も日本経済も衰退を続けるだろう。

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