日本経済の幻想と真実

「人からコンクリートへ」先祖返りする自民党

八方美人の政治に未来はない

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 都市住民の支持を失った自民党にとって、最後の命綱は農民票と土建票である。特に土建業界は政治との関係が強く事業費の規模が大きいので、多額の政治献金を集めやすい。これは無党派層の支持はあきらめ、古い自民党に戻ってコアな支持層を固めようということだろう。

200兆円の国債発行で財政が破綻する

 この「200兆円バラマキ」の教祖が、京大の藤井聡教授である──というと、マクロ経済学者が景気対策を提唱していると思われるかもしれないが、彼は工学部の教授で経済学は素人である。ところが、彼が国会に提出した資料では、「デフレ」が諸悪の根源だという珍説を展開している。

 これはよくある勘違いである。デフレで名目賃金が下がると同時に物価も下がるので、実質所得(名目賃金+デフレ率)はあまり変わらない。事実、2000年代に入ってから名目賃金は11%下がっているが、実質賃金はほぼ同じだ。

 したがってこの錯覚にもとづいて展開される藤井氏の壮大な「デフレ脱却策」なるものは、経済的にはすべてナンセンスである。問題はデフレでなく不況なのだ。

 藤井氏の提唱するバラマキ公共事業は、無意味であるばかりではない。政府債務が1000兆円以上も積み上がった日本で、さらに200兆円の国債を発行したら、銀行は消化できないだろう。したがって日銀が買わざるをえない。これは藤井氏も認めているが、それによってインフレが起こることは「望ましい」という。デフレよりインフレのほうがいいからだそうだ。

 もちろん1~2%のインフレなら、実質賃金が下がるので雇用調整がしやすいというメリットはあるが、国債が未達になって財政が破綻したとき、マイルドなインフレで収まる保証はどこにもない。こういう「財政インフレ」は歴史的に見ても、物価が数倍から数百倍のハイパーインフレになるのが普通だ。そうならないことを藤井氏が証明しない限り、こんな危険な政策はとりえない。

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