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2012年 シンジ誕生日記念LAS短編 最高のプレゼント? + おまけ超短編 アイアイ セット
「シンジ、誕生日プレゼントは何が欲しい?」

夕食の後、僕はアスカに難題を突き付けられて悩んでいた。
考え始めてからすでに3時間は過ぎているのに、アスカはじっくりと僕の答えを待っていてくれている。
その気持ちだけで僕は満足してしまった。

「別に、僕はアスカが居てくれるだけで嬉しいからさ」
「それはアタシも同じよ、だけどアタシはシンジをもっと喜ばせてあげたいの、だから考えて、ね?」

「ね?」の部分で上目づかいで僕を見つめるアスカはとても可愛かった。
アスカのこんな表情を見れる幸せな男性は地球上で僕だけだろうと思うと、また嬉しさがこみ上げて来る。
使徒との戦いが終わってからも半年の間、アスカは行方不明とされていた僕の事を待ち続けていてくれたんだ。
小さい頃に母さんを失い父さんに捨てられて、そして新しくできたミサトさんと言う姉さんも死んでしまったのは悲しい事だけど、今はこうしてアスカが側に居てくれるなんて夢みたいだ。
たまにはアスカとケンカしたりする事もあるけど、毎日が楽しくてこれ以上欲しい物なんてないと僕は胸を張って言える。

「そう、だったらアタシの方で考えてみるわ。最高のプレゼントを用意するから、覚悟しておきなさい!」

アスカはそう宣言して自分の部屋へと入っていってしまった。
その気持ちだけで十分嬉しい、だから無理しないで欲しいな。
でもアスカも楽しんでいるみたいだし、大丈夫かな?
アスカは僕にどんなプレゼントをくれるんだろうか。
僕も自分の部屋に戻って眠ろうとしたけど、なかなか寝付けない。
こうして待っている時が一番楽しいのかもしれないと、僕は思った。



――出会った時から、僕はアスカに憧れを抱いていた。
だってアスカは僕にない物を持っているように感じたから。
自信のない僕にとって、アスカは高嶺の花だと思い込んでいたんだ。
そしてエヴァのシンクロ率が高くなり、引け目を感じなくなった僕はアスカとの距離が近くなったと舞い上がっていたけど、逆にそれがアスカが僕を遠ざける原因となってしまった。
アスカから拒絶に近い怒りをぶつけられても、僕は気が付かずに機嫌が悪いだけなのかと軽く考えてしまっていた。
そうしている間にアスカは家出してしまったけど、僕は追いかける事が出来なかった。
アスカは本気で僕を嫌っているのかもしれないと思うと、はっきり解ってしまうのが怖かったんだ。
それでも誕生日プレゼントを贈って仲直りしようと決意した僕は、雑誌を買い集めてプレゼントを考えた。
もしかしてまたアスカの笑顔が見れるかもしれないと思ったら、楽しいものだった。
だけど僕が勇気を出すのは遅すぎた。
さらに悪い事に、僕はエヴァに乗ったアスカを助けるチャンスを見過ごしてしまった。
これではアスカに嫌われてしまっても仕方が無いと僕は思った。
あの紅い空の広がる世界で、アスカが死んでしまったものだと思っていた僕の心は絶望の淵に沈み、こちらの世界に帰るのを拒み続けた。
他の人達は僕より前に群体の人間として生きる道を選択して紅い海から帰って行ったみたいだ。
しばらくしてアスカが生きている事を知ったけれど、僕はなかなか帰る決意が出来なかった。
でもやっぱりどうしてもアスカともう一度会いたいと思ったんだ。
紅い世界から帰った僕はコンフォート17へ行って僕達の住んでいた家のインターフォンを押す。
アスカを怒らせてしまうかもしれないけど、僕はこのチャンスを逃したくないとしつこく鳴らし続けた。
でもドアが開いて出て来たのは、フリルやリボンのついたブラウスを着た女の子だった。
人違いだと思った僕はあせってその場を逃げ出そうとする。

「シンジ、行かないで!」

アスカの声に僕は驚いて振り返った。
ブラウスを着ている女の子の顔を良く見ると、アスカだった。
でも、僕はアスカに何て言って謝れば良いのかわからない。

「……おかえり」

黙り込んだ僕に、アスカが笑顔でそう言ってくれた瞬間、僕の心の中にあった凍ったものがさっと溶けて行くような気がした。



誕生日の朝、部屋で目を覚ました僕の耳に、料理をする音が聞こえて来た。
きっとアスカだろうと思って行ってみると、台所に立っていたのはエプロンをした大人の女の人だったのを見て驚いた。

「えっ……!」
「おはよう、シンジ君」
「どうしてマヤさんが?」
「ふふっ、アスカのアイディアなのよ」

マヤさんの話によると、アスカは僕の誕生日に「お母さん」をプレゼントする事を思い付いたらしい。
そこでマヤさんがお母さん役を引き受けてくれたみたいだ。

「すいません、わざわざ来てもらって」
「いいのよ、私も保護者らしい事をしてあげられなくて寂しい思いをしていたんだから」

僕が謝ると、マヤさんは穏やかな笑顔で首を横に振った。

「だけどアスカはまだ寝ているみたいですね」
「きっと眠れなかったんじゃないかしら」

僕とマヤさんがダイニングキッチンで話していると、パジャマ姿のアスカが姿を現した。

「おはよう、お兄ちゃん」
「お兄ちゃん!?」
「マヤがママ役をするなら、アタシは妹役が妥当な線じゃない?」
「だからって……」

アスカが僕の寂しさを分かってくれたのは嬉しいけど、アスカも悪乗りしているように思えた。

「ほらアスカ、だらしない格好をしてないで早く着替えなさい」
「はーい、ママ」

とほほ、マヤさんまでお母さん役になりきっているよ。
流されるままに僕もこの状況を甘受する事にした。

「今日はありがとう、楽しかったよ」
「ふふん、最高のプレゼントだったでしょう」
「最高かどうかはわからないけどね」

僕はアスカに対して率直な気持ちを答えた。

「もう、シンジったら贅沢ね」
「やっぱりプレゼントってさ、どんな物を贈るか考える時が楽しかったりしないかな?」
「そうそう、なんかワクワクした気分になってくるわね」
「だから、最高のプレゼントなんて簡単に思い付かない方が良いんじゃないかな」
「まあ、その方が面白いわね」

アスカと僕は、顔を見合わせて笑った。
今度のアスカの誕生日プレゼントは何にしよう?
まだ半年ぐらい時間がある、ゆっくりと時間を掛けて楽しみながら考えよう、最高のプレゼントを。



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おまけ超短編『アイアイ』
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ふふ、今日は天気予報で降水確率50%って言っていたけど、やっと降りだしてくれたわね。
授業中に教室から窓の外を眺めていたアタシは心の中でニンマリした。
アタシはママにカサを持って行けと忠告されたけど、振り切るように家を出て来た。
それは全て作戦のためよ。
あの優しいシンジの事だからカサを持って来ていないアタシを放って帰れないわね。
そこでアタシはシンジを上手く言いくるめて、表面上は渋々とシンジと1本の傘に入る!
そしてお互いの体を濡らさないように、ギュッと体を寄せ合って家まで送ってもらうのよ!
妄想が膨らんだアタシは頬が緩んでヨダレが垂れそうになってしまった。
おっと、危ない危ない。



そして放課後、アタシはシンジのクラスに向かおうとしたんだけど、運悪く担任の先生に呼び止められてしまった。
話が終わってアタシがシンジのクラスについた時、シンジの姿は無かった。

「シンジはどこに行ったの!?」
「ああ、センセなら渚と一緒に帰ったで」
「渚のやつ、傘を忘れたらしいぜ」
「何ですって!? ナ~ギ~サ~!!」

鈴原と相田の話を聞いたアタシは怒り心頭に発してそう叫ばずには居られなかった。

「アスカってば、そんなキンキンした大声出して、お猿さんみたいね」

あきれた表情のレイにまでそう言われたアタシの怒りはさらに倍増した。

「アスカ、何に怒っているか解らないけど、落ち着きなさいよ」

ヒカリに肩をつかまれながら、アタシは再び大声で叫ぶ。

「悔しい、この気持ちをどこにぶつければいいのよーっ!」
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