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恐れるべきは真実を覆い隠すこと

2012年06月04日
 週刊文春に掲載された「石巻災害復興支援協議会」前会長伊藤秀樹氏の「がれき処理 補助金ちょろまかし」記事が、被災地に波紋を広げ始めたころ、石巻青年会議所(JC)OBは、この話題に眉をひそめた。
「とんでもないことをしてくれた」
 石巻青年会議所には、地元で活躍する経済人が名を連ねる。OBは地域経済発展の為に尽力してきた。その長い歴史において、過去にこうした不祥事が取りざたされたことはない。それが今回、一部の人間とはいえ、後輩にあたる石巻青年会議所役員とOBが役員に名を連ねた「石巻災害復興支援協議会」が舞台となった「瓦礫処理費用不正請求疑惑」の一件は、百条委員会の設置に伴い、週刊誌のゴシップから新聞、テレビが報じる事件となった。おかげで無関係な石巻青年会議所OBや現会員は肩身の狭い思いをしている。
 一方で、マスコミは本件に対するスタンスに苦しい内情を抱える。
 疑惑の渦中にある取材対象が地元の経営者層で構成されているとあって、地元マスコミは筆が重い。広告の打ち切りという、禁じ手におびえている。
 新聞、テレビといったマスメディアにとって広告は死活問題だ。大手報道機関であれば、地方の広告なんぞ、取るに足りない存在かもしれないが、地元の企業が主たる広告主のローカル紙にとって、広告に影響する記事は取り扱いが難しい。地元経済界なしでは生きていけないのが地方のマスコミの宿命でもある。
 地元経済の一員である石巻青年会議所メンバーが深く関わる問題ゆえ、今回、地元紙の記事がどうしても控え目かつ曖昧になってきたことは仕方がない。
 一方で、中央紙の記者は、好き放題ひっかきまわしても異動してまえば無関係。地方在任中だけ、無難に過ごせれば良い。よって、社内における自己の評価を上げるためには、地方においても「長いものに巻かれろ」なのだろう。正義感ぶって自治体にたてついたところで、権力者との関係がこじれ、本社に苦情でも入ろうものなら、さらに遠いところへ「島流し」されるのが落ちだ。
 そういう理由からではないのだろうが、某中央紙の記者は百条委員会設置について「関係者からは『復興が遅れかねない』と危惧する声も上がっている」と的外れな論調。ボランティアが食い物にされたことの真相解明どころか、真逆の立場を取る。
 ここで言う、関係者が誰であるか、は伏せたまま、市幹部の弁として「余裕があればいいが、復興業務で、ただでさえ忙しい。百条委への提出資料の作成などでかなり負担になる」と疑惑隠しに懸命な市当局の肩を持つ。また、百条委設置に賛成した市議の一人の発言として「百条委の設置がよかったかどうかは、正直言って分からない。これ以上、復興が遅れたら大変だ」と掲載した。
 疑惑隠しを後押しするかのような論調だが、市民の間では、数億円の不正支出の片棒を担いだ疑いさえある市の幹部が、余裕あれば、云々と口にすること自体、何を考えているのだ、という声が相次いでいる。架空の請求に支払われたのが、税金からなる金であるにも関わらず、当該記事には市民(納税者)の視点がない。
 市議の発言に関しても、阿部純孝市議が「復興のスピードを加速させるためにも疑惑を払拭し、早期に解決したい」と話している、と実名を記されているにもかかわらず、一方で、設置に賛成しておきながら、「良かったかどうか、正直分からない」、という発言部分については、誰の発言なのか、市議の名は伏せてあり、真実を隠蔽しようとする動きに同調する記事の在り方について、市民からは「(議員が)良し悪しも分からずに採決で、意思を表明するはずはなく、記者は、意図して発言の一部を引用したのではないか。へんな誤解を生むので、市議の名前を明確にすべきでないのか」「市議の一人から本当にそのような発言があったのか。記事のねつ造ではないのか」と某新聞記事の内容を疑問視する声が出ている。
 本件による復興の遅れ、という現実には存在しえない理屈を持ち出して不正を覆い隠そうとする動きに同調するかのようなスタンスは、当該新聞が疑惑隠しに加担しているのではないか、という新たな疑惑を呼んでいる。
 万が一、百条委員会設置の良し悪しが本当に分からない市議がいて、百条委員会の委員の一人だったりした場合、疑惑の解明が遠のくだけであり、それこそ復興の妨げになる。
 当該新聞社は、なぜ、公人である市議の名前の取り扱いについて、一人を実名報道としながら、もう一人を匿名としたのか。記者を証人として百条委員会に呼び、議員名を明らかにすべきだ、という声まで出ている。
 一方で、震災直後、「奇跡のボランティア組織・石巻モデル」と石巻災害復興支援協議会と伊藤秀樹会長(当時)を褒め称えた朝日新聞は、是々非々のスタンスで本件を扱っている。報道機関としての責任を果たそうというスタンスが明白だ。
 週刊文春の取材で写真の加工や使い回しといった架空請求の疑惑が暴露されるまで、伊藤元会長は、全国から参集した善意のボランティアの活動写真を、存在しない自社の瓦礫処理業務の施工写真として使用。さらには、加工して使い回し、請求額を水増ししていた疑いがある。
 こうした事実を裏付ける証拠が明らかになり、朝日新聞としては、石巻災害復興支援協議会伊藤会長(当時)に裏切られたという思いが強まったのではあるまいか。
 写真のトリミングというのは、写真のいらない部分を切り捨ててしまうことを言う。また、写真の使い回しとは、同じ写真を繰り返して別の資料に添付することだ。このようにして、施工写真を増やして請求額を膨らませていたにも関わらず、市側(市側とは誰?)は取材に対して「故意だったことまでは証明できない」と答えているが、トリミングという名の写真の偽造によって、がれき処理作業(請求書)をねつ造したことは明らかであり、誤請求であろうはずがない。

 こうした一部の心ない人たちの行いによって、被災者全てが、被災地に寄せられている多くの善意を食い物にしているかのような誤解を招くことがあってはならない。最大の被災地として支援を受けてきたからこそ、本件の真相は明白にする必要がある。全国から駆けつけたボランティアが行った瓦礫処理をあたかも自社の瓦礫処理業務であるかのように装い、市から3億を超す暴利を得ていた行為が許される行為で有るか否か。
 市議会には、本件疑惑追及の本質を見失わないでいただきたい。怖いのは復興が遅れることではない。恐れるべきは、不正に背を向け、石巻市は犯罪を許す街という烙印を押されてしまうことであり、
市幹部が口にしているらしい「有事か、平時か」「復興が遅れる」などといった詭弁に惑わされることなく、本質を追及していただきたい。
 報道から知る限りにおいて、伊藤氏は「混乱していた。ボランティアの写真が誤って入ってしまった。」と取材に答えているが、一方で、同一写真が異なる写真に見えるようにわざわざ偽造した理由については明確に答えていない。何の目的があって、同一写真を異なる現場写真に見えるようにトリミング(偽装)したのか?。偽装を行ったのは誰なのか?そもそもボランティアの活動写真は誰が何のために撮影したものなのか。
 重要なのは、週刊文春の取材に対して伊藤社長が、「市に相談したところ『アンタのところで機械出してボランティア引き連れてやったらいいじゃねぇか』と。その費用部分はきちっとみるから、という話ではじまったんです」と語った職員のそそのかしともとれる発言だ。
 市は、これまでの調査で不正は認められないとしているが、当たり前だ。立件されれば刑務所行きになるやもしれない行為を正直に話す間抜けが、この世のどこにいるのか。
 トリミングという名の偽造をせず、同一の写真がそのまま2度3度使われていただけのことであれば、誤請求の言い訳も通るが、なぜ故、トリミング(偽造)する必要があったのか。これが、使い回しを誤魔化すための手法ではない、と言って信じる者はいない。
 ポイントは、本当に車両を使い回しただけなのか。それともボランティアの活動写真を使って、架空請求していたのか。だが、いずれにしろ、罪は免れない。
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