「アジアの覇権」をめぐる国際社会の情勢が揺れ動いている。米国・中国・ロシアなど主要国が、それぞれアジア各国と「合従連衡(その時の利害に従って、結び付いたり離れたりすること)」式に関係を改善しながら影響力拡大を模索する一方で、お互いをけん制するため激しく競り合っている。その根底には「間もなく世界の人口の60%、世界のGDP(国内総生産)の50%以上を占めるようになるアジアから追い出されることは、将来の競争で淘汰(とうた)されること」という共通認識が横たわっている。
■米国が撤退するアフガニスタンで中国が介入を拡大
中国は今週、アフガニスタンとの間で、両国関係に関する広範囲な協定を締結するといわれている。中国の胡錦濤国家主席とアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領は、このために北京で会談する予定だ。米国が2014年までにアフガニスタンから完全に撤退するという方針を確定した状況で、中国には、自分たちが「力の空白」を埋め、地域の盟主としての立場を固める意図があると分析されている。
米国主導の西側世界が過去約10年にわたりアフガニスタンでテロ勢力と対決し戦争を繰り広げている間、中国はこの地域の政治・安全保障問題に事実上介入していなかった。その代わり中国は、アイナク銅山の採掘権を取得するなど、アフガニスタンとの経済的関係にのみ重点を置いてきた。
しかし中国は、米軍撤退後も依然としてタリバンの脅威にさらされているアフガニスタンの安全保障に、これまでとは異なり積極的に介入することで、中央アジアでの政治的影響力を高め、これに伴う経済的利益も併せて狙っているものとみられる。中国はまず、アフガニスタン軍を訓練する人材を派遣する案を推進しているといわれている。