<原発防災>保安院長、改善意見を黙殺…06年
毎日新聞 6月6日(水)2時31分配信
原発事故の防災対策を国際基準に合わせて強化する方針に経済産業省原子力安全・保安院が06年に反対していた問題で、当時の広瀬研吉院長が、内部の「防災対策を改善すべきだ」との意見を黙殺し、強化に反対していたことが、保安院の内部文書から分かった。防災対策が強化されていれば、東京電力福島第1原発事故で、住民が素早く避難でき被ばくを最小限に抑えられた可能性もあった。保安院内部の意見が生かされなかった経緯を、国会の事故調査委員会(黒川清委員長)が調べている。【岡田英、奥山智己】
内部文書は院内の検討会議資料で、毎日新聞の情報公開請求で5日開示された。
国際基準は、国際原子力機関(IAEA)が02年規定。原発事故で放射性物質が放出される恐れがあれば、原発から3〜5キロ圏の住民は即時避難する。
内閣府原子力安全委員会は06年3月、国際基準を国の原子力防災指針に反映させようと検討を開始。しかし、保安院などの反対で、指針の強化は見送られた。
内部文書によると、広瀬氏は同年5月、防災指針見直しを話し合う安全委との会合の直前に、複数の職員から検討内容について説明を受けた。その時、ある幹部が「我が国の原子力防災は国際的に見てもかけ離れており、かなり不備がある」と指摘。防災対策の改善に向け、安全委の議論を進めるべきだと進言した。
しかし、他の職員のほとんどは「国の防災対策は国際的に見ても劣っていない」などと言い、指針の強化に反対。広瀬氏は「(現行法下で)既に訓練を実施しており、少なくとも10年くらいは現行の体制で動かすべきだ。保安院として慎重な姿勢で臨む」と、幹部の指摘を考慮せず意見集約した。この幹部は取材に「持論とは違うが、院長が決めたことなので仕方がないと思った」と話し、改善意見が握りつぶされたことを認めた。
その後、安全委から「(保安院の慎重姿勢は)議論の幅を狭めることになり受け入れられない」と指摘されると、保安院は「(安全委の指摘は)『逆ギレ』とも取られかねない回答や反応で、(安全委とのやりとりは)時間と労力のムダ」と切り捨て、指針強化はなされなかった。
この問題を巡っては、国会事故調が今年3月の委員会で広瀬氏を追及。広瀬氏は5日、取材に「記憶がない」と話した。
最終更新:6月6日(水)2時31分
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