“高2で卒業”可能に 文科省改革案6月5日 16時33分
今の大学教育を見直すため、文部科学省は、高校を2年で卒業できるようにするほか、大学入試の在り方を見直すことなどを盛り込んだ改革案をまとめました。
これは、社会が大きく変化するなか、大学の果たす役割が不十分だという指摘を受けて検討が進められてきたもので、5日、その改革案が示されました。
この中では、グローバル化が進むなか、科学や芸術などの分野で世界に通用する優秀な人材を育てるために、高校を2年で卒業し、早く大学に進学できる新たな制度を設けることを提言しています。
平成10年から、高校2年生で入試を受け、大学に進学できる「飛び入学」の制度がありますが、高校は「中退扱い」になってしまうことから、制度の利用者は、6つの大学で101人にとどまっています。
今回の案では、飛び入学をした生徒には、高校の卒業資格を認めるということで、文部科学省は、来年度、必要な法改正をし、受け入れる大学や学生を増やしたいとしています。
東京大学などが実施を表明している秋入学も、この制度を活用して、高校を2年半で卒業すれば、入学までの空白期間を埋めることができるとしています。
また今の大学入試が、知識に偏りすぎたペーパーテストが多いとしたうえで、今後は、社会でより必要とされる思考力や判断力などの定着をみることができる入試に転換をはかるべきとしています。
さらに、国公立大学は、同じ学部が各地にあり、その役割分担が不明確だとして、地域や専門別の再編成を挙げています。
文部科学省は、今年度から改革案の具体的な検討を始めますが、多くは長年にわたり課題とされながら実現できなかったものが多く、その行方が注目されます。
伸び悩む「飛び入学」
「飛び入学」は、高校生の優れた才能を伸ばす目的で導入され、いまの制度では、高校に2年以上在籍し、特定の分野で特に優れた資質を認められると資格を得ることができます。
平成10年に千葉大学に3人の高校生が入学したのが最初のケースで、その後5つの大学が飛び入学の制度を導入しました。
しかし、飛び入学の学生はこの4月までに6つの大学を合わせても101人にとどまり、僅か1人しかいない大学もあります。
飛び入学の学生数が伸び悩んでいる背景としては、高校が中退した扱いになってしまうことや、高校生や保護者に勉強以外の高校生活を2年で終えることなどに抵抗感があると指摘されています。
教育現場からは賛否の声
千葉大学で飛び入学を担当する先進科学センターの中山隆史センター長は、「早く高度な勉強をしたい分野を持つ優れた学生にその環境を提供することは大事。そうした学生は飛び入学で入ってきたあと非常に力が伸びていく」と、制度の意義について話しています。
一方、飛び入学の学生数が伸び悩んでいることについて、「高校卒業ではなく中退になってしまうことに学生や保護者、それに高校の教員たちに抵抗感がある。新たな制度で高校の卒業資格が与えられるのは大きい意味がある」と、飛び入学の学生が増えることに期待を寄せています。
今回の制度の導入には高校の関係者から疑問の声も上がっています。
日本私立中学高等学校連合会の副会長で、東京・目黒区にある私立の中高一貫校の近藤彰郎校長は「飛び入学を利用するのはそもそも特別な能力をもった一握りの生徒で、国がわざわざ新たな制度を作り、後押ししても利用する生徒は増えないのでは」とその効果に疑問を述べています。
さらに「高校時代に得るものは、勉強以外の面も大きく、特にグローバルに活躍する人材こそ、高校でしっかりその基礎となる力を身につける必要があり、僅か1年早く大学に入るメリットは少ない」と話しています。
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