インターネット:時間が思考力を奪う
2012年06月04日
「世の中の情報化の流れは難問も軽問も、深い現象も浅い現象も、同じようにメニュー化された情報、言わばエクセルの表に落とし込むように奥行きや大小のないものとして整理していった。1万人が亡くなる事件も、1人のおばあさんが孤独死することも情報として同じ扱いになってしまった。この傾向は、機器そのもののスモールサイズ化によって加速され、ついには140字というツイッターの文字数になってしまった……」
身近な例を考えても、携帯電話が普及し始めた頃「電話番号を覚えられなくなった」との声をよく耳にした。記憶力の低下だろう。携帯電話だけではない。地図を画面に示してくれるカーナビゲーションがほとんどの車に付くようになり、頭の中から地図が消えてしまったように感じるのは僕だけではないだろう。
情報の洪水の中に生きながら、人々は事の軽重が分からなくなり、思考力が摩滅し衰退しているというのだ。
著書で「品格」を説いたお茶の水女子大学名誉教授の藤原正彦さん(68)は「若い人だけでなく、70代くらいまで本を読まなくなり、ものを考えずに生きている」と手厳しい。