しかし、それらを商売の道具にしているのは、彼らばかりではない。またそういう事業者たちが全員慎重な対応をしているかといえば、そんなこともない。そしてこうした対応の濃淡や、取り扱う情報の重大さに対する理解は、企業の大小とは、実は必ずしも関係がない。
結果として、確かに彼らの犯したミスは極めて大きいものだった。しかしその〈罪〉は、会社の清算という〈罰〉と、果たして釣り合うものなのだろうか。
私がミログの城口CEOに話を直接聞きたいと思ったのは、そうした疑問を、なにより私自身が確かめたいと思ったからである。
バルセロナでの出会いから
わずか1ヵ月後の清算と残った疑問
縁に恵まれたのも大きい。実は今年2月末にスペイン・バルセロナで開催された「モバイル・ワールド・コングレス」(以下MWC)に、ミログは出展しており、その時に名刺交換をした。
そこまでの経緯は概ね知っていたが、ミログ自体が今後どうするかは、その時知らなかった。というよりインタビューの結果、その時はまだ決まっていなかったようだ。それを示すように、同社のブースは、テーブルと椅子と名刺だけが置かれた、寂しいものだった。
ただ、わざわざMWCまでやって来たということは、何か再起の可能性を模索しているのではないかと、その時は感じていた。もちろん「身売り」ということも考えていたのかもしれない(実際MWCではよくある話でもある)。しかしそれにしても、彼らが実現しようとしていたことを、どこかで生かそうと模索していたのではないか。
しかしそれからわずか1ヵ月余りで、ミログは清算した。
いろいろなことが釈然としないまま、疑問が残った。そして彼らは何の言葉も残さずに、ひっそりと消えようとしていたように、私には思えた。