2012年03月17日 (土)

保安院長"なぜ、寝た子を起こす"

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6年前、国の原子力安全委員会が進めていた原発事故への防災指針の改訂を巡って、原子力安全・保安院が反対し、緊急時の避難区域の設定などの国際基準が指針に反映されなかった問題で、当時の保安院の院長が「なぜ、寝た子を起こす」と、安全委員会の委員に検討をやめるよう直接、伝えていたことが分かりました。

この問題は、6年前の平成18年、原子力安全委員会が進めていた原子力防災指針の見直しを巡って、国際機関が求めていた、緊急時に直ちに避難させる区域の導入について、保安院が安全委員会の事務局に対し、「国民の不安を増大する」などと再三、反対の申し入れを行ったものです。
この問題について、当時、指針の見直しを担当した原子力安全委員会の久住静代委員が、平成18年5月に開かれた保安院幹部との昼食会で、広瀬研吉元保安院長から「事故は起こらないのに、なぜ、寝た子を起こすんだ」と防災指針の見直しをやめるよう厳しい口調で迫られたことを明らかにしました。
久住委員は「地方自治体も関心が高く、やめることはできない」と反論したということですが、その後も、安全委員会の事務局に保安院から反対の申し入れが続き、最終的に国際基準は指針に反映されませんでした。
久住委員は「安全委員会の事務局のメンバーは、保安院などほかの省庁からの出向者の寄せ集めで、親元の省庁からの圧力に弱く、安全委員会の事務局が作成する指針の素案に影響が出た」と話しています。
これについて、原子力安全・保安院は「当時の保安院長をはじめとする保安院の対応は、安全委員会の公表した資料や久住委員の指摘のとおり問題があったことは明白だ。反省せざるをえない」としています。

防災指針見直し巡るやり取り公表

原発事故に対する防災指針の見直しを巡って行われたやり取りについて、原子力安全委員会はホームページ上に文書で公表しました。
公表された資料は、安全委員会の事務局が残していたメモや、保安院の担当者との電子メールの文面です。
平成18年4月24日の保安院の原子力防災課が作成した文書では、IAEAが求めていた、緊急時に直ちに避難させる区域について、「原子力事故時に周辺住民の方が事故の大小にかかわらず即時に避難をしなければならないという誤解を与えかねないことなどから、無用な社会的混乱を回避する」として、「『即時避難』という語句を使用することは控えていただきたい」としています。
その2日後の「申し入れメモ」と書かれた文書では、IAEAの考え方を導入した新たな原子力防災指針の検討を行うことは、「社会的な混乱を惹起(じゃっき)し、原子力安全に対する国民不安を増大する恐れがある」として、検討自体を凍結するよう記されています。
これに対して、安全委員会が、防災指針の改定の検討は防災体制の向上のための努力の一環だとして、申し入れを拒否すると、保安院は平成18年6月15日の文書で、「IAEAの決定と我が国の防災指針の見直しはリンクさせるべきものではない」として、安全委員会の防災指針の見直しの検討を不注意で遺憾だとして抗議しています。
このほか、電子メールでのやり取りで、保安院の担当者は「防災指針については、変更をしないことが大前提」、「防災指針、運用について変更がなく、なんら新しい措置を伴うことを指針に盛り込まないのであれば最小限の防災指針の字句修正を行うことはやむを得ない」などと防災指針の見直しをしないよう迫っています。  

投稿者:かぶん |  投稿時間:06:15  | カテゴリ:科学のニュース
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コメント(4)

先日「時論公論」で水野解説委員が指摘していたように,本来規制官庁であるはずの保安院がまったく職務を果たしていなかったことは承知していたが,原子力安全委員会にまで圧力をかけていたというのは驚きだ。
たとえ職員の出向が多いとはいえ,安全委は内閣府に属する別組織のはず。保安院は経産省の組織であって,いわば格下の機関では? 官僚機構において,こうした逆方向の圧力というのは,かなり特異な事例ではないのか。戦前の日本を「下剋上」が揺るがし,ついに破滅へと導いていったことも連想される。
これは今回の事故における2.26事件とでも言うべきだ。付言すれば2.26事件の首謀者は軍法会議で銃殺に処せられた。極論すれば,今回の多くの国民の生命を軽視した「圧力」の首謀者は,未必の故意による殺人未遂(人が死ぬかもしれないが構わないという殺意)として,極刑に処しても良いとさえ思う。
少なくとも,「圧力」に加担した職員は,ことごとく懲戒免職にすべきだ。公務員の職務理念に反することは明白だから。

これは,科学文化部のみならず,政治部の領域でもあると思う。逆方向の「圧力」に屈したときの関係者の認識も,じっくりと取材してほしい。官邸は一体この圧力をどう認識していたかも重要だ。

投稿日時:2012年03月18日 23:15 | 和田裕一

この記事に限りませんが、NHKのサラリーマンが書いた記事を読まされますと身体中がむずがゆくなってしまうのでありますよ。
この記事は、久住委員たち安全委員は、省庁からの出向者たちに押しきられて「指針の改訂」を出来なかったと言いたいのですね?
NHKのサラリーマン氏は久住委員を擁護してあげたいとの立場と見受けますが、国家が破滅の瀬戸際に追い込まれておりますほどの事故は起きてしまったのであります。
今頃「対応出来ませんでしたという言い訳資料」を公開されても福島の皆さんのお役には立ちませんし、あの事故はそもそも起きてはならなかったものです。安全委員会も含めて国家や当事者の東電等が今なすべきは、事故の徹底究明と事態の収束を図ることではないのでしょうか。
事故の起きた背景を明らかにするのであれば5W1Hが明確にされなければと存じますが、記事ではいまいちのように感じます。さらなる詳しい解説を期待します。
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大本営発表ではない、本当のことを知りたい。いまや検察や裁判所さえも信じられなくなってしまった。
NHKの皆さん、「どないすんね~ん」。
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投稿日時:2012年03月19日 14:36 | 熊:もどかしいよ~、誰が国家を危うくさせたの?

保安院は10年余、原発知識は希薄であり電力業界の知識に依存していると聞いている。今回も2度も真っ先に現場から逃避している。3/11の記者会見からして雑魚のアタフタがものがたっている。全ての面で知恵を伴う現場力はゼロ。
元々の目的・意義を事務屋の成り上がり院長以下全員の認識がズレている。このままでは全く存在意義はなく、再編成若しくは一旦解体し新規組織を作るべき。原発を無くしたとしても今後高レベル使用済み核燃料処理は残るわけで現在の保安院組織の継続ではさらに複雑・高度な諸課題を託すことは益々憂慮すべき事態が明白である。

投稿日時:2012年03月21日 04:16 | マンキー三季

熊:日本崩壊犯の重要参考人を聴取へ

記事にある広瀬研吉氏とかも国会事故調の参考人?に呼ばれるようですね。
『jikocho 国会事故調、次回委員会3/28開催。参考人は東京電力フェロー・武黒一郎氏、元原子力安全・保安院長・広瀬研吉氏。詳細および一般傍聴・プレス申込みは→ ow.ly/9O5dY 当日はUSTREAM生中継(日・英)を予定。 #jikocho』

NHKには、残念ながら今回も「垂れ流しの放映権」を与えてもらえませんでしたか? 国民には、おかしな解説やら悪意のある編集は不要です。ので、ダダ漏れのアーカイブスを設けていただけますと、政府とか財界とかあちこちの利権屋とかからの介入も入りにくくなるかとも存じますし、そもそもがありがた迷惑なのでご検討ください(何回もしつこいですか?)。 情報機密費担当の広報官や各省の大臣や事務次官にはメディアに介入するなと、「かぶん」からも命令しておきましょうねw

国会関連の報道や垂れ流しも少なくなったやに感じるのは熊だけでしょうか、国会に出入り禁止を食らったんですか?
三権分立の一翼である司法関連の取り扱いの少なさもずっと気になっていますが、日本国を揺るがす大きな問題を孕んでいませんか?
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「東日本大震災追悼式典」での天皇陛下のお言葉の放送にあたり、お言葉の一部をカットして放映したとかでネットで騒いでいましたが、NHKもやってしまったようですね? お言葉の一言一言に有難味を感じますが、「日本放送協会」は福島の皆さんを始めとする全国民にお伝えしなくてよろしいんでしょうか?
 次のはANNのチャンネルだとのことですが、カットしなかった曲もアルジャナイ!
 http://www.youtube.com/watch?v=Vp1QwXXjPqs&feature=related
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投稿日時:2012年03月23日 11:23 | 熊:日本崩壊犯の重要参考人を聴取へ

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