2話
ハルユキside
仮想黒板の右上に、黄色い手紙マークが点滅した。
授業中にぼんやりしていたハルユキは、思わず首を縮めながら両眼の焦点を移動させる。
途端、視界いっぱいに広がる深緑色の黒板がスッと半透明に薄れ、整然と並ぶ生徒たちの背中と教師の姿が鮮明化する。
教師や生徒たちは確かにそこに存在している。
しかし黒板に文字が書かれているかというとそうではない、黒板もそこに書いてある数式よ文字も映像にすぎない。
彼らの首についた《ニューロリンカー》という装置が脳内で直接映像化しているのだ。
初老の教師のにも彼にしか見えないに黒板になにも持たない指を這わせているのだろう
とてもではないが何処かやりにくそうにしている
解説しているであろうボソボソとした言葉は本来ならばききとれないだろうが教師についている《ニューロリンカー》によって増幅・鮮明化されハルユキの脳内に送られてくる。
ハルユキは汗を少しかきながら点滅する手紙マークに目を向ける。
入学当初なら女の子がいたずらで送ったものと淡い期待を抱いただろう。しかし半年たったいまではそんな期待をする感情などとうに捨ててしまった。
初めのころは女の子と会話したりしたが今では全く会話することはない。
そもそもその会話も時間割を聞かれただけという話なのではっきりいって会話といっていいかわからない。
しかも聞かれてことに対して回答するのに10秒ほどの時間をつかってしまった。
考えてると思えばそれでいいかもしれないが、実際は緊張してしゃべれなった。
それほどハルユキのあがり症は深刻なものだった。
ハルユキは教師に目を向けた。
まだ黒板に文字を書いているということはこの手紙は宿題ファイルではないということだ。
ならば誰か?
ハルユキは理解した瞬間視界のすみにあるゴミ箱に手紙をぶち込みたくなる。
しかしそんなことをすれば後でどうなるか…
それはもう経験済みだ。
教師が後ろを向いているのを確認し嫌々ながらも空中にある手紙マークを指で叩く。
『ガピピッガガガギガピピガ…!!!』
開いた瞬間ハルユキの耳を品性の欠片もない不協和音が打ち鳴らし同時に目がチカチカするような色が大量に混じったグラフィックがハルユキの目を焼き焦がす。
続いてメーセージが現れるそれは文字ではなく音声メーセージだった。
『さぁブタくんに今日のコマンドを命令する。昼休みに屋上へもってこいメニューは焼きそばパン2個とクリームメロンパンだ!『あっ俺イチゴ・オレ』『じゃあ俺はファンタグレープな』ギャハハ!!言いすぎだろブタの財産じゃかえねーよ。さぁブタくん今のもの全部買ってくるんだ遅れたら全裸で屋上に放置なはやくこいよ~』
『おいおい。もう確定だろ!!買えないだからさ』
『絶対買ってこいよ。金なかったら盗むんだな』
『おっ!?ついにブタから犯罪者かなぁ~?』
ブチッ!!
それ以上聞いていられず強制終了する。
ハルユキの中ではどうやって買うか、それしかなかった。
左後ろの席から面白がる視線を感じるが全く気にならなかった。
朝母親からもらった昼食代は500円貯金はゲームを買ってしまいもうなかった。
本当に犯罪に走るか…
そんな言葉が頭をよぎる。
しかしそんなことをすれば本当にただでは済まなくなる。
だがほかに選択の余地がない。
誰かに借りる…?
貸してくれるわけがない。
親しい仲なら貸してくれるだろうがそんな人物はいない。
頼もうにも明確な理由を話せない上に遊び盛りの中学生だ親しくもない奴に貸すくらいなら遊びに使うだろう。
幼馴染ならいるがイジメのことには関わらせたくなかった。
幸いなことに現金を持ってるやつは結構いる。
いつ盗むか…ハルユキはそんなことを考えながら4時間目を過ごした。
◆◆◆◆◆
昼休みになり購買の近くには人だかりができていた。
しかしその団体にいつもなら入っているハルユキという生徒がいなかった。
あの後彼は残り時間が全くないということに4時間目のチャイムをきいて気づき残りの時間で何ができるか考え結局何もできないという考えにいたり呆然としていた。
しかも長時間考えたためかのどが渇き呆然していたこともあってか残りの500円のうち120円で缶ジュースを買ってしまっていじめ筆頭の分も買えなくなってしまっていた。
時間がない、金が足りない
ハルユキの頭の中ではそれだけが常に叫び、暴れ、支配している。
『遅れたら全裸で屋上に放置』
あいつらはそう言っていた。
そしてタイムリミットまではあと3分しかない。
頭の中で昔のアニメの中に光の巨人が怪獣を3分で倒すというのがあったのを思い出す。
「まて!!いまはそんなのどうでもいい!!」
いつも間にかへんな方にむかっていた思考を呼び戻す。
残り3分であいつらの言ったものを買わないとやばいのだ。
どうやって盗むか…
それだけがその言葉が頭をめぐった。
グゥー……
めちゃくちゃ盛大に腹が鳴る。
まるで何かを喰わせろ!!!そう主張しているようだった。
そういえば朝も遅刻しそうだったのでパン1枚しか食べてない。
今も昔もよくお世話になるお湯を注いで3分待つだけでいいおいしいラーメンを急に食べたくなった。
ちょうど家にあるインスタント食品も品切れが続出している。
今度母さんに買ってきてもらおう…
ってそうじゃない!!
「いまはどうやって盗むかを考えないと!!」
つい考えたことを大声で言ってしまった。
すぐに周りを確認するいつの間にか歩いてたらしく後ろに人はいなかった。
安堵の表情を浮かべ前を向き再び打開案を模索する。
そんなとき
「大声で何を盗む発言とは…すごいですね。何を盗むんですか?」
なにか見定めるような目でこちらを見る。
その目はなにか選別するような物を選ぶような冷たい目。
それが自分の人生を狂わす…いや革新させる新田和樹との出会いだった
黒雪姫×ハルユキでいくか
黒雪姫×カズキでいくか
それともドロドロにできるかわからないが三角関係でいくか…
アドバイス・感想お待ちしています。
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