今回も、まだ実戦は入りません><
実戦を期待していた方、申し訳ないです~。
序章 ~傭兵~
「大丈夫?」
アイクに気が付いたミストは、アイクのことを気遣う。
「あ、ああ」
まだ頭がはっきりしてない気もするが、そう答えた。するとそこへ、グレイルが現れた。
「気が付いたか、アイクよ」
ミストはグレイルに対して、声をあげた。
「もう!お父さんったらやりすぎだよ!いくら練習用の武器だからって、本気で殴ることないじゃない」
「このくらいで音を上げているようでは、傭兵として生き抜いてはいけん」
「でも!」
二人のやり取りを聞いていたアイクが、口をはさむ。
「ミスト、親父。俺は大丈夫だ」
するとグレイルがフッと笑い、木刀を構えた。
「ふん、そうでなくてはな。・・・さあ、構えろ!」
「え?ちょっと・・・まだやるの?」
ミストが心配そうにアイクに聞くが、アイクは毅然と答える。
「せめて一撃・・・親父に食らわすまでは、やめる訳にはいかない」
「いい覚悟だ。だが、今のままでは何度やっても同じ・・・ん?」
向こうの林の中からガサガサと音が聞こえたかと思うと、中から濃い緑髪の少年が現れた。見たところ、アイクと同年代のようだ。
彼は、ボーレ。この傭兵団の少年戦士だ。
「おお、やってるやってる」
ボーレの姿を見て、ミストが聞く。
「あれ?ボーレ、どうしたの?」
「どうしたも何も。団長たちを呼びに出てったお前が戻ってこねぇから、副長が見て来いって」
ミストはすっかり自分の役目を忘れてたようだ・・・。
「あ・・・そうだった。ごめんごめん」
ボーレはそんなこと全く気にせずに、今度はアイクの方を見る。
「ま、団長にボコボコにされてるアイクを笑ってやろうかと思ってたんだけど・・・意外と元気じゃねぇか。つまんねぇの」
「・・・悪かったな」
アイクはそうつぶやいたが、ミストが余計な一言を言う。
「一足遅かったね。ついさっきまで伸びてたんだけど~」
「おいミスト!」
「えへへ、ごめんなさい~」
そのやり取りがひと段落ついてから、グレイルはボーレに言う。
「ボーレ、ちょうどいいところに来た。お前がアイクの相手をしてやれ」
「え?おれがですか?」
グレイルは後ろに放ってあった大きなカバンから、木でできた訓練用の木斧を取り出す。
「ちょうど、この訓練用の斧も持ってきているんだ。それに、まずは腕の近いものと戦ってコツをつかんだ方がいいだろう」
その間、アイクはすっかり頭もはっきりしていた。横に転がっていた木刀を拾う。もう、平気だ。
「分かった。ボーレ、よろしく頼む」
「へっ、腕が近いっていうのは気にくわねぇが、仕方ねぇ。相手をしてやるぜ!」
お互い、離れた位置に向かい合って立つ。これが、グレイル傭兵団式の訓練の作法だ。
ボーレが木斧を素振りして、声を上げた。
「さあ、どっからでもいいぜ。かかってこい!!」
「ああ。すぐそっちに行ってやる」
アイクは木刀を片手に、ボーレのもとに走っていく。ボーレは木斧を体の前に構えてアイクの方を向いた。
ミストの声援が響く。
「お兄ちゃんがんばれ~!ボーレなんかやっつけちゃえ~!!」
「おいおい、『なんか』はねぇだろ、『なんか』は・・・」
一方のアイクは、ボーレの前までようやくたどり着く。そして、体を横に傾け、剣を相手の方に倒す特徴的な構え方をとる。
「いくぞ」
「おう!かかってこい!」
木刀を振りかざして、ボーレの体に打ち付ける。
ブゥン!バシィッ!!
「へへ・・・なかなかやるじゃねぇか。けど、戦いはまだこれからだぜ!!」
ボーレはそう言うと、肩に担いだ木斧をアイクめがけて振り下ろした。
ドカッ!!
「くっ・・・」
木斧が当たった左腕が、打撲で紫色に変色する。アイクはそのまま片膝をついた。
「おれの力も、中々なもんだろ?」
「・・・ああ。だが・・・」
ボーレが得意そうに言うのに対して、アイクは冷静に答える。
「俺は、負けない!」
何とアイクは、片膝をついた状態から、あり得ない反撃をして見せた。
木刀を片手で旋回させ、ボーレの脳天に叩きつける。
ヒュン、バシィン!!
「ぐぁ!?」
そのままボーレは背後の草むらに吹っ飛び、倒れ込んだ。
グレイルは今の戦いの様子を見て、思った。
(・・・以前教えた戦い方を、確かに身に付けつつあるな。最も、まだまだだが)
しばらくして、ボーレは草むらの中から起きあがった。
「や、やるじゃねぇか・・・」
「ボーレ、かっこわる~い!」
「るせぇ!!」
ミストがはやし立てたことに、ボーレは顔を赤くして怒る。そんな様子を見て、グレイルが声をかけた。
「ボーレ、ご苦労だった。もう戻っていいぞ」
「あ、はい。・・・おいミスト!待てこら~!!」
「キャハハハ、だって本当のことだも~ん」
ミストとボーレの鬼ごっこを横目で追ってから、グレイルはアイクに向き直る。
「・・・ボーレの油断があったにしろ、今の動きはまずまずだった。それを覚えておくがいい」
「分かった」
そして、グレイルはまたバッグのところに行き、木刀を取り出す。
「さあ、次はまた俺が相手だ」
「ああ。望むところだ!」
アイクも再び木刀を構え直す。だが、グレイルは戦う前にもう一つ思い出したことがあった。
「・・・とその前に・・・ミスト!」
鬼ごっこの結果、ミストはどうやら逃げ切ったようだ。ボーレはさっきの訓練での疲労もあり、息が上がっている。
グレイルに呼ばれて、ミストは何をすればいいのかすぐに理解したみたいだ。
「あ、は~い!お兄ちゃん、はい、きずぐすり。さっきの訓練で腕をぶつけたでしょ?お父さんと戦う前に、ちゃんと使ってね?」
「ああ、分かった」
アイクが言われたとおりにきずぐすりを飲み込むのを見ながら、グレイルも一言言う。
「小さな怪我でも、余裕があるうちに治すよう心掛けろ。ヤバいと思った時には手遅れだった・・・なんてことがないようにな」
さっきのボーレ戦と同じように、二人は離れた位置で向き合った。準備ができ、グレイルが叫ぶ。
「全力でかかってこい!!」
「・・・ああ」
再び、アイクは木刀片手に走り出す。そして、走る勢いそのままに、グレイルの体に打ちかかった。
だが。
「・・・甘い!」
瞬時に木刀を特殊な構えで受け止めて、アイクの体に逆に打撃を与える。
ベシッ!
「ぐ・・・!」
「アイク、こちらからも行くぞ!」
グレイルはいきなり足払いを仕掛ける。予想できない動きに、アイクはそのまま地面に転がった。
型にはまらない我流の戦い。それが、傭兵の戦い方なのだ。
「ふんっ!」
転んだアイクめがけて、容赦のない一撃が襲いかかる。
それでも、アイクは冷静だった。
「・・・でやぁぁぁ!!」
アイクは渾身の力を込めて、木刀で目の前をなぎ払った。その結果グレイルの一撃は逸れ、すぐ横の地面に木刀を叩きつけることとなる。
起きあがった後、アイクは体制が崩れたグレイルに向け、思い切り木刀を叩きつけた。
「ぬん!!」
ドカァッ!!!
「む・・・」
そのままグレイルは倒れ込んだ。
「お兄ちゃん、すっごーい!!」
アイクがグレイルに勝ったのを見て、ミストは歓声を上げて飛びはねる。だが、アイクは静かに言った。
「・・・親父。本気じゃなかっただろう?」
「え、そうなの?」
するとグレイルは起き上がり、フッと笑いながら答えた。
「・・・それに気付けたなら、お前も少しは成長したということだ」
その話を聞いて、ボーレも言う。
「そうそう。おれも実は本気じゃなかった・・・」
「それはウソ」
「ちぇっ」
再びあの二人は鬼ごっこを始めたようだ。仲がいいんだか悪いんだか。
アイクは真剣なまなざしになって、グレイルに話を切り出す。
「・・・じゃあ、俺ももう一人前だって認めてくれるよな?」
グレイルはアイクが言う言葉の意味をすぐ理解した。
「仕事に出る話か?」
グレイル傭兵団。
アイクの父親であるグレイルが立ち上げた、クリミア王国西部を拠点とする傭兵団である。
団長であるグレイルを含め、現在団員は8人。皆、家族のように共に生活をし、強い団結心を持っている。その一方で、実力は様々だが、団員は皆個性豊かだ。
アイクはグレイルの息子ということもあり、将来いずれ団長の座を引き継ぐことになっている。
「・・・ボーレだって危険な戦場に出ているんだ。俺もいい加減、見習いは卒業したい」
アイクの強い決意に、グレイルは少し考え込む。ボーレはまた調子に乗ってきた。
「そりゃあ、お前と違っておれは腕が立つからよ」
で、やはりミストが横やりを入れるのだった。
「さっきは負けたくせに~」
「あれはたまたまだよ。た・ま・た・ま」
しばらく考え込んでいたグレイルは、ようやく顔を上げて答える。
「そうだな・・・まあいいだろう。お前も明日から傭兵団に参加しろ」
「本当か!?」
まさかこんなにすぐに許可されるとは思っていなかっただけに、アイクは驚いた。
「ただし、無理だと思ったら、すぐに訓練に逆戻りさせるからな。せいぜい頑張ることだ」
「大丈夫だ。すぐ・・・みんなに追いついて見せる」
アイクの決意は、固かった。その様子が、グレイルの目には好ましく映った。
「どうだかな。さあ、そろそろ砦に戻るぞ。みんなが待っている」
帰り道の道中も、みんなと食事をとっている時も、アイクは明日からのことで落ち着いていられなかった。
どんな日常が、待っているのだろうか・・・。
次回は「1章:初陣」です。実戦がようやく入ってきますよ~!
FE蒼炎の軌跡、および暁の女神は、どうしても話が多いため、このようにとても長くなってしまうのです><; これから先、もしかしたら話の部分を削ったり2部構成にしたりするかもしれませんが、どうかご理解ください。
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