チャイナ・ウォッチャーの視点

ラビア・カーディル総裁に聞くウイグルの「いま」(前篇)

有本 香 (ありもと・かおり)  ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。執筆者は、富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)、城山英巳氏(時事通信社中国総局特派員)、平野聡氏(東京大学准教授)、森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)、三宅康之氏(関西学院大学教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)。

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 「新疆ウイグル自治区の当局は、東トルキスタンの全域で『ラビア・カーディル糾弾キャンペーン』を行なうため、各地に10人ずつの担当者を任命したそうです。地方メディアとウェブサイトに、私を悪者だとする情報を流すのです。この10人ずつの担当者はすべてウイグル人。『ウイグル人がラビア・カーディルを非難している』と見せるためです。獄中の私の息子をテレビに出すのと同じやり方ですよ」

 この日、通訳を務めてくれた世界ウイグル会議の副総裁ウメル・カナット氏が言葉を足した。「中国当局がこの種のキャンペーンをやればやるほど、かえってウイグル人の気持ちを強くします。中国側のプロパガンダを信じ込む者など一人もいませんから」

 それにしても、監視や弾圧がますます強まる中で、どうやって国内にいるウイグル人との連帯を保っていくのか? ラビア総裁は言う。

 「それは容易ではありません。中国側はあらゆるコンタクトを遮断してきますからね。私自身、親族とコンタクトすることも容易でない。しかし、世界ウイグル会議は、東トルキスタン国内の情報を得、それを国際社会に発信するよう努めます。内外のウイグル人を励まし、連帯を促すために、つねに別チャネルをもつことは重要です」

 非暴力の闘いを続けるうえで、情報こそが武器である。幸い現代はあらゆる情報ツールが発達し、当局がどれほど妨害しようが、情報は内外のウイグル人にまたたく間に共有される。しかし、この「情報化時代」には厄介な面もある。相手を追い込むはずが、自らが翻弄されてしまうこともあるからだ。 (後篇に続く)

(写真撮影:WEDGE Infinity編集部)

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企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

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