今回は、彼女の境遇やスタディギフト自体に共感した支援者が、出資した。「『私の性的魅力にお金を出してください』と感じ、嫌悪感を覚えた」とするブログ記事もあったように、少なからず彼女の容姿が彼女の知名度や集客に影響したのも事実だろう。だが、それでも彼女はクラウドファンディングの特性を利用して、人気を集めたにすぎないのだ。
もし、立ち上げ時に、イケメンの学生による将来への希望がみなぎる文章と、怠惰な雰囲気の写真の学生による凡庸な文章が並んでいたら、当然、前者が多くの資金を得ていただろう。だが後者であっても、ユーモアあふれる写真と文章で共感を集めれば、イケメンを超えるかもしれない。
■本質と公共的なイメージの「乖離」
スタディギフトは、既存の奨学金制度にとって代わる公共的な基盤ではない。そうした制度から漏れ、しかし、実力で資金をつかみたいと願う学生のための「人気投票」のシステムである――。そう、はっきりとメッセージを打ち出さず、「1人でも多くの苦学生を救いたい」というメッセージが持つ公共的なイメージばかりが強調されてしまった。そのために、運営者と外野とのあいだに受け取り方の「乖離(かいり)」が生じ、嫉妬を増幅させてしまったのではないか。
この仮説を家入氏にぶつけると、少し考えた後、こう話した。「その視点で議論はしていなかった。けれど、人気投票であることが是か非かでいうと、僕らは是。人気に差が出るのは否定できない事実。人気のない日陰の部分を切り捨てるつもりか、と問われても、僕らはそこまで責任を持つ公共サービスを始めたわけではない」。なぜ人気投票である側面をもっと強調しなかったのかと突っ込むと、家入氏はこう、つぶやいた。「きれいごとでやりたかったのかなぁ……」
家入氏らは、連日何時間も議論をし、活動停止を決めた。今も、ブログ記事などすべての批判する意見を収集し、問題点や課題の洗い出しと解決策の模索に時間を費やしている。
「やり始めた以上、再開したいという思いは強い。あの騒動のさなか、40人くらいあった応募者の学生にも報いたい。僕らがやろうとしているのは個人が自分を打ち出すことでお金を集めたりモノを売ったりする時代が来るのではないか、ということ。僕が別のサイトで『僕とランチできる権利』を売ったら、あっという間に売れた。そういうひとがもっと増えたらいいなと思う」
■サイト再開は「夏までに」
今のところ、リベンジ戦は「夏までに」と考えている。それまでに固めるべき論点は多い。例えば「学費」をメーンに掲げてよいのか。学費がないことをアピールポイントにしてしまうと、不幸自慢に陥り、個人が自分を打ち出してアピールするという本来の趣旨からそれる可能性がある。奨学金との二重取りや身分詐称など「学費詐欺」を招く危険性もある。
「Wishbone」のホームページ
結果として学費に充てるとしても、「学生時代にやり遂げたいこと」「将来かなえたい夢」をアピールポイントとした方が健全なのではないか。家入氏は「何も考えずにスタートしてしまったけれど、考えれば考えるほど難しい。競争社会の現実に学費を絡めていいのかどうか、そこから考え直してみたい」と話す。
米国で同じモデルの「Wishbone」というサービスがある。資金援助を求める学生の顔写真がずらりと並び、目標額までの達成度が表示されている。顔写真にマウスをかざすと、彼ら彼女らの顔は、笑顔に変化する。このサイトを見ながら、家入氏は「僕らも困っている学生に笑顔を届けたかっただけなんです」と言った。
少なくとも応募してきた40人の学生に対し、その気持ちを果たす責務が、家入氏らにはある。
(電子報道部 井上理)
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