彼女は2つの奨学金を得ていた。このうちの1つ、日本育英会の奨学事業を手がける日本学生支援機構によると、本人の病気や親の介護など、特別な理由なく単位を取得していない学生などへの給付を打ち切る「廃止」措置は、全体の1%程度だという。
ただ、彼女は奨学金とアルバイトだけで、学費と生活費を捻出していた。アルバイトの影響で、返還義務はないが「成績優秀」が継続の条件だった早稲田大学校友会の奨学金が打ち切られてしまった。その分を補おうと授業を休んでアルバイトを増やした結果、ますます成績が下がり、日本学生支援機構の奨学金も失ったという事情がある。
もっとも、擁護の声もあった。ブロガーや作家として活躍するイケダハヤト氏は「くだらない批判に潰されることなく、成長していってほしい」とブログをつづり、これを受けジャーナリストの佐々木俊尚氏は「私はこの意見に全面賛成。多様なあり方があることを認識し、支援したい人が支援すればいい」とつぶやいた。
■当事者の多くは冷静な対応
そもそも、彼女に出資をした当事者からのクレームはあまり露見していない。炎上した後、自ら返金を希望した出資者は1人だけだったという。「希望者のみ返金する」としてから返金要求があったのは195人中20人ほど。返金を希望した1人、杉本穂高さんは「失望したからというよりは、このサービスは仕切り直した方がうまくいくと思った。スタディギフトのようなサービスを支持する気持ちは変わっていません」と冷静に言う。
支援したのは、「坂口さんというよりむしろサービスに対して支援したいという思いが強かった」。まったく同じ理由を話すもう1人の支援者、酒田理人さんは騒動をこう眺めていた。
「確かに表記や調査に甘い点があったのかもしれないが、実際に支援した身としてはそのお金を役立てていただければ満足だと思って出しているわけで、今もその気持ちに変わりはありません。関係のない人たちが『詐欺だ!』などと騒いでましたが、僕からすれば『いや、別にそんなこと思ってないし』と……。あの程度の表記ミスであれば、恐らく他の支援者も問題ないと思っているのではないでしょうか」。つまり当事者の多くが怒り心頭だったわけではない。
にもかかわらず、出資した当事者の気持ちが置き去りのまま、炎上がエスカレートしたのは、なぜか。次の酒田さんの言葉にヒントがある。「正直なところ、炎上の方向性がほぼ嫉妬が原因と思われるものばかりでへきえきしました。別に坂口さんが支援を受けても受けなくても、誰も損はしないはずなのに」――。
■彼女は人気を集めた
彼女は人気が高かった。運営側の瑕疵(かし)に加え、彼女の人気が、外野の「嫉妬」や「やっかみ」を増長させてしまったという側面は否定できない。最初に並んだ案件が「Google+で人気となった女子大生」のみであり、彼女の大きな写真が何枚も貼られていただけに、なおさら……。
もともとクラウドファンディングは何かをアピールし、実力で資金を集めるプラットフォーム。それぞれの募集の人気が支援額に直結し、優劣がついてしまう。人気の要素は、受け手の感じ方次第。その個人の容姿や個性かもしれないし、資金の使途かもしれないし、心に伝わる文章表現なのかもしれない。人気は「共感」に置き換えることができる。家入氏は炎上の終盤、ツイッターでこうつぶやいた。
「今までの『どんな人にいくら渡るのか分からない寄付』ではなく『この人に共感するから支援』をやはり実現したい。一度仕切り直してでも。議論したい」
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5月28日、学生の学費を一般から募る支援サイトが、支援金の全額返還と活動停止を発表した。サイト開設からわずか11日のことだった。ある“女子大生”の支援金募集を始めたところ2日で約100万円を集めたが…続き (6/5)
各種サービスの説明をご覧ください。
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