【レポート】

高速バス衝突事故から、ツアーバスの安全への取り組みを考える

1 高速ツアーバスについて

    杉山淳一  [2012/05/08]

    ゴールデンウィークがスタートした直後の4月29日未明、群馬県の関越自動車道藤岡ジャンクション付近で高速ツアーバスが道路側壁に衝突し、乗客7名が死亡、多数の重傷者を出した。この事故の報道で、改めて高速ツアーバスの安全性、労務環境が問題となっている。ツアーバスの安全管理はどのように行われているのだろうか。

    急成長する高速ツアーバスとは

    高速ツアーバスとは、企画旅行商品の形態をとった貸切バスツアーである。そのルーツはスキーバスやディズニーランドツアーと言われており、旅行会社がツアー参加者を募集し、貸切バスを仕立てて運行した。2000年以降に貸し切りバス事業が免許制から許可制へ緩和されると、都市を目的地とする貸切バス旅行が大幅に増えた。目的地が都市であるため、従来の都市間高速路線バスとほぼ同じルート、時間帯となった。

    高速路線バスは路線の届出申請が必要で、運賃も30日前に届け出なくてはいけない。また、公共交通という前提のため定期運行が原則で、乗客が少なくても運行する必要があり、停留所の設置義務もある。

    これに対し、高速ツアーバスは単発の募集型旅行という形態をとっているため、路線の届け出は不要、運賃も自在に設定できる。ただし、団体貸切バスのため、路線バス向けに作られた停留所には乗り入れできない。したがって路上や民間駐車場などを集合場所としている。

    ツアーバスは路線バスに比べると路線設定や価格の自由度が高く、低価格を設定できる。例えば、関越道で事故を起こしたツアーの場合、石川発東京ディズニーリゾート行きのバスで、料金(旅行代金)は3,500円から。バスの定員は2+2席×11列で45名(最後部5列)。補助席を使えば55名の参加が可能だった。これに対して高速路線バスは、同一路線ではないが3列シートで運賃は7,340円と倍以上、低価格タイプの4列シートタイプでも5,000円でほぼ1.5倍となる(JRバス石川 - 東京で割引無しのケース)。

    ツアーバスの利用者の増加と合わせて、ツアーバスを実施する会社は急増している。2008年10月に結成された業界団体「高速ツアーバス連絡協議会」によると、加盟会社は89社で、内訳は企画実施会社が38、運行会社が38、その他(販売ポータルサイト運営・現地受付業務など)13となっている。4月29日に事故を起こしたバスについては、募集会社は同協議会に加盟していた。しかし、運行会社は非加盟だった。

    ツアーバスと路線バスの主な違い
    ツアーバス 路線バス
    運行形態 貸切バス(募集型団体旅行) 乗合バス
    監督省庁 "募集会社:国土交通省(観光庁) 運行会社:国土交通省(貸切バス)
    国土交通省(路線バス)
    関連法令 募集会社:旅行業法
    運行会社:道路運送法(貸切バス)
    道路運送法(路線バス)
    運営会社の届出 募集会社:第一種・第二種旅行業者
    (登録制)
    一般乗合旅客自動車運送事業
    (許可制)
    路線の設置 届出不要 届出義務あり
    運行義務 なし(乗客なしでツアー取りやめ) あり(乗客なしでも運行)
    停留所設置義務 なし(路上や民間駐車場を使用) あり
    運賃の設定 届出不要 国土交通大臣へ
    上限運賃の認可申請が必要
    運賃の変更(値下げなど) 届出不要 地方運輸局への届出が必要
    (30日前まで)
    運賃の支払 運転士への支払いは不可(事前払込) 運転士へ支払い可能
    行き先の表示 不可(ツアー名称を掲出)
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