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線路のシカよけ 今度は光と音で

2012年06月04日

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住宅に近い場所にもシカ侵入防止用の柵が設置されている=白糠町岬3丁目

■昨年度の列車事故 過去最多2325件に
■JR、13年ぶり「新兵器」

 エゾシカと列車との衝突を防ぐ対策にJR北海道が乗り出して20年近くたつが、増加傾向に歯止めがかからない。特に深刻なのが事故の4割近くが集中する釧路支社の管内だ。その線路沿いに13年ぶりに「新兵器」が導入される。「シカが嫌がる」光や音を出す装置だが、効果はいかに。

 先月25日午後7時半ごろ、JR千歳線の北広島―上野幌間を走行中の快速列車が急ブレーキをかけた。線路内にシカ1頭がいたためで、間に合わず接触。シカはその後逃げたが、列車は線路の安全確認などで約20分止まり、後続にも10分ほどの遅れが出た。

 同社によると、こうしたシカとの衝突や回避のために遅れが出た「事故件数」は2004年度に千件を突破。その後も道の推定生息数の増加に伴って増加傾向が続き、11年度は過去最多の2325件となった。

■失敗を繰り返し

 このうち、4割近くを占めるのが根室線と釧網線を管轄する釧路支社管内だ。JRのシカ対策は同支社が1993年、車両の先頭部にシカ専用の警報器を取り付けたのが始まりだ。走行中の風で鳴る笛でシカの嫌がる超音波を出すとされたが、目立った効果はなく外された。

 その後も失敗が繰り返された。翌年に根室線の線路脇2カ所に列車のライトを線路の外に反射させて警戒させようと反射板を設置したが、効果はすぐ薄れた。

 99年には芳香剤を線路近くにまいたり、せっけんを鉄道林に結んだりしてにおいで追い払おうとした。だが、せっけんをカラスに持ち去られて効果の検証すらできず、これ以降、新たな対策は打っていない。

 JRが唯一効果があると評価するのが、96年度から設置を進める柵だ。高さ2、3メートルほどとシカが飛び越えられない。ただ、設置費用は1メートル当たり7千円ほどかかり、急斜面で設置が不可能な部分もある。昨年度までに設置したのは約40キロで、このうち釧路支社は35キロ。同支社の総延長(476・6キロ)の7%ほどだ。

■農場では効果

 同支社は、釧網線遠矢―塘路駅間の釧路湿原周辺などシカの多発ポイントではあらかじめ減速したり、警笛を鳴らしたり、工夫もしているが、技術施設グループの浅田基揮リーダーは「限界がある」と話す。

 そこで目を付けたのが奈井江町の機器メーカー「太田精器」が開発した装置だ。赤、青、黄、白色の長さ40〜50センチの「LED(発光ダイオード)灯」を計7本並べ、この装置から離れた場所に置いたセンサーの近くをシカなどが通ると、装置が10〜15秒間点滅。合わせてゾウやオオカミ、銃声などの音が出る。

 この光と音はともにシカが嫌がるとされ、実証実験をした農場では、シカの食害が減るなどの効果が出ているという。光は120度の角度で200メートル先まで届くといい、柵が設置できない場所でも効果が出る可能性があり、設置費用も1台20万〜40万円ほどで柵より安くすむメリットがある。

 JRは同支社管内に年内にも数台を実験的に設置、効果を検証する。ただ、これまでの対策が失敗続きのため、浅田さんは「長期間、効果があるか慎重に見極めたい」としている。

 (古源盛一)

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