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'12/6/5

電力会社に「電源対策不要」の作文指示 92年に原子力安全委

 国の原子力安全委員会は4日、1992年に原発の全電源喪失の対策を検討していた作業部会が、長時間の喪失に対する対策は不要とする根拠を電力会社に「作文」するよう指示していたことを明らかにした。東京電力が作成した回答が部会の報告書に盛り込まれ、安全委の指針は見直されず、結果的に全電源喪失の対策が取られなかった。

 原発の全電源喪失は、原子炉の冷却ができなくなるなど過酷事故につながり、福島第1原発事故を深刻化させた原因。安全委は長時間の喪失について「考慮は不要」とした指針を90年に決定。作業部会は指針改定に向けたものだったが、安全委と電力側が水面下で協力し、議論が骨抜きになった経緯が浮き彫りになった。

 当時の作業部会の配布資料などは安全委がホームページで福島原発事故後に公開したが、作文を指示した文書は公開していなかった。国会の事故調査委員会の指摘を受け公開した安全委事務局は「別の業務で忙しく、公開するのを失念していた」と釈明。班目春樹まだらめ・はるき委員長は「(報告書の)原案を電力会社に分担させており、明らかに不適切だ。大変申し訳ない」と謝罪した。

 92年当時に安全委事務局だった科学技術庁が電力会社側に「今後も『30分程度』で問題ない(中長時間の全電源喪失を考えなくてよい)理由を作文してください」と文書で指示。東電が「わが国の非常用電源の信頼性などの現状において、適切な操作が実施されれば、十分な安全性が確保される」などと回答した。

 作業部会は専門家5人のほか東電や関西電力が部外協力者として参加。91年10月〜93年6月に非公開で12回会合を開き、報告書をまとめた。

 東電の松本純一まつもと・じゅんいち原子力・立地本部長代理は記者会見で「安全委側の要請で資料を提出したが『指針をこうしてほしい』という話はしていない」と説明した。




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