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おおい町の習俗や原発問題で討論 小浜、脱原発案など現代社会考察
(2012年6月4日午前11時43分)
福井県おおい町の大島半島の「ニソの杜」をテーマに現代社会を考察したシンポジウム=3日、福井県小浜市文化会館
福井県おおい町の大島半島を開拓した祖先を祭っている聖域「ニソの杜(もり)」にスポットを当て、古来伝わる習俗や原発問題などの現代社会を考察するシンポジウム「ニソの杜が日本に問いかけるもの」が3日、福井県小浜市文化会館で開かれた。人類学者や民俗学者ら5人によるパネル討論では、地域に根付く民俗信仰の価値を再認識する重要性が指摘された。
ニソの杜は、大島地区内に32カ所点在するとされ、半島の開発に当たった24家族の先祖を祭る祠(ほこら)や巨木がある。2010年に国選択無形民俗文化財に指定された。
シンポジウムは、作家のいとうせいこうさんがコーディネーターを務めた。人類学者の中沢新一さんはニソの杜について「神道や仏教が分離する前の日本人の『原信仰』の象徴」と説明。坂井市三国町の大湊神社宮司松村忠祀さんは「原生林が多く、自然豊かな大島半島には福井の財産が眠っている」と述べた。
美浜町在住の民俗学者金田久璋さんは大島半島が日本民俗学の聖地の一つであることを解説した。その上で「将来、地域が解体したり、家庭が崩壊した場合、再び共同体を見いだす際にはニソの杜がモデルケースになる」と強調した。
半島の先端には関西電力大飯原発(福井県おおい町)が立地することから、小浜市の明通寺住職中嶌哲演さんは原発問題にも言及。「反原発でただ危険だと主張するのでなく、自分が住む土地の自然や風土を深く知り、歴史文化を再発見する努力も大切だ」と述べ、別の視点からの脱原発を示唆した。
中沢さんは「右肩上がりの経済成長は終わり、日本は新しい社会構造に入る時期にある」と指摘し、次世代の経済システムやエネルギー政策の構想を考える上で「われわれの先祖が何をつくってきたかを見直す必要がある」と提言した。
シンポジウムは中沢さんが代表を務め、脱原発を掲げる市民団体「グリーンアクティブ」と、県内の有志でつくる実行委員会が主催し、一般市民約250人が参加した。またシンポジウムの前に開いたニソの杜見学ツアーには約60人が参加した。
