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2012年6月4日(月)付

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内閣改造へ―修正協議進める好機だ

遅きに失した感は否めない。それでも、社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け、野田首相がようやく自民党との協調にカジを切る覚悟を鮮明にしたことを歓迎したい。[記事全文]

地域主権改革―「国まかせ」から卒業を

ゆっくり、少しずつ、分権改革の歯車が回り始めている。民主党が地域主権改革と名づけ、大々的に打ち出したわりには何とも地味だが、自治体の現場に変化の兆しがある。[記事全文]

内閣改造へ―修正協議進める好機だ

 遅きに失した感は否めない。

 それでも、社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け、野田首相がようやく自民党との協調にカジを切る覚悟を鮮明にしたことを歓迎したい。

 首相はきのう小沢一郎元代表と2度目の会談に臨んだ。

 首相は一体改革への協力をあらためて求めた。これに対し、小沢氏は会談後、法案の採決では反対すると記者団に語り、造反する姿勢を明確にした。

 首相にすれば、代表経験者に礼を尽くす形をとるためにも2度の会談を重ねたのだろう。だが、会談が事実上決裂したのを受けて、首相はいよいよ野党、とりわけ第1党の自民党との修正協議を急がねばならない。

 そのための環境整備の一環として、首相はきょう内閣改造に踏み切り、参院で問責決議を受けた2閣僚を交代させる。

 田中防衛相は安全保障の基礎知識すらおぼつかない。前田国土交通相は地方選挙で特定候補への支援を求める違法な文書を出した。首相はもっと早く2閣僚を更迭すべきだった。

 そもそも参院での採決を考えれば、小沢グループの動向はともかく自民党の賛成がないと否決される。その意味でも、首相には2閣僚を交代させないという選択肢はありえなかった。

 それなのに、首相が更迭を渋ったツケは甚大だった。一体改革法案の審議がここまでずれ込んだことだけではない。

 問責を決議した参院では、1カ月以上も本会議が開かれていない。予算執行の裏付けとなる赤字国債発行法案をはじめ、多くの法案・条約の審議も立ち往生したままだ。

 会期末まで3週間足らず。首相がG20出席のため日本を離れる16日までに衆院で採決するなら、実質2週間もない。

 ここで、あらためて2大政党に求めたい。

 「動かない、決められない」政治の惨状をただす。2大政党が協力して、具体的な果実を生む政治文化を築く。今回の内閣改造を、それを促す大きなチャンスととらえるのだ。

 首相の側から譲るべきを譲れば、自民党も強硬姿勢ばかりでは国民に愛想を尽かされよう。

 互いに譲り合って、まずは一体改革法案の修正協議を急ぐ。合意できた法案は粛々と採決する。合意できないものは自民党が提案する「国民会議」でさらに話し合う。一体改革以外の法案・条約の審議も加速する。

 残された時間は短いが、この機会を逃してはならない。国会の党首討論や党首会談で事態の打開をはかる手もある。

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地域主権改革―「国まかせ」から卒業を

 ゆっくり、少しずつ、分権改革の歯車が回り始めている。

 民主党が地域主権改革と名づけ、大々的に打ち出したわりには何とも地味だが、自治体の現場に変化の兆しがある。

 その理由は、国が全国一律に定めていた公の施設の設置基準などの一部を、自治体が独自に条例で決められるように法改正したことだ。

 保育所の面積や公営住宅の入居基準、道路の規格などが主な対象になっている。

 国とは違う基準を設けるということは、自治体と議会がその責任を負うということだ。

 そう自覚して、地域にふさわしい政策づくりに知恵を絞る。それが自治の原点である。

 今回の法改正を機に、多くの自治体が「国まかせ」から卒業していくことを期待する。

 たとえば保育所については、待機児童の多い全国の都市部の35市区で、3年間に限り国の基準を見直すことが認められた。

 さっそく大阪市では、認可保育所の部屋の一部を国の基準より広くしたが、待機児童がいる市中心部などでは、逆に国が求めた基準よりも狭くても構わない、と決めた。

 0歳児と1歳児のほふく室の場合は、1人あたり「3.3平方メートル以上」を、半分の「1.65平方メートル以上」でよいとした。

 緩和を認めた国に、日弁連は「子どもの成長発達権が侵害される」と反対声明を出した。大阪市議会でも不安が漏れた。

 「詰め込み保育」への保護者の不安はわかる。よりよい環境を求めるのも当然だ。

 反対論の根っこには、「国の方が信用できる」という自治体への不信感もあるだろう。

 だが、この点こそが考えどころなのだ。

 自治の現場で問題が発生したとき、住民はだれに注文をつけたらいいのか。自分たちで選んだ首長や議員か、顔も知らない遠い霞が関の官僚か。

 答えは明らかだろう。身近な自治体の方が、住民の意見を反映させやすいはずだ。それが、住民が主役の自治の魅力であり、あるべき姿ではないか。

 福井県や兵庫県、静岡県浜松市などは、子育て世帯の支援や過疎地に若い住民を呼び込むために、公営住宅の入居基準を改めた。渋滞解消のため右折車線を設けられるように、交差点での車線幅を縮める県もある。

 逆に言えば、こんな細部にいたるまで国が基準をつくっていたことに驚く。

 地域に合った基準を考え、実践していく。その積み重ねが、自治の力を高めていく。

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