日本経済新聞

6月4日(月曜日)

日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

コンテンツ一覧

トップ > 社説・春秋 > 記事

原発の安全性高める技術開発を閉ざすな

2012/6/3付
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷

 経済産業省の審議会が2030年時点の原子力発電の比率について、0~25%の間で選択肢を示した。政府のエネルギー・環境会議がこれをもとに、8月までに新しい電源構成を決める。

 原発事故が突きつけたのは、安全への過信の戒めである。再び事故を起こさないためには、原発の安全性を高める技術基盤の維持が不可欠だ。示された選択肢の議論にはこの視点が欠けている。

 私たちはかねて「エネルギー政策の調整と点検の期間」を設けるよう提案してきた。原発は当面、一定数を維持しつつ、再生可能エネルギーや省エネの拡大に努める。5~10年後に、その成果を見極めたうえで原発の位置付けを改めて決めるという考えだ。

 こうした提案であれ、審議会の選択肢のどれであれ、少なくとも30年までは原発を使い続けることになる。その間の人材を確保し、安全技術を高める場が欠かせない。耐用年数を迎えた原発を、確実に廃炉にする技術の確立も必要になるだろう。

 原子力産業の従事者は約4万6000人。原発の新設や更新が見込めず、産業として衰退ムードが強まれば優秀な人材は集まらない。企業が生産基盤を維持するのも難しくなる。原発の将来像は、人材育成や経験を引き継ぐ仕組みとも切り離せない問題だ。

 欧米で原発建設が停滞した間に原発メーカーの国際再編が進み、東芝、日立製作所、三菱重工業の日本3社は世界の原子力産業の中核的存在になっている。

 世界で建設中の原発は75基。計画中は新興国を中心に90基を超え、中国だけで26基の新設計画が進む。事故の反省に立った、安全性の高い原発の開発は日本企業の責務でもある。

 各社はすでに、地震や津波で電源が失われるなどの重大事故を想定した次世代原子炉の開発に取り組んでいる。東芝は傘下の米ウエスチングハウスと、運転員の操作を必要としない安全システムを取り入れた原子炉を実用化し、中国や米国で建設が始まっている。

 こうした技術の進歩を止めてはならない。政府は官民連携による原発輸出の推進を掲げてきた。原発の新たな位置付けに伴い再考が必要だが、原発プラントの高い製造技術は核安全や不拡散の観点からも重要だ。これをどう維持し、生かしていくか。国家の戦略として考えるべきである。

小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
関連キーワード

エネルギー、原発、ウエスチングハウス、東芝、三菱重工業、日立製作所

【PR】

【PR】



主な市場指標

日経平均(円) 8,269.08 -171.17 4日 11:17
NYダウ(ドル) 12,118.57 -274.88 1日 16:30
英FTSE100 5,260.19 -60.67 1日 16:35
ドル/円 78.14 - .18 -0.35円高 4日 10:57
ユーロ/円 96.83 - .88 -0.09円高 4日 10:57
長期金利(%) 0.800 -0.010 4日 10:43
NY原油(ドル) 83.23 -3.30 1日 終値

モバイルやメール等で電子版を、より快適に!

各種サービスの説明をご覧ください。

日本経済新聞の公式ページやアカウントをご利用ください。

[PR]

【PR】

ページの先頭へ

日本経済新聞 電子版について

日本経済新聞社について