社説:福島子供支援法 人権と健康守るために

毎日新聞 2012年06月04日 02時32分

 86年に起きたチェルノブイリ原発事故を受け、旧ソ連では5年後に「チェルノブイリ法」が定められた。年間被ばく量1ミリシーベルト以上の「移住権利地域」が定められ、住む人に医療補償などが今も行われる。非汚染地帯にあるリハビリセンターでの長期保養も実施され、法案作りではこういった先例も参考にされたようだ。

 また、避難した人や避難先から戻ろうとする人の就学、就労、住宅支援なども盛り込まれる。憲法25条は「生存権」を保障し、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を国民は有する。避難の有無にかかわらず、原発事故による被害に遭った人すべてに必要な対策をとるという姿勢は当然だ。

 もちろん、課題はある。「一定以上の放射線量」はどこで線引きするのか。医療費はどのくらい減免するのか。財政事情も絡むだろう。

 だが、まずは福島の子供たちの健康や権利を守る根拠法として立法意義は大きい。作業にかかわる議員らは、法の理念が骨抜きにならぬよう法律の成立後も、与野党で協議体を作り、政策の実行をチェックしていくことも検討している。

 福島県の地元自治体にも立法への要望は強い。与野党は協力し、ぜひこの国会で成立させてもらいたい。

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