ヴェトナム戦争中、カムランは南ヴェトナム領内にあり、そこにはアメリカの巨大な後方支援基地が置かれていた。その後1979年、ヴェトナム統一後、当時のソ連政府とヴェトナム政府は、カムラン湾にある港をソ連海軍が補給基地として25年間使用する事についての合意書に調印した。そして、ここには、艦隊や航空機、海兵隊が常駐するソ連軍の、国外では最大規模の基地が作られ、又レーダー基地も置かれた。これによりカムランは、冷戦時代、フィリピンや韓国及び日本にある米軍基地に対し、本質的バランスをとる存在となったのである。
しかし2001年、新生ロシア政府は、カムラン基地の縮小に関する決定を下した。これは、一連のひとまとまりとなった理由によって決められたものだが、主なものは経済的要因だった。けれども時は流れ、状況は変化している。世界の海に、ロシアはその戦略上戻りつつある。国際情勢は、海賊行為の活発化に見られるように、ロシアが国外に基地を持つ必要不可欠性について納得できる裏づけを与えている。
ロシア海軍のミハイル・アブラモフ提督は、次のように指摘した―
「海賊撲滅問題が先鋭化している。これに関連して、一連の問題、とりわけ国外に艦船を滞在させる法的根拠やロシア艦隊受け入れの方法・形態といった諸問題が生じている。中でも、最も肝心なのは、もちろん、長期に渡る航程及び母港から遠い場所での艦隊の停泊に関する問題を一気に解決しうる、基地についての問題である。現在、これらは徹底的に検討されているが、基地問題は優先的なものだ。」
ロシアは地政学的に見て、経済的・政治的・軍事的利益のすべてを、世界の大洋と関連して有している海の大国だ。これは客観的事実であり、国際社会は今後、この事実を考慮に入れるようになるだろう。一方ヴェトナムも、東南アジアの海の大国を目指している。これはまず第一に、経済的理由によるもので、南シナ海には、エネルギー面でも海産物資源の上でも巨大な可能性が眠っているからだ。そのためヴェトナムは自国の艦隊を作り上げ、それをよりよいものとする必要に迫られている。その際、豊かな伝統を誇る海軍を持つロシアは、ヴェトナムにとって非常に有益なパートナーとなりうるに違いない。
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