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国際
【正論】元駐タイ大使・岡崎久彦 中国はもう反日デモはできない
薄煕来事件は、中国内政に、日中関係に、そして、米国の対中政策にも、表面に表れた以上の深い影響を及ぼしている。
それは、この秋の中国共産党の権力継承の障害となるような事件ではないかもしれない。そういう表面的なことは、中国共産党がビシッと抑えて、影響を表に出さないことは可能であろうと思う。
≪薄煕来事件で党の権威失墜≫
問題は、この事件が中国共産党一党支配の権威に与えた強烈なボディブロウである。
事件の実態は私にはわからない。漏れ伝わる情報しかないが、中国共産党幹部による大規模な収賄、蓄財、個人的資産の海外への不法移転、それによる高級幹部子弟の海外遊学、指導部の男女関係の放恣(ほうし)、殺人も含むマフィアもどきの権力の乱用などがインターネットで全世界を駆け巡っている。
権力は腐敗する、絶対権力は絶対に腐敗するというのは英歴史家、アクトン卿の言葉であるが、20世紀に出現した数多くの絶対権力、たとえば、スターリン時代、ヒトラー、ムソリーニの時代でも、指導部の専恣がこれだけ表に暴露されたことはなかった。
かつて、米外交官、ジョージ・ケナンはかのX論文において、冷戦は、結局は、米国がどのような価値を持つ国家かのテストであり、そのような試練を与え賜(たも)うた神の摂理に感謝すると言った。今回のようなスキャンダルが、共産中国の道徳的権威に深刻な打撃を与えたことは間違いない。
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