- [PR]
科学
【主張】民間宇宙船 コスト低減が新時代開く
コストの高さという、宇宙開発での最大の障壁が克服される見通しが立った。米国ベンチャー企業のスペースX社による宇宙貨物船「ドラゴン」の成功による新局面の展開だ。地球周回軌道への物資輸送を民間が担う時代が到来したことに注目したい。
ドラゴンは5月22日、国際宇宙ステーションを目指し、同社の2段式ロケット「ファルコン9」で打ち上げられた。
ステーションに世界初の民間宇宙船として接続し、食料などを届けた後、使用済みの不用物を搭載して31日、地球に帰還した。
日本の宇宙貨物船「こうのとり(HTV)」もステーションへの物資輸送をしているが、帰りは大気圏で燃え尽きる。地球への帰還能力ではドラゴンが勝る。この能力を生かし、ドラゴンを7人乗りの有人宇宙船に発展させる青写真も描かれているほどだ。
将来構想が明確である。さらに注目すべきは、開発のスピードと低コスト化だ。2002年設立のスペースX社が米航空宇宙局(NASA)との間で開発契約を結んだのは06年のことである。
打ち上げに使ったファルコン9も同社製造のロケットだ。1段目には石油系の燃料を使うエンジンが9基束ねられている。
自社での一貫製造や既存の技術の集積活用を通じて、打ち上げ費用を2分の1に抑え込んだ。将来は1段目の回収・再利用などによって、10分の1までのコスト引き下げを目指している。
米国は老朽化したスペースシャトルを昨年7月に廃止して以来、国際宇宙ステーションへの輸送手段を失っていたが、民間力の活用によって、瞬く間に空白を埋めることに成功した。
日本の政府、宇宙航空研究開発機構(JAXA)も参考にすべき点が多い。スペースX社の最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は40歳という若さだ。
日本は5月18日、三菱重工業がH2Aロケットで韓国の衛星を所定の軌道に投入した。わが国にとって海外受注による初の商業打ち上げである。
宇宙ロケットの製造や打ち上げは、家電や電子産業とは異なり、途上国が容易に追いつけない分野の一つだ。
宇宙には、もの作りのフロンティアが広がっている。日本も存在感を示したい。
- [PR]
- [PR]