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  シーカー 作者:安部飛翔
第1章
第1章ダイジェストその4
 数分後、工房から出てきたスレイはちょっとした興味で仕事依頼の掲示板を見ていた。
「あ、あの!」
 そこで突然声をかけられる、相手はアンデッド・ナイトより助けた、エルシア学園の三人であった。
 高慢なエルフの中でも唯一他種族に対しても友好的に接するグラナダ氏族のエミリア。
 探索者として功績を上げ、一代貴族となったグラナリア男爵家の長男アッシュと長女のルルナ。
 今ではエルシア学園を卒業し、初級探索者と変わらない身である。
 三人は先の事件により迷宮探索にトラウマを抱き、スレイにパーティを組んでくれるように頼み込む。
 結局三人の勢いに負け、パーティを組む事を仕方なく了承し、三人の意向で、一回限りの短期登録ではなく、登録解除を行うまでは解除されない長期登録を行う事になるのだった。
 そして互いに探索者カードを見せあい、三人はスレイの能力値に驚愕の声を上げる。
 三人組と明日の待ち合わせを約束するとそのままスレイは帰途についた。

 宿に戻るとサリアが出迎えてくれる、フレイヤやサリアとはまるで親戚のように親しい関係を築いていた。
 そして夕飯時はフレイヤとサリアと共に団欒の一時を過ごした。

 スレイは過去の悲劇を夢に見た。
 人の魂の転生の輪へと入り込む事で神々の封印を逃れた邪神ロドリゲーニ。
 自らを守って死んだ幼馴染フィノがその魂を宿し、死んだ事により邪神として覚醒したその日。
 彼女はフィノ自身の両親を殺し、そしてスレイの恐怖の感情を全て喰らう、スレイが覚えているのはそこまでであった。

 目覚めたスレイは外を見る、まだ日の昇らない早朝、スレイにとってはいつもの起床時間、日課の剣技の修練を行う為に宿の外に出る事にする、何時も通りのスレイの朝だった。

 スレイが今日も探索に出かける事に不満なサリア。
 連日での探索は探索者としても珍しい、迷宮の危険性を考えれば常に最高の状態で望むべきだからだ。
 フレイヤも心配するが、スレイは今日は約束があると伝え、早めに終わらせると告げると、帰ってきたら遊ぼうとサリアに約束すると、昨日の三人との待ち合わせ場所に向かった。

 静炎の迷宮、スレイは確認したい事があった為襲い掛かってくるモンスターを全て屠りつつ、三人とオルトロス一匹の戦いを見守る。
 三人はスレイの予想通り、連携して実力を発揮すればアンデッド・ナイトにも勝てただろう強さを発揮し、オルトロスを屠る。
 三人にどうやって自分がいなくてもいい様に、先日の事件の恐怖を克服させるか悩むスレイ。

 探索を終えた後、スレイは三人に目的を聞く。
 アッシュはクロスメリア国王、勇者王アルスから公爵位を賜り、強大な戦闘種族、竜人族の国、晃竜帝国の第二皇女、癒しの竜皇女エリナに求婚することだと答える。
 竜人族の第一皇女、闘竜皇女イリナと、第二皇女、癒しの竜皇女エリナは国民人気も高い。
 過去のいきさつでエリナと文通しているというアッシュに感心するスレイだった。
 ルルナは普通にそれなりの功績を上げ新しい爵位を手に入れ良い殿方と結ばれる事だと答える。
 エミリアはグラナダ氏族の為有望な人間族の男性と婚姻する事も考えていると告げる。
 スレイを挟み火花を散らす二人をアッシュはニヤニヤと笑いながら見ていた。

 換金所で収入を山分けし、約束通りサリアと遊び、むずかる彼女を寝かしつけたスレイ。
「まったく何が精神EXだか。運勢Gは妥当だが」
 戦闘に関してしか評価基準にされない能力値に愚痴を零すスレイ。
 思うようにいかない現実に愚痴ばかりが零れ出る。
 ただ強さを求めているつもりだった、ロドリゲーニを殺し贖罪をする為最強にならなければならなかった、だが周囲の人間関係に巻き込まれる自分の弱さに呆れるスレイ。
 その時ドアがノックされた。

 豹のライカンスロープであるフレイヤはこの満月の夜発情期を迎えていた。
 スレイという夫に似た青年に惹かれる女の自分と、強い雄へと惹かれる雌の自分。
 夫が居た時でさえなかった抑えきれない欲情に突き動かされ、そのままにスレイの部屋の扉をノックする。

 フレイヤを部屋に招きいれたスレイは後悔していた。
 扇情的な格好のフレイヤが酷く発情している様子で立っている。
 そのままスレイは唇を奪われ、濃厚で甘いキスをされる。
 冷静にフレイヤを諭そうとするスレイ。
 だがフレイヤの妖艶で魔性な色香に蜘蛛の糸に絡められていくような気がする。
 そして自らの欲望に対する抵抗を諦めたスレイは、そのままフレイヤを激しく求めていた。

 乱れ疲れ果てた様子で自らの隣で寝ているフレイヤに、自らの女癖の悪さに頭を抱えるスレイ。
 十八歳になった日から今まで、スレイの女性関係は爛れたものだった。
 自分の最低さと独占欲に呆れるスレイ。
 フレイヤの格好を整えてやり、日課の剣技の修練の為、宿の外へ出るのであった。

 円形闘技場、迷宮都市で神々が唯一迷宮以外で創った建造物。
 今となってはその性格な使用目的は謎であるが、現在は多くの探索者達が鍛錬場として使う場所である。
 ちなみに探索者養成学園の生徒達の実技授業の場も、殆どがこの円形闘技場だった。
 模擬戦闘を開始するスレイと三人組。
 軽く三人をあしらうスレイ。
 その後、最初から中級魔法を使ってきたエミリアに、無詠唱で下級魔法を使いスレイの強化を阻止するべきだったと告げる。
 その後闘気と魔力の融合について質問するアッシュ。
 闘気と魔力の融合は、その構成要素であるエーテルでの純強化をでき、圧倒的な強化が成される事と、発展系として、闘気と魔力の融合により、分離された第一質量プリマ・マテリア、全ての原質となる要素を留め、スレイの適性により“切断”の“絶対概念”を持った剣を創造できる事を説明するスレイ。
 その後ノリノリで説明していたスレイに理由を尋ねるアッシュ。
「昔、二年前まで俺の夢は学校の先生だったんだ」
 アッシュは爆笑していた。

 数秒後、粗大ゴミとなったアッシュ。
 エミリアが闘気と魔力の融合について具体的にどのような物なのか尋ねる。
 エーテルによる強化は未使用で、プリマ・マテリアの剣はまだ使用不可なので分からないと答えるスレイ。
 説明に意味が無かった事を告げるスレイに笑う二人の少女だが、今度は粗大ゴミが誕生する事はなかった。

 エミリアは結局自分はどうすればいいのか訪ねる。
 ただ単に牽制の重要性を知ってほしかったと告げるスレイ。
 明日三人の連携で自分に勝てれば三人で十分やっていけると分かる筈と言うと去っていくスレイ。
 パーティを解消するつもりらしいスレイに、それを阻止する為の作戦会議を行う三人。

 朝、剣技の修練から戻ったスレイを待っていたのはカウンターの前でアッシュ、エミリア、ルルナの三人が土下座するという奇妙な光景だった。
 パーティを解消しないでくれと頼む三人。
「これは、どういう状況なんだ、フレイヤ?」
 後輩から相談を受け、誠意を見せてみたらどうか、と言ったというフレイヤ。
 そして自らもエルシア学園の卒業生である事を明かす。
 フレイヤの為にももう少しだけ付き合ってやるから、迷惑だから土下座を止めろというスレイ。
 喜ぶ三人に、言葉を聞きとがめるスレイ。
「“あの”フレイヤさん?」
 そして元S級相当探索者で、“疾風のフレイヤ”などと呼ばれ、今でも時々エルシア学園で臨時講師をする事があるという情報を知る。
 フレイヤを見やるが、女は謎が多い方が魅力的でしょう?などと言われスレイは苦笑するしかなかった。

 次の日、再びの模擬戦闘でエミリアはアドバイス通り下級魔法でスレイの強化を阻止してくる。
 スレイは左腕を犠牲として多大なダメージを受けるも、そのまま三人を一蹴するのだった。

 スレイの無茶に回復魔法をかけながら説教をするエミリア。
 パーティを解散する為なら負けても良いのに、パーティを続けるとなると途端に負けず嫌いを発揮するスレイの面倒くさい性格に呆れる。
 スレイは真面目な表情になると、エミリアに謝罪した。
 それでは、と明日自分の買い物に付き合ってもらう事を提案するのに、ルルナがずるいと抗議の声を上げる。
 明日二人の買い物につき合わせてもらうと答えるスレイ。
 不服そうに見つめ合うエミリアとルルナだが、諦めたように女性の怖さを思い知らせるとスレイに告げるが、スレイは遠い目をして幼馴染達の事を思い出しつつ、充分それは思い知ってると言う。
 そんな中、アッシュが自分には何もないのかと騒ぐのに、イリナにエリナとの仲を応援してやれという手紙でも書いてやると提案するスレイ。
 イリナと知り合いなのかと不思議そうな三人に、昔誤解で戦って引き分けた事があると答えるスレイ。
 そしてその時点からさして成長していない自分の力にどこか自嘲気味なスレイをルルナが焦る事は無いと慰める。
 大陸全体を見れば平和だと言うその言葉に、スレイは自らの抱える秘密を思い、何も言えず頷くも、力への強い渇望を胸に秘めたまま、宿への帰路についた。


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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