国内最大級のインターネット掲示板サイト「2ちゃんねる」が薬物取引の舞台になっているとして警視庁が調べている。市井の表現の場が損なわれないよう書き込み情報の健全な管理を望みたい。
2ちゃんねるは幅広い分野の掲示板の集合体として一九九九年に開設された。インターネットの普及につれて若い世代を中心に爆発的に利用者が増え、一千万人を上回るとの見方もある。
誰でも匿名で自由に発信できるのが特徴だ。それゆえ反社会的な情報もあふれ、警察当局は神経をとがらせている。
ネット上には薬物密売を持ちかけたり、売買春に誘い込んだりとそれ自体が犯罪となる違法情報や、殺人予告、集団自殺の呼びかけなどの有害情報が流れている。
警察庁の委託を受けた民間団体が六年前からそうした情報を収集し、サイトの管理者に削除を求めている。ところが、2ちゃんねるは非協力的という。
昨年一年間で五千二百二十三件の違法情報の削除を依頼したのに、五千六十八件は放置された。ネット全体で削除されずに残された違法情報の94%を占めた。
大半は薬物取引にまつわる内容だった。預金通帳や携帯電話の売り込みも多かった。重大な犯罪を助長する恐れのある書き込みが野放し状態なのは憂慮される。
管理者は表現の場を提供しているにすぎない。情報の真偽を見分けるすべもないし、民間団体の求めに応じる義務もない。2ちゃんねるの創設者は「司法が違法と認めない限り合法」との立場だ。それでは犯罪の黙認にならないか。
覚せい剤は「氷」「白」、大麻は「野菜」などの隠語を使っての取引が実際に相次いで発覚している。犯罪の誘発に手を貸した形になるとみて、警視庁は麻薬特例法違反(あおり、唆し)のほう助の疑いで関係先を家宅捜索した。
警察当局の安易な介入は許されないが、自浄能力が期待できないのではやむを得まい。対面せずに売買できる手軽さは薬物汚染の拡大につながる。
2ちゃんねるには無名の個人を攻撃したり、裁判所が削除すべしと判断したりした場合を条件とした削除基準がある。だが、運用はボランティア任せだ。監視機能が働いているのか怪しい。違法・有害情報の基準は判然としない。
ネットは公共空間だ。犯罪の温床となっては規制強化を招く。情報の自由な流通を守るためにも透明で責任ある運営を求めたい。
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