米国防長官“海軍艦船6割太平洋へ”6月2日 16時4分
シンガポールを訪れているアメリカのパネッタ国防長官は、軍備の増強を進める中国を念頭に、2020年までに海軍の艦船の6割をアジア太平洋地域に集中させる方針を明らかにし、この地域にアメリカ軍の戦力を重点的に配備する戦略を強調しました。
パネッタ国防長官は、シンガポールで開かれているアジア安全保障会議で、2日、アメリカがことし新たに打ち出した、アジア太平洋地域を重視する新たな国防戦略について講演しました。
この中で、パネッタ長官は「現在、太平洋と大西洋に半分ずつ配置している海軍力を見直し、2020年までにその6割を太平洋に集中させる」と述べ、急速な軍備増強と海洋進出を進める中国を念頭にした具体的な戦略を明らかにしました。
そのうえで、日本や韓国など伝統的な同盟国と軍事面の技術開発も含めた新たな関係を築くとともに、インドネシアやベトナム、インドなど、各国との演習などを増やすことでアメリカ軍の展開力を強化することを強調しました。
一方、南シナ海の領有権問題を巡り中国と周辺国との間で緊張が高まっている現状について「中国は、この地域で国際的なルールに従い、平和と繁栄を発展させるための役割を担うべきだ」と述べ、中国に対し、国際法に基づいて外交的に解決するよう求めました。
そのうえでパネッタ長官は、中国に対して国際法による問題解決を求めるうえで、アメリカがこれまで拒んできた海洋開発の権利などを定めた「国連海洋法条約」の議会での批准を年内に目指す考えを示しました。
パネッタ長官は、このあと中国の動きに警戒を強める各国の代表と相次いで会談したほか、3日からは中国と領有権などの問題を抱えるベトナムとインドを相次いで訪問し、協力関係の強化を強調することで、中国をけん制するねらいがあるとみられます。
中国は閣僚級代表は出席せず
ことしのアジア安全保障会議では、中国からは閣僚級の代表は出席せず、軍の研究機関からの出席にとどまり、公開の場での発言も予定されていません。
中国は、去年、梁光烈国防相が出席し、講演も行いましたが、ことしはレベルを下げて、人民解放軍の研究機関「軍事科学院」の任海泉副院長が出席するにとどまりました。
任副院長は、非公式の討論の場に出席する前、NHKの取材に対し、「今回の会議は相互に意思疎通を図るためのものだ」と述べただけで、閣僚級の出席が見送られた理由については言及を避けました。
一方、主催者側の説明によりますと、中国側は「国内事情を優先させるため」として、閣僚級の出席は難しいと伝えてきたということです。
ただ、南シナ海のスカーボロー礁の領有権を巡るフィリピンとの対立に注目が集まるなか、国際会議の場で、ことさら中国の立場を主張することで、関係国を必要以上に刺激したくないという思惑もうかがえます。
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