ニュースの匠:検察官の虚偽報告書=鳥越俊太郎
毎日新聞 2012年06月02日 東京朝刊
◇沈黙よりも悪質
皆さんは「検察官適格審査会」という組織のことを知っていますか? 大半の人が知らないと思いますが、これは検察庁法第23条の規定で設置されており、検察官の罷免や適格の審査を行うことになっています。
現在は大阪地検特捜部の前田恒彦元主任検事が証拠(フロッピーディスク)を改ざんした件で、その情報を知りながら半年以上にわたって隠していた国井弘樹・元大阪地検特捜部検事(現法務総合研究所教官)が審査の対象となっています。審査官のメンバーは11人ですが国会議員6人のほか最高裁判事、日弁連会長、元検事総長らで構成されていて、国井検事に罷免の処分が出るかは微妙な情勢です。
私は国井検事のケースは、前田元主任検事の証拠改ざんが明るみに出る前に村木厚子・元厚労省局長は裁判で無罪判決が出ており、国井検事の沈黙が裁判の大勢に影響を与えたことはないと思います。しかし、もし国井検事が証拠改ざんを知った段階で“内部告発”していれば、裁判はもっと違った経過をたどったかもしれない。が、同時に内部で潰されていた可能性もあるので微妙なところですね。