ふかふかの生地と、たっぷりクリームが入ったロールケーキ「堂島ロール」の生みの親として有名だ。販売店には行列ができ、1日1万本が売れるという。
民族学校の教師をしていた時期、児童には「1世、2世が築いた同胞社会を、次の世代につなげる君たちがしっかり生きなければならない」と諭してきた。8年間の教師生活を終え、50日間のヨーロッパ旅行に出かけた。長い休みがほしかったのと、自分が海外でどれだけ通用するか、長期滞在しながら確かめる意味もあったという。洋菓子店を開こうと決意したのはパリ滞在中。小さなケーキ一つで優雅な気分になる、何気ない普通の日が特別な日になる、人と人が和むという点に着眼した。
帰国後、つてを頼って堂島ホテル(大阪市北区)の通路を借り、ケーキを置いた。自分好みの味を追求した結果、起業3年目に自社厨房を構えるまでになった。それからは朝5時半から夜の9時までケーキを作り、深夜1時まで伝票整理などをこなした。睡眠時間は4時間。厨房に寝泊まりし、風呂は昼の30分間で済ませた。
起業から7年半で、会社は従業員700人を抱えるほどに成長した。急成長にともなう社員間の意思疎通の欠如もあったが、最長6時間におよぶ会議を重ねて乗り越えた。今は韓国をはじめ、海外進出を考えている。「日本で培ったものが韓国で通用するのか試してみたい」と目を輝かせている。 |