竜巻から身を守るために「竜巻注意情報」をご活用ください
平成24年5月6日に茨城県・栃木県で竜巻が発生し、被害をもたらしたことを受け、気象庁ホームページに竜巻ポータルサイトを開設しました。(平成24年5月11日)
平成18年9月に宮崎県延岡市で、同年11月には北海道佐呂間町で竜巻が発生し、多くの死傷者が出ました。ニュースで竜巻によって破壊された家などを目にされた方も多いことでしょう。この二つの竜巻の被害を契機に、気象庁は竜巻をもたらす局地的な現象の監視に有効な気象ドップラーレーダーの整備と予測のための技術開発を進め、竜巻から身を守るために「竜巻注意情報」をご活用ください。今後は、竜巻から身を守るために「竜巻注意情報」をご活用ください。
平成11年9月に愛知県豊橋市で発生した竜巻
写真提供:愛知県豊橋市
気象情報、雷注意報、「竜巻注意情報」を段階的に発表
積乱雲の付近では竜巻やダウンバースト※などにより激しい突風が発生することがあります。これまでは、落雷、突風やひょうによる被害が予想される場合には、「気象情報」や「雷注意報」を発表していましたが、竜巻の危険性については明記していませんでした。平成20年3月には「竜巻注意情報」の発表を開始し、竜巻やダウンバーストなどによる激しい突風が予測されるときには一層の注意を呼びかけることになりました。また、気象情報や雷注意報でも「竜巻」と明記して激しい突風に対する注意を呼びかけるようになりました。「竜巻注意情報」は防災機関や報道機関へ伝えるとともに、気象庁ホームページでお知らせしています。
※ダウンバースト
積乱雲の付近では竜巻以外にも「ダウンバースト」と呼ばれる突風の被害もあります。積乱雲から激しい雨やひょうが降ると、雲の下で強い下降気流が発生し、それが地表付近で周囲に広がり、破壊的な強風(ダウンバースト)をもたらすことがあります。
竜巻などの激しい突風が予想される場合には、気象情報を発表して半日から1日程度前に「竜巻など激しい突風のおそれ」という表現で注意を呼びかけます。発生が予想される数時間前には雷注意報の中で「竜巻」と明記して注意を呼びかけ、さらに、今まさに竜巻やダウンバーストなどの激しい突風が発生しやすい状態となったときに「竜巻注意情報」を発表します。このように、竜巻発生の可能性に応じて段階的に情報が発表されるので、状況に応じた対応が可能になります。また、「竜巻注意情報」の有効利用期間は発表から1時間ですので時間を限定した対応も可能になります。
竜巻で巻き上げられた飛散物が危険
「竜巻注意情報」は県単位で発表されますが、実際に竜巻に対する注意が必要なのは積乱雲の近くにいる人だけです。「竜巻注意情報」が発表されたからといってすぐに避難が必要なわけではありません。「竜巻注意情報」が発表されたら、まず空を見てください。周りの天気が次のように変わってきている場合には積乱雲が近づいているので、頑丈な建物に移動するなどの安全確保が必要です。
真っ黒い雲が近づき、周囲が急に暗くなる。
雷鳴が聞こえたり、雷が見えたりする。
ひやっとした冷たい風が吹き出す。
大粒の雨やひょうが降り出す。
特に建設現場、人が大勢集まる屋外のイベント会場、運動会などの学校行事など、避難に時間がかかると考えられる場所では、あらかじめ気象情報や雷注意報に注意し、当日の朝礼やミーティングなどでは、天気情報を確認しましょう。
「竜巻注意情報」は10回発表して1回適中する程度であり、決して予測精度は高くありません。ただ、竜巻に出合うと命の危険もあるので、「竜巻注意情報」が発表されたら注意して、いざというときには身の安全を確保しましょう。
竜巻の恐ろしさは、巻き上げられた瓦(かわら)や看板などが猛スピードで飛んでくることです。こうした飛散物に当たると、命を落としたり重軽傷を負ったりします。頑丈な建物の中に早めに避難をして、窓ガラスから遠く離れてください。物置や車庫、プレハブの中は危険です。また、一般の住宅では雨戸、窓やカーテンを閉め、窓のない部屋に移動したり、丈夫な机やテーブルの下に入ったりして身を守りましょう。屋外にいて周辺に身を守る建物がない場合には、水路などくぼんだところに身を伏せて両腕で頭や首を守ってください。
飛散物による家屋への被害(平成18年9月17日:宮崎県延岡市) 写真提供:気象庁
屋根瓦が飛んだ家屋(平成18年9月17日:宮崎県延岡市) 写真提供:気象庁
裏返しになり大破したトラック(平成18年11月7日:北海道佐呂間町) 写真提供:気象庁
店舗に大きな被害(平成18年9月17日:宮崎県日南市) 写真提供:日南市
最新技術を導入し竜巻の発生を予測
わが国では、季節を問わずに、台風、寒冷前線、低気圧などに伴い、年間平均約17個の竜巻が全国の特に沿岸部で多く発生します。竜巻は雲の中で空気が渦を巻いているような積乱雲の下で主に発生します。こうした雲の観測・解析が可能な気象ドップラーレーダーを、現在、全国20か所ある気象レーダーのうち11か所に設置し、これらのデータを竜巻の発生の予測に活用しています。
気象ドップラーレーダーでは、雨粒に反射した電波のドップラー効果を利用して積乱雲の中の風の状況を観測します。雨粒の動き(その場所の風に相当)が観測地点に近づいているか、遠ざかっているかによって電波の周波数が違って観測されます。雨粒が近づいてくるときは、電波の周波数が高くなり、逆に遠ざかる場合は低くなります。これは音波でも同じで、救急車などが通り過ぎるとき、近づくときにはサイレンの音が高く聞こえ、遠ざかるときには低く聞こえます。この技術を気象レーダーに取り入れることで、竜巻が発生しやすい積乱雲の観測が可能になりました。
近年、数値予報の精度向上が進んでいます。まだ竜巻そのものは予測できませんが、竜巻が発生しやすい大気の状態を予測することは可能になっています。気象庁では気象ドップラーレーダーの観測と数値予報の予測を組み合わせて竜巻の発生を予測する技術を開発し 、平成22年5月より、「竜巻が今にも発生する(または発生している)可能性の程度」を推定する「竜巻発生確度ナウキャスト」を発表しています。
最終更新平成24年5月11日
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