試験のせいで投稿が遅れてしまいました。すいませんマジすいません。
学校に行こう
「お前、バーストリンカーだったのかよ・・・」
「うん、まあね。」
結局小雨が降ってきた。高校への通学路の所々に植えられた桜が溢れんばかりに咲き誇っているが、雲に覆われた空ではあまり映えない。
初戦で敗北した上に直後にリアル割れまでしてしまったケントとしては気まずくてどう話しかけていいのかわからない。しかしブレイン・バーストの先輩である城田はこういう事には慣れているらしく、始めこそ戸惑っていたもののすぐに普段の表情に戻っている。
「まさか同じ学校にバーストリンカーがいるとは思わなかったぜ・・・」
「はは、そうだろうね。でもこの学校、五、六人BBプレイヤーがいるから気をつけてね。」
「!? マジかよ・・・」
ケントは愕然として城田を見た。城田章吾、十五歳。背は少し低めで少年のような顔立ちをしている。ケントが彼と出会ったのは昨日の入学式でのことだ。中学生の頃親友と呼べる者はいなかったものの話をするくらいには仲の良かった友達が皆違う高校に行ってしまい、手持無沙汰にしていたところ、何だか話しやすそうな奴がいたので話しかけてみると彼も独り身だったので気が合ったのだった。
「・・・・・・ていうかお前さあ―――」
「ん? どうかしたの?」
「デュエルアバター状態との性格のギャップが激しすぎるだろいくらなんでも!!」
ケントの叫びに城田は首を傾げる。
「そうかなあ。まあ興奮するとよくあんな感じになっちゃうけど、僕たちのデュエルアバターは自分の理想を反映して生まれるものだよ。だったら性格だって自分の好きなようにすればいいと思うんだけど。」
「まあ、そりゃあそうかもしれないけどよ。」
デュエルアバターは自分の見た夢から劣等感などを抽出することで生み出されるもので、城田の言っていることもそう間違いではないと思う。しかし、そうは言っても今目の前にいる城田が先ほどケントと戦った《インディゴ・チェーン》と同一人物だとは想像もつかない。今は考えなくてもいいか、と振り切り、ケントは校門をくぐった。視界にニューロリンカーの学内ネット接続表示が現れる。
「あ、そうだ。」
城田が思い出したように言った。
「国尾くんは、もっと強くなりたいかい?」
「そりゃあ、な。」
城田の発言の真意がわからないままケントは答えた。
「昨日マッチングリストを確認したらさ、この学校に気になるバーストリンカーがいたんだ。対戦すればきっと強くなれるよ。」
「ホ、ホントか!?」
強くなれる、という言葉に目を輝かせるケント。
「ありがとな、城田、いいこと教えてくれてさ。」
「いやあ、なんか水臭いから名字で呼ぶのはよそうよ。僕はこれから君のことをケントって呼ぶから君はショーゴって呼んでくれていいから。」
その言葉を聞いた瞬間、ケントの背中に一筋の電流が走った。顔がわずかに陰り、指先が細かく震える。ショーゴが怪訝な顔で覗き込んでいる。しかしケントは戸惑いながらも言葉を紡ぐ。
「い、いいのか、そんな急に下の名前で呼んだりして。まだ、昨日知り合ったばっかじゃねえか。」
柄にもない言葉が口をついて出てくる。けれどショーゴは一瞬不思議そうな顔をしてから、なんともないことのように笑って答えた。
「なんだよ、当たり前じゃないか。君と僕は同じゲームをしあう仲間なんだからさ。」
「仲間・・・・・・・・・・・・・・・」
ケントは呟いた。
「ま、まあありがとうな。それで、さっき言ってたやつのアバター名は何て言うんだ?」
話題を戻すためにそう言うと、ショーゴは急に笑みを面白がっているようなものに変えて答えた。
「そいつの名前はね―――」
ショーゴと共に教室に入り、自分の席にケントが腰を下ろすと、後ろの席に座る少女が話しかけてきた。
「おはようございます、国尾さん。」
「おはよう、倉崎さん。」
少女の名は倉崎楓子。長い黒髪にしなやかな体、そして何よりも静かな佇まいが大人びた雰囲気を漂わせている。
「これからの高校生活が楽しみですね。」
倉崎さんがケントに微笑みながら言う。
「ま、まあそうだな。」
(倉崎さんみたいな人が近くの席にいりゃあ、そりゃ楽しいだろうさ)
などと考えていたケントだったが、少し離れた場所に座るショーゴがケントに視線を投げかけていることに気付き、今の思考を中断する。
(早く対戦しろってか。わかったよ。)
ケントは席を立ち、廊下に出た。授業初日とあって廊下を歩く人の数は少ない。同じ学校のバーストリンカーとはいつかはリアル割れしてしまうのだろうが、なるべくなら正体を知られたくない。本当はトイレなどの人気のない場所で加速するのが一番だが、面倒なので人の少ない廊下で加速する事にした。
「バースト・リンク」
小さく呟くと、バシィィィィ!!という雷鳴のような音を立て、世界が青く染まった。
(《スカイ・レイカー》だったか。名前からして近接系だろうなあ。・・・お、あったあった。)
マッチングリストの一番上にショーゴが言っていた《スカイ・レイカー》の名を見つけ、レベル表示も見ずに選択する。
(おし、こいつをぶっ倒して強くなってやるぜ!!)
ケントが考えている内に周りの者が次々と消えていき、対戦相手となる《スカイ・レイカー》の姿が、
教室の中に出現した。
―――――――――というか、ケントの後ろの倉崎楓子の席に。
「またかよおおおおおおおおおおお!!」
本日二回目のリアル判明にケントは思わず絶叫した。その声でケントの存在に気付いたらしい《スカイ・レイカー》―――恐らく倉崎さん―――がくるりとケントの方を向いた。
「あら、こんな近い距離から始まるなんて、驚きました。」
「ええと、あの、倉崎さん・・・だよな?」
恐る恐る目の前の倉崎さんらしき人に問いかけると、相手はあっさりと首肯した。
「ええ、そういうあなたは国尾さんですよね?」
「ちくしょおやっぱリアル割れしたああああああああ!!」
再び頭を抱えて叫ぶケントを見て倉崎さんが笑う。
「お互いに相手のリアルを知ったのだから、そんなに落ち込むことはないですよ、イーグルさん。」
「は、はあ・・・」
「では始めましょうか。見たところ初心者のようですけど、容 赦 は し ま せ ん よ?」
そう言って倉崎さんがにっこりと笑った瞬間、空色のアバタ―から凄まじい気が放たれた。
(な、なんだよこの圧力は!?)
驚いて思わず一歩後退するケント。
(一体どんだけ場数踏んでるってんだよ・・・)
震え上がりながらもケントが《スカイ・レイカー》のレベルを確認すると、
「れ、レベル8!!?」
とんでもない数値が表示されていた。
「ははは、驚いたかい?」
気がつくと《インディゴ・チェーン》の姿をしたショーゴがギャラリーとして立っている。
「ショーゴ・・・テメェ騙しやがったな・・・」
「騙してはないよ。強敵との戦いはきっと君を強くしてくれるさ。」
「いやこれは絶対嫌がらせだろうが!!」
どうやらショーゴは少なくともギャラリーのときは現実世界と同じ口調で話すらしい。
「ぬぐぐ・・・」
文句を言っても状況は好転しない。
「あの、お友達とお話しするのもいいですけど、戦わないんですか?」
「今からコイツがガッツ見せるって言ってますから、ちょっと待っててください!」
「うるせえ言ってねえよショーゴ!! つうかなんで丁寧語になってんだよ!?」
「だって怖いんだもん。」
「そんなのと戦わせんなよ!!」
「まあまあ。早く行かないとレイカーさんキレちゃうよ?」
「だああああちくしょおおおやってやるぜええええええ!!」
そう叫んだケントは吹っ切れたように《スカイ・レイカー》へと突進していった。
ついに原作キャラが登場しました。倉崎楓子さん。
とはいえ、僕が別にこのキャラ好きというわけではないです。嫌いではありませんが。
この物語を読んでいると、いくつか引っかかる点があるかもしれません。
そこはきっと伏線です。たぶん伏線です。作者の技量不足なんかじゃきっとないです。ほ、本当です。
ですが確実に僕が描き切れていない部分も存在すると思います。うわあなんか矛盾してる。
読んでいて気になる点がありましたら、感想のほうで遠慮なく言ってください。
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